活動制限の有病率に、性差や国の経済水準による差はあるか/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/14

 

 活動制限(activity limitation)の世界的な有病率は、男性よりも女性で、高所得国よりも低所得国や中所得国で大幅に高く、歩行補助具や視覚補助具、聴覚補助具の使用率のかなりの低さも手伝ってこの傾向は顕著であるため、活動制限の影響を軽減するための公衆衛生キャンペーンの焦点となりうる重要な課題であることが、カナダ・マクマスター大学のRaed A. Joundi氏らが実施した「PURE研究」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2024年8月10日号に掲載された。

25ヵ国の35~70歳を対象とする前向きコホート研究

 PURE研究は、活動制限の有病率と補助具の使用、および活動制限と有害なアウトカムとの関連の定量化を目的とする前向きコホート研究で、経済水準の異なる25ヵ国の個人データの解析を行った(カナダ・Population Health Research Instituteなどの助成を受けた)。

 現在の住居に今後4年以上住む予定の35~70歳の17万5,660例を対象とし、活動制限に関する質問票への回答を求めた。追跡調査は3年に1回、電話または対面で行うこととした。

 活動制限の調査は、7つの制限(歩行、把持[指で物をつかんだり扱うこと]、屈伸[かがんで床から物を拾う]、近くを見る、遠くを見る、話す、聞く)と補助具の使用(歩行、視力、補聴器)の自己報告による困難に関する質問で構成された。

屈伸困難が最も多く、近くを見るや歩行の制限も高頻度

 2001年1月~2019年5月に、17万5,584例が活動制限質問票の少なくとも1つの質問に回答した(平均年齢50.6歳[SD 9.8]、女性10万3,625例[59%])。すべての質問に回答した集団の平均追跡期間は10.7年(SD 4.4)だった。

 最も高頻度に自己報告された活動制限は屈伸(2万3,921/17万5,515例[13.6%])であり、次いで、近くを見る(2万2,532/16万7,801例[13.4%])、歩行(2万2,805/17万5,554例[13.0%])、把持(1万6,851/17万5,584例[9.6%])、遠くを見る(1万3,222例/17万5,437例[7.5%])、聞く(9,205/16万7,710例[5.5%])、話すまたは理解してもらう(3,094/17万5,474例[1.8%])の順であった。これらの制限の有病率は、年齢が高いほど、また女性で高かった。

 年齢と性別で標準化した活動制限の有病率は、聴覚を除き、低所得国と中所得国で高く、社会経済的因子で補正しても一貫して同様の所見が認められた。また、歩行補助具、視覚補助具、聴覚補助具の使用は、低所得国と中所得国で少なく、とくに女性で使用率が低かった。

低所得国では視覚制限が多く、眼鏡使用率が低い

 近くを見ることの制限の有病率は、低所得国では高所得国の約4倍(6,257/3万7,926例[16.5%]vs.717/1万8,039例[4.0%])で、遠くを見ることの制限の有病率は約5倍(4,003/3万7,923例[10.6%]vs.391/1万8,038例[2.2%])であったが、眼鏡使用の割合は低所得国(30.9%)と中所得国(30.3%)で高所得国(71.1%)の半分にも満たなかった。

 歩行制限は、全死因死亡率と最も強く関連し(補正後ハザード比[aHR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.25~1.39)、他の臨床イベント(心血管疾患死、非心血管疾患死、心血管疾患、非致死的心血管疾患、心筋梗塞、肺炎、転倒)とも強い関連を示した。これ以外の顕著な関連として、遠くを見ることの制限と非心血管疾患死(1.12、1.03~1.21)、把持の制限と心血管疾患(1.15、1.05~1.26)、屈伸の制限と転倒(1.11、1.03~1.21)、話すことの制限と脳卒中(1.44、1.18~1.75)などを認めた。

 著者は、「とくに低所得国と女性に重点を置いて、世界的に活動制限を予防し、その影響を軽減する必要がある」「世界の60歳以上の高齢者人口の3分の2は低・中所得国であるため、活動制限の大きな負担とこれに関連する結果を軽減するための公衆衛生戦略が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)