リウマチ性心疾患(RHD)成人患者の死亡率は高く、弁膜症の重症度と関連しており、一方で弁手術と弁形成術は死亡率の大きな低下と関連していることを、インド・All India Institute of Medical SciencesのGanesan Karthikeyan氏らが、国際多施設共同前向き観察研究「INVICTUS試験」の結果で報告した。RHDは、低中所得国において依然として公衆衛生上の問題となっているが、複数の流行国で患者を登録した大規模研究はほとんどなかった。今回の結果を受けて著者は、「抗菌薬による予防と抗凝固療法を中心とした現在のアプローチに加え、外科的治療とインターベンション治療へのアクセスを改善する必要性が高まっている」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月5日号掲載の報告。
24ヵ国のRHD患者約1万4千例の予後を前向きに調査
研究グループは、RHDが流行中の低中所得国24ヵ国の138施設において、心エコー検査により臨床的にRHDが確認され同意が得られた18歳以上の成人患者を連続登録し、6ヵ月ごとに対面または電話で追跡調査を行い、1年ごとに対面で評価した。
主要アウトカムは全死因死亡、副次アウトカムは死因別死亡、心不全(HF)による入院、脳卒中、感染性心内膜炎、リウマチ熱の再発などであった。アウトカムは、世界銀行グループ加盟国の最新の所得水準別分類(低所得国[LICs]、低中所得国[LMICs]、高中所得国[UMICs]、高所得国[中東、北アフリカ]、北米、南アジア、サハラ以南)に基づきイベント発生率を分析し、多変量Cox回帰モデルを使用して死亡の予測因子を同定した。
2016年8月~2022年5月に、計1万3,696例のRHD患者が登録された。2,769例(20%)がLICs(エチオピア、マラウイ、モザンビーク、ネパール、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ)、8,453例(62%)がLMICs(カメルーン、エジプト、インド、ケニア、ニジェール、パキスタン、フィリピン、スーダン、ザンビア、ジンバブエ)、2,474例(18%)がUMICs(ボツワナ、ブラジル、中国、カザフスタン、メキシコ、パラグアイ、南アフリカ共和国)であった。全体の平均年齢は43.2歳、女性が72%であった。
死亡率は14.2%、その約7割は血管死
観察期間中央値3.2年(4万1,478人年)において、1万2,967例(94.7%)の生命予後に関するデータが入手可能であった。
全体で1,943例(14.2%、4.7%/人年)が死亡した。死亡例の67.5%(1,312例)は血管死で、主にHF(667例)または心臓突然死(352例)であった。
観察期間中、弁手術を受けた患者は少なく(604例、4.4%)、HFによる入院(805例、5.9%、年間発生頻度2.0%)も低値であった。また、非致死的脳卒中(年間発生頻度0.6%)、感染性心内膜炎(0.07%)、リウマチ熱の再発(0.02%)もまれであった。
死亡リスクの増加と関連していた因子は、うっ血性心不全(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.50~1.87、p<0.001)、肺高血圧症(1.52、1.37~1.69、p<0.001)、心房細動(1.30、1.15~1.46、p<0.001)など重症弁膜症のマーカーであった。一方、観察期間中の弁手術(0.23、0.12~0.44、p<0.001)や弁形成術(0.24、0.06~0.95、p=0.042)は死亡リスクの低下と関連していた。
患者レベルの因子を調整した後、国の所得水準が高いことが死亡率の低下と関連していることが認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)