ヒトパピローマウイルス(HPV)の遺伝子型別に浸潤性子宮頸がん(ICC)の有病率を把握することは、1次予防(すなわちワクチン接種)および2次予防(すなわちスクリーニング)のターゲットとすべきHPV遺伝子型を明らかにすることを可能とする。フランス・国際がん研究機関(IARC/WHO)のFeixue Wei氏らは、各HPV遺伝子型のICCとの因果関係を明らかにするために、世界レベル、地域レベルおよび各国レベルのHPV遺伝子型別の人口寄与割合(AF)をシステマティックレビューにより推定した。Lancet誌2024年8月3日号掲載の報告。
HPV陽性ICCと正常子宮頸部細胞診の各HPV遺伝子型の有病率を比較
研究グループは、ICCまたは子宮頸部細胞診の正常例における各HPV遺伝子型の有病率を報告している試験を対象としたシステマティックレビューを行った。適格試験の特定には、文献言語に制限を設けず、「cervix」「HPV」を検索単語として用い、2024年2月29日までにPubMed、Embase、Scopus、Web of Scienceに登録された文献を検索した。
地域、文献発行年、HPVプライマー/検査で補正したロジスティック回帰モデルを用いて、HPV陽性ICCと子宮頸部細胞診の正常例の各HPV遺伝子型の有病率を比較し、オッズ比(OR)を推算した。
ORの95%信頼区間(CI)下限が1.0を超えるHPV遺伝子型をICCの原因であると判定。対応する地域の遺伝子型別のAFは、ICCにおける地域別HPV有病率に「1-(1/OR)」を乗じて算出し、計100%になるよう比例調整して推算した。世界的AFは、2022年の地域別ICC症例数(GLOBOCAN)で重み付けされた地域別AFから推算した。
ICCの原因とみなされたHPV遺伝子型は17個、HPV16の世界的AFが最も高率
システマティックレビューにより、HPV陽性ICCの症例11万1,902例と子宮頸部細胞診の正常例275万5,734例を含む1,174試験を特定した。
ICCの原因とみなされたHPV遺伝子型は17個であり、ORの範囲は、HPV16の48.3(95%CI:45.7~50.9)からHPV51の1.4(1.2~1.7)までと広範囲にわたった。
世界的AFが最も高いのはHPV16で(61.7%)、以下HPV18(15.3%)、HPV45(4.8%)、HPV33(3.8%)、HPV58(3.5%)、HPV31(2.8%)、HPV52(2.8%)と続いた。その他の遺伝子型(HPV35、59、39、56、51、68、73、26、69、および82)の世界的AFは、合わせて5.3%であった。
HPV16と18、およびHPV16、18、31、33、45、52、58を合わせたAFは、アフリカで最も低く(それぞれ71.9%と92.1%)、中央・西・南アジアで最も高かった(それぞれ83.2%と95.9%)。HPV35はアフリカ(3.6%)で他の地域(0.6~1.6%)よりもAFが高かった。
結果を踏まえて著者は、「今回の研究は、HPVワクチン接種の影響を受ける前の、ICCにおけるHPV遺伝子型別のAFの世界的な実情を示すものとなった。これらのデータは、ICC負担を軽減するHPV遺伝子型特異的ワクチン接種戦略およびスクリーニング戦略に役立つ可能性がある」とまとめている。
(ケアネット)