スウェーデンの10~30歳の女児および女性は、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種により、浸潤性子宮頸がんのリスクが大幅に低く、同リスクは接種開始年齢が若いほど低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJiayao Lei氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。これまでに、子宮頸部高度異形成(Grade2または3の子宮頸部上皮内腫瘍[CIN2+、CIN3+])の予防における4価HPVワクチンの効能と効果が確認されている。一方、4価HPVワクチン接種と接種後の浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を示すデータはなかったという。
全国的な登録データを用いたコホート研究
研究グループは、スウェーデンの全国的な登録データを用い、HPVワクチンと浸潤性子宮頸がんリスクの関連を評価するコホート研究を行った(スウェーデン戦略研究財団などの助成による)。
解析には、2006~17年に経時的に登録された10~30歳の女児および女性の集団(167万2,983人:4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した群52万7,871人、非接種群114万5,112人)のデータが含まれた。
子宮頸がんの発生は、31歳の誕生日を迎えるまで評価が行われた。フォローアップ時の年齢、暦年、居住県、親の因子(学歴、世帯所得、母親の出生国、母親の病歴など)で調整したうえで、HPVワクチン接種と浸潤性子宮頸がんのリスクとの関連を評価した。
83.2%が17歳以前に接種開始
ワクチン接種群のうち、43万8,939人(83.2%)が17歳になる前に初回の接種を受けていた。研究の期間中に、ワクチン接種群で19人、非接種群では538人が子宮頸がんの診断を受けた。
30歳までの子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種群の女性では10万人当たり47件であり、非接種群では10万人当たり94件であった。17~30歳の間にワクチン接種を開始した女性では、30歳までの子宮頸がんの累積発生率は10万人当たり54件、17歳になる前に接種を開始した女性では、28歳までの子宮頸がんの累積発生率は10万人当たり4件であった。
フォローアップ時の年齢で補正すると、ワクチン接種群の非接種群に対する発生率比は0.51(95%信頼区間[CI]:0.32~0.82)であった。さらに暦年と居住県、親の因子を加えて補正すると、発生率比は0.37(0.21~0.57)となった。
すべての共変量で補正した場合の発生率比は、ワクチン接種を17歳になる前に受けた女性で0.12(95%CI:0.00~0.34)、17~30歳で受けた女性では0.47(0.27~0.75)であった。また、20歳になる前にワクチン接種を受けた女性は0.36(0.18~0.61)、20~30歳で受けた女性は0.38(0.12~0.72)だった。
著者は、「4価HPVワクチン接種は、HPVワクチン接種プログラムの最終的な目的である浸潤性子宮頸がんのリスク低減を達成した」とし、「これらの結果は、ワクチン接種は既存のHPV感染症に対する治療効果はないため、最大の効果を得るには、HPV感染症への曝露前における4価HPVワクチンの接種を推奨する見解を支持するものである」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)