生後1~11ヵ月に限定したアジスロマイシン配布で死亡率は改善するか/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/09/02

 

 ニジェールの生後1~59ヵ月の小児へのアジスロマイシンの配布により、全死因死亡率が有意に低下し、配布を生後1~11ヵ月の乳児に限定した介入と比較して有効性が高いことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のKieran S. O'Brien氏らが実施した「AVENIR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年8月22・29日号に掲載された。

ニジェールの村落を3群に分けて比較する適応型クラスター無作為化試験

 AVENIR試験は、抗菌薬耐性を防止するためにアジスロマイシンの配布を生後1~11ヵ月に制限する世界保健機関(WHO)の勧告の検証を目的に、ニジェールで実施した適応型クラスター無作為化試験であり、2020年11月~2023年7月に参加地域のスクリーニングを行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。

 ニジェールの村落を次の3つの群のいずれかに無作為に割り付けた。(1)生後1~59ヵ月の小児にアジスロマイシンを年2回(全4回)配布する群(小児アジスロマイシン群)、(2)生後1~11ヵ月の乳児にアジスロマイシンを年2回(全4回)配布し、生後12~59ヵ月の小児にはプラセボを配布する群(乳児アジスロマイシン群)、(3)生後1~59ヵ月の小児にプラセボを配布する群。

 主要アウトカムは、村落レベルでの死亡(1,000人年当たりの死亡数)とした。

生後1~59ヵ月では有意に良好、生後1~11ヵ月では差がない

 小児アジスロマイシン群に1,229村落、乳児アジスロマイシン群に751村落、プラセボ群に929村落を割り付け、合計38万2,586例の小児が解析の対象となった。41万9,440人年において5,503例が死亡した。

 生後1~59ヵ月の小児の死亡率は、プラセボ群が1,000人年当たり13.9例(95%信頼区間[CI]:13.0~14.8)であったのに対し、小児アジスロマイシン群は11.9例(11.3~12.6)と有意に低かった(アジスロマイシン群で14%[95%CI:7~22]低いことを示す、p<0.001)。

 生後1~11ヵ月の乳児の死亡率は、乳児アジスロマイシン群が1,000人年当たり22.3例(95%CI:20.0~24.7)、プラセボ群は23.9例(21.6~26.2)であり、両群間に有意な差を認めなかった(アジスロマイシン群で6%[95%CI:-8~19]低いことを示す)。

 また、生後12~59ヵ月の小児の死亡率は、プラセボ群が1,000人年当たり12.0例(95%CI:11.2~13.0)であったのに比べ、小児アジスロマイシン群は10.7例(10.0~11.4)と良好であった(アジスロマイシン群で13%[95%CI:4~21]低いことを示す)。

重篤な有害事象は全体で5件

 生後12~59ヵ月の小児の死亡率は、乳児アジスロマイシン群が1,000人年当たり12.2例(95%CI:11.3~13.1)であり、プラセボ群の12.0例(11.2~13.0)との間に差はなかった(両群の差:0%[95%CI:-12~9])。生後1~11ヵ月の乳児の死亡率は、乳児アジスロマイシン群の1,000人年当たり22.3例(20.0~24.7)と比較して、小児アジスロマイシン群は18.5例(16.7~20.4)と良好だった(小児アジスロマイシン群で17%[95%CI:4~28]低いことを示す)。

 重篤な有害事象は5件報告され、プラセボ群3件、乳児アジスロマイシン群1件、小児アジスロマイシン群1件であった。

 著者は、「今後、抗菌薬耐性の監視を行う必要がある。全体として、本試験では季節性マラリアの化学予防を受けている死亡率の低い地域でも、生後1~59ヵ月の小児への年2回のアジスロマイシン配布により、死亡率が低下することが示された」と述べ、「これらの結果は、配布対象を生後1~11ヵ月の乳児に限定することは、生後1~59ヵ月のすべての小児への配布に比べ有効ではないことを示すエビデンスとなる」としている。

(医学ライター 菅野 守)