がん関連適応の肝切除、トラネキサム酸で周術期合併症が増加/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/05

 

 がん関連適応の肝切除を受ける患者において、トラネキサム酸は出血または輸血を減少させず周術期合併症を増加させることが示された。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのPaul J. Karanicolas氏らHPB CONCEPT Teamが、多施設共同無作為化プラセボ対照試験「HeLiX試験」の結果を報告した。トラネキサム酸は多くの種類の手術で出血および輸血を減少させることが知られているが、がん関連適応の肝切除を受ける患者における有効性は明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月19日号掲載の報告。

プラセボ対照無作為化試験で術後7日間の赤血球輸血を評価

 研究グループは、トラネキサム酸がプラセボとの比較において肝切除後7日間の赤血球輸血を減らすか否かを調べた。2014年12月1日~2022年11月8日に、肝胆膵手術専門の3次医療センター(カナダ10施設、米国1施設)で被験者を募り、術前麻酔開始時にトラネキサム酸(1gボーラス投与後、8時間かけて1gを点滴投与)またはマッチングプラセボを投与し90日間追跡調査した。

 主要アウトカムは、術後7日以内の赤血球輸血とした。

 適格基準を満たし試験参加に同意したがん関連適応の肝切除を受けるボランティア患者1,384例が無作為化を受けた。被験者、手術担当医、データ収集者は割り付けについて盲検化された。

輸血発生と術中の出血量に有意差なし、合併症はトラネキサム酸群で高率

 主要解析には被験者1,245例が組み入れられた(トラネキサム酸群619例、プラセボ群626例)。平均年齢は63.2歳、女性39.8%、大腸がん肝転移の診断患者56.1%で、周術期の特性は群間で類似していた。

 赤血球輸血は、トラネキサム酸群16.3%(101例)、プラセボ群14.5%(91例)で発生した(オッズ比[OR]:1.15[95%信頼区間[CI]:0.84~1.56]、p=0.38、絶対群間差:2%[95%CI:-2~6])。

 手術中の出血量(トラネキサム酸群817.3mL、プラセボ群836.7mL、p=0.75)、7日間の推定総出血量(それぞれ1,504.0mL、1,551.2mL、p=0.38)はいずれも両群間で同程度であった。

 トラネキサム酸投与を受けた被験者は、プラセボ投与を受けた患者と比較して、合併症の発現頻度が有意に高かった(OR:1.28[95%CI:1.02~1.60]、p=0.03)。静脈血栓塞栓症の発現頻度に有意差は認められなかった(OR:1.68[95%CI:0.95~3.07]、p=0.08)。

(ケアネット)