心房細動を伴う安定冠動脈疾患、エドキサバン単剤が有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/19

 

 心房細動と安定冠動脈疾患を有する患者の治療において、直接第Xa因子阻害薬エドキサバンと抗血小板薬による抗血栓薬2剤併用療法と比較してエドキサバン単剤療法は、12ヵ月後の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、予期せぬ緊急血行再建術、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合リスクを有意に低下させることが、韓国・蔚山大学校のMin Soo Cho氏らが実施した「EPIC-CAD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年9月1日号で報告された。

韓国の多施設共同無作為化試験

 EPIC-CAD試験は、韓国の18施設で実施した非盲検(判定者盲検)無作為化試験であり、2019年5月~2022年9月に参加者を募集した(韓国・心血管研究財団などの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、心房細動と安定冠動脈疾患(血行再建術による治療歴のある冠動脈疾患、または内科的に管理されている冠動脈疾患と定義)を有し、CHA2DS2-VAScスコア(範囲:0~9点、点数が高いほど脳卒中のリスクが大きい)が2点以上(血栓塞栓症のリスクが高いと判定)の患者を対象とした。

 被験者を、標準用量(60mg、1日1回)のエドキサバンを単剤投与する群、または標準用量のエドキサバン+抗血小板薬(治療医の裁量でアスピリンまたはP2Y12阻害薬から選択)を併用投与する群(抗血栓薬2剤併用療法群)に無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは、12ヵ月の時点における全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、予期せぬ緊急血行再建術、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした。

主要虚血性イベントには差がない

 1,040例を登録し、エドキサバン単剤群に524例、抗血栓薬2剤併用療法群に516例を割り付けた。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は72.1(±8.2)歳、22.9%が女性であり、平均CHA2DS2-VAScスコアは4.3(±1.5)点だった。

 12ヵ月の時点で、主要アウトカムのイベントは、抗血栓薬2剤併用療法群で79例(Kaplan-Meier推定発生率16.2%)に発生したのに対し、エドキサバン単剤群では34例(6.8%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.30~0.65、p<0.001)。

 また、12ヵ月時に、主要虚血性イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症の複合)は、エドキサバン単剤群で8例(Kaplan-Meier推定発生率1.6%)、抗血栓薬2剤併用療法群で8例(1.8%)に認めた(HR:1.23、95%CI:0.48~3.10)。

出血性イベントが少ない

 12ヵ月時までに、大出血または臨床的に重要な非大出血は、抗血栓薬2剤併用療法群で70例(Kaplan-Meier推定発生率14.2%)に発生したのに対し、エドキサバン単剤群では23例(4.7%)であった(HR:0.34、95%CI:0.22~0.53)。

 12ヵ月時の大出血の累積発生率は、抗血栓薬2剤併用療法群で4.5%であったのに対し、エドキサバン単剤群では1.3%だった(HR:0.32、95%CI:0.14~0.73)。

 著者は、「この結果は、主に出血性イベントの発生率がエドキサバン単剤群で低かったことによると考えられる。虚血性イベントと死亡の発生率は両群で同程度であった」とまとめている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事