筋層浸潤性尿路上皮がん、術後ペムブロリズマブでDFS改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/10/02

 

 膀胱全摘除術後の高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんの治療において、経過観察と比較してPD-1阻害薬ペムブロリズマブによる補助療法は、無病生存期間(DFS)を有意に延長し、有害事象プロファイルは既報と一致し安全性に関する新たな懸念は認めないことが、米国国立がん研究所のAndrea B. Apolo氏らが実施した「AMBASSADOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年9月15日号に掲載された。

米国の無作為化第III相試験

 AMBASSADOR試験は、米国の246施設で実施した医師主導型の非盲検無作為化第III相試験であり、患者の登録を2017年9月に開始し、高リスク筋層浸潤性尿路上皮がん患者への術後ニボルマブ療法が米国食品医薬品局の承認を得た2021年8月に早期中止した(米国国立がん研究所などの助成を受けた)。

 高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんと診断され膀胱全摘除術を受けた患者702例(予定登録者数[734例]の96%)を登録し、術後補助療法としてペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、静脈内投与)を1年間投与する群に354例(年齢中央値69歳、女性23.4%)、経過観察群に348例(68歳、27.3%)を無作為に割り付けた。

 主要複合評価項目は、ITT集団におけるDFS(無作為化の日から病勢進行または全死因死亡の日までの期間)と全生存(無作為化の日から全死因死亡の日までの期間)とし、いずれかが経過観察群に比べ、ペムブロリズマブ群で有意に延長した場合に試験は成功と判定した。

3年生存率には差がない

 DFSの追跡期間中央値は44.8ヵ月(ペムブロリズマブ群45.7ヵ月、経過観察群40.5ヵ月)であった。ITT集団におけるDFS中央値は、経過観察群が14.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.0~20.2)であったのに対し、ペムブロリズマブ群は29.6ヵ月(20.0~40.7)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.59~0.90、両側のp=0.003)。

 主な副次評価項目であるPD-L1陰性腫瘍を有する患者のDFS中央値は、ペムブロリズマブ群が17.3ヵ月、経過観察群は9.0ヵ月であり(HR:0.71、95%CI:0.53~0.95)、PD-L1陽性腫瘍を有する患者のDFS中央値はそれぞれ36.9ヵ月および21.0ヵ月であった(0.81、0.61~1.08)。

 また、追跡期間中央値が両群とも36.9ヵ月の時点での2回目の中間解析では、ペムブロリズマブ群で131例、経過観察群で126例が死亡し、ITT集団における3年生存率はそれぞれ60.8%および61.9%だった(死亡のHR:0.98、95%CI:0.76~1.26)。

治療関連有害事象は26.4%に

 治療との関連性を問わないGrade3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ群で50.6%、経過観察群で31.6%に発現した。

 ペムブロリズマブ群では、87例(26.4%)に治療関連の有害事象を認め、頻度が高かった全グレードの有害事象は疲労(47.3%)、そう痒(22.4%)、下痢(20.6%)、甲状腺機能低下症(20.0%)であった。Grade5(死亡)の有害事象は5例(呼吸不全1例、多臓器不全1例、敗血症1例、原因不明2例)が報告された。

 経過観察群では、報告された最も頻度が高かった全グレードの有害事象は、疲労(56.1%)、腹痛(33.1%)、末梢感覚神経障害(25.0%)、関節痛(24.7%)であった。Grade5の有害事象は15例だった。

 著者は、「PD-L1の状態は予後予測因子であったが、無病生存に関する有益性を予測するものではなかったため、PD-L1をペムブロリズマブによる術後補助療法の患者選択に用いるべきではない」と述べている。なお、「死亡は、全生存の最終解析に必要な数の80%しか発生しておらず、2回目の中間解析で有効性の境界値を超えていないため、全生存期間データの最終解析は行っていない」という。

(医学ライター 菅野 守)