異常降雨が全死亡リスクと関連、心血管・呼吸器疾患死亡も/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/11/01

 

 日降雨量の強度はさまざまな健康に影響を及ぼしており、異常降雨は全死因死亡、心血管系疾患および呼吸器系疾患による死亡の相対リスク上昇と関連していた。また、その関連は、地域の気候や都市インフラによって異なっていた。ドイツ・German Research Center for Environmental HealthのCheng He氏らが、日降雨量(強度、期間、頻度)の特性と死亡との関連について解析し、報告した。気候変動により、短期的な降雨現象の頻度と深刻さが増している。降雨に関連する健康リスクに関する研究は、主に感染症と暴風雨に焦点を当てており、心血管系や呼吸器系の健康への影響、降雨強度の変化がこれらの状態にどのような影響を与えるかなど、より広範な影響は知られていなかった。BMJ誌2024年10月9日号掲載の報告。

降雨量と死亡率との関連性を、降雨事象別に解析

 研究グループは、Multi-Country Multi-City(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースから、1980~2020年の34ヵ国または地域の645ヵ所における、外因を除く死亡(ICD-10:A00-R99、ICD-9:001-799)または全死因死亡、ならびに心血管系の疾患(I00-I99、390-459)と呼吸器系の疾患(J00-J99、460-519)の特定データを入手するとともに、欧州中期予報センターによる第5世代再解析データセットの陸地成分(ERA5-Land)から同期間と地点における1時間単位の地表降水データを入手した。

 主要アウトカムは、1日当たりの死亡率と、再現期間(ある規模の極端な事象が平均して何年に1回発生するかを表した値)が1年、2年、5年における降雨事象との関連(降雨後14日間の累積相対リスク)で、連続的な相対強度指数を使用して強度応答曲線を作成し、世界規模での死亡リスクを推定した。

 解析対象は、全死因死亡1億995万4,744例、心血管系疾患3,116万4,161例、呼吸器系疾患1,181万7,278例であった。調査期間中、再現期間1年の降雨事象は計5万913件、再現期間2年の降雨事象は8,362件、再現期間5年の降雨事象は3,301件確認された。

再現期間5年の異常降雨は、全死因死亡・心血管系疾患死・呼吸器系疾患死のリスク上昇と有意に関連

 再現期間5年の異常降雨は、1日の全死因死亡率、心血管系疾患死亡率および呼吸器系疾患死亡率の上昇と有意に関連しており、降雨後14日間にわたる累積相対リスクは、それぞれ1.08(95%信頼区間[CI]:1.05~1.11)、1.05(1.02~1.08)、1.29(1.19~1.39)であった。

 再現期間2年の降雨事象は、呼吸器系疾患死亡率のみと関連していたが、再現期間1年の降雨事象については有意な関連は確認されなかった。

 非線形解析により、中~大雨の事象では保護効果(相対リスク<1)がみられ、きわめて強い降雨事象では悪影響(相対リスク>1)に変化することが示された。

 さらに、異常降雨事象による死亡リスクは、気候のタイプ、ベースライン降雨量の変動性および植生被覆によって変化すると思われるが、人口密度と所得水準の緩和効果は有意ではなかった。ベースライン降雨量の変動が小さい地点や植生被覆の低い地点では、リスクが高いことが示された。

 著者は研究の限界として、解析対象となった地点が主に東アジア、欧州、北米であり、中南米とアフリカが少なかったこと、評価結果の正確性がモデル化された出力降水データへの依存から生じる潜在的な曝露の誤分類によって影響を受ける可能性があること、数十年にわたる調査のため、健康データの診断またはコーディングのエラーが生じた可能性があることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

原著論文はこちら