中国・復旦大学のRenjie Chen氏らによる同国主要都市272を対象とした時系列研究の結果、中国では外気温と死亡(すべての自然死および主な心肺疾患死)の関連を包括的に描くと非線形の関係性が示され、疾患負荷は主に中程度の寒さに起因していることが明らかにされた。先行研究において、すべての死亡負荷原因は評価されているが、非至適気温に起因する特異的疾患についてはほとんど評価されていない。また、非至適気温と関連する死因の包括的評価は行われていなかった。BMJ誌2018年10月31日号掲載の報告。
中国272市の非事故死データを分析、気温と死因の関連を調査
研究グループは、2013年1月~2015年12月のDisease Surveillance Point System of Chinaでカバーされた272市の非事故死データを分析し、気温と死因の関連を調べ、非至適気温に関係する疾患負荷を定量化した。
すべての非事故死および主な心肺疾患死の1日当たりの件数、人口統計学的、気候的、地理的、社会経済的特性などの潜在的影響修飾因子を調べ、市の特異的な関連を推定するために分布ラグ非線形モデルを用いて解析を行った。また、国レベルおよび地域レベルでの推定影響を入手するために多変量メタ回帰分析による解析も行った。
中程度の寒さの影響が最も強い
対象期間中に、182万6,186例の非事故死の記録があった。分析の結果、気温と死亡は、一貫して逆J曲線の関連が示された。
国レベルの平均気温でみると、最小死亡気温(22.8℃、気温分布の79.1stパーセンタイル値に相当)との比較において、極度低温(-1.4℃、2.5thパーセンタイル値)のほうが極度高温(29.0℃、97.5thパーセンタイル値)よりも相対的に死亡リスクは高かった。極度低温の死亡リスクは1日後にはみられるようになり、5日後まで上昇した後は15日後まで低下を続け、その後も軽度の影響があり、14日以上続くことが示された。一方、極度高温の影響は、当日に最も強く、2~3日後には大幅に減弱され、その後は顕著な死亡率の転位(相対リスクが1.0を下回る)が認められた。
非事故死全体のうち、14.33%が非至適気温に起因していた。内訳をみると、中程度の寒さ(範囲:-1.4~22.8℃)の起因割合は10.49%、中程度の暑さ(22.8~29.0℃)は2.08%、極度の寒さ(-6.4~-1.4℃)は1.14%、極度の暑さ(29.0~31.6℃)は0.63%であった。
死因別割合は、すべての心血管疾患が17.48%、冠動脈性心疾患18.76%、すべての脳卒中16.11%、虚血性脳卒中14.09%、出血性脳卒中18.10%、すべての呼吸器疾患10.57%、COPDが12.57%であった。これら死因についても気温別の起因割合をみると、いずれの疾患も中程度の寒さが最も多くを占めていた。
分析の結果、死亡のリスクと負荷は、温暖なモンスーンおよび亜熱帯モンスーンの気候区分下、特異的サブグループ(女性、75歳以上、教育を受けた期間が9年以下)、また、都会化がより進んでいる、セントラルヒーティングの期間が短いといった特色がある市で、より顕著であった。
(ケアネット)