肥満の膝OA患者へのセマグルチド、疼痛を改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/07

 

 肥満(BMI値≧30)かつ中等度~重度の疼痛を伴う変形性膝関節症(OA)を有する患者において、週1回のセマグルチド皮下投与はプラセボと比較して、体重および膝OA関連の疼痛を有意に減少したことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のHenning Bliddal氏らSTEP 9 Study Groupが二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。体重の減少は疼痛などの膝OAの症状を緩和することが示されているが、肥満者のGLP-1受容体作動薬の効果は十分には研究されていなかった。NEJM誌2024年10月31日号掲載の報告。

ベースラインから68週までの体重変化率、疼痛スコアの変化を評価

 試験は11ヵ国61施設で68週間にわたり行われた。被験者は、肥満(BMI値≧30)であり、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準で臨床的に膝OAと診断され、対象となる膝に放射線学的に中等度の変形が認められ、膝OA関連の疼痛(無作為化時のWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index[WOMAC]疼痛スコアが40以上[スコア範囲:0~100、高スコアほどアウトカムが不良であることを示す])を有する患者を適格とした。

 被験者を2対1の割合でセマグルチド群、プラセボ群に無作為に割り付け、セマグルチド(2.4mg)を週1回皮下投与またはプラセボを投与し追跡評価した。試験期間中、両群ともカロリー制限食と身体活動のカウンセリングを受けた。セマグルチドの投与は0.24mgで開始し、目標用量2.4mgの到達は16週時点とされた。2.4mgで許容できない副作用が認められた被験者には、治験担当医師が安全と判断すればより低用量(1.7mg)による投与の継続が可能であり、プロトコールでは、治験担当医師の裁量で目標用量2.4mgまで増量するための追加の試行を少なくとも1回行うことが推奨された。

 主要エンドポイントは、ベースラインから68週までの体重変化率およびWOMAC疼痛スコアの変化。重要な検証的副次エンドポイントは、SF-36(ver.2)の身体機能スコア(スコア範囲:0~100、高スコアほどより良好な健康状態であることを示す)であった。

体重、疼痛スコアいずれも有意に減少、SF-36身体機能スコアも有意に改善

 2021年10月~2022年3月に計407例が無作為化された(セマグルチド群271例、プラセボ群136例)。平均年齢56歳、平均BMI値40.3、平均WOMAC疼痛スコア70.9であり、被験者の81.6%は女性であった。

 被験者の多くが治療ピリオドを完了し(セマグルチド群86.7%、プラセボ群77.9%)、試験を完了した(それぞれ90.8%、89.7%)。試験ピリオドを完了したセマグルチド群235例において、最終受診時に2.4mgの投与を受けた被験者は211例(89.8%)であった。

 ベースラインから68週までの体重の平均変化率は、セマグルチド群-13.7%、プラセボ群-3.2%であった(p<0.001)。同様にWOMAC疼痛スコアの変化は、セマグルチド群-41.7ポイント、プラセボ群-27.5ポイントであった(p<0.001)。

 SF-36身体機能スコアの改善は、セマグルチド群がプラセボ群よりも有意に大きかった(スコアの平均変化12.0ポイントvs.6.5ポイント、p<0.001)。

 重篤な有害事象の発現は、両群で同程度であった(セマグルチド群10.0%、プラセボ群8.1%)。最も多くみられた重篤な有害事象は良性、悪性および詳細不明の新生物(それぞれ3.3%、2.2%)および胃腸障害(1.5%、0.7%)であった。試験レジメンの永続的な中止に至ったのはセマグルチド群6.7%、プラセボ群3.0%であり、最も多くみられた理由は胃腸障害であった。

(ケアネット)

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コメンテーター : 名郷 直樹( なごう なおき ) 氏

武蔵国分寺公園クリニック 名誉院長

J-CLEAR理事