中国・北京中医薬大学のHaiqiang Yao氏らが成人の2型糖尿病患者を対象としたGLP-1受容体作動薬の76試験をネットワークメタ解析した結果、プラセボと比べ、チルゼパチドによるヘモグロビンA1c(HbA1c)と空腹時血糖値の低下が最も大きく、血糖コントロールの有効性が最も高いGLP-1受容体作動薬であることが示された。また、GLP-1受容体作動薬は体重管理も大幅に改善することが示され、なかでも体重減の効果が最も大きかったのはCagriSema(セマグルチドとcagrilintideの合剤)だった。一方で、GLP-1受容体作動薬は、とくに高用量の投与で消化器系の有害事象がみられ、安全性について懸念があることも明らかになったという。BMJ誌2024年1月29日号掲載の報告。
2023年8月までの試験をシステマティックレビューとネットワークメタ解析
研究グループは、2型糖尿病成人患者において、GLP-1受容体作動薬による血糖コントロール、体重、脂質プロファイルの有効性と安全性を比較評価することを目的とし、システマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。
PubMed、Web of Science、Cochrane CENTRALおよびEmbaseを、データベース発刊から2023年8月19日まで検索し、GLP-1受容体作動薬治療を受けた2型糖尿病成人患者を登録しプラセボまたはほかのGLP-1受容体作動薬と比較した、追跡期間12週間以上の無作為化対照試験を適格とし特定した。クロスオーバーデザインの試験、GLP-1受容体作動薬と他クラスの薬剤をプラセボ群なしで比較した非劣性試験、販売が中止された薬剤を使用したもの、英語以外で記述された試験などは除外した。
体重減は対プラセボでCagriSemaが-14kg、チルゼパチドが-8kg
適格基準を満たしたのは76試験で、15種のGLP-1受容体作動薬と被験者総数3万9,246例が、ネットワークメタ解析に組み入れられた。プラセボとの比較において、15種すべてのGLP-1受容体作動薬が、HbA1cと空腹時血糖値を低下させた。
なかでもチルゼパチドは、HbA1c濃度(対プラセボの平均差:-2.10%、95%信頼区間[CI]:-2.47~-1.74、SUCRA:94.2%、信頼性のエビデンス:高)、空腹時血糖値(-3.12mmol/L、95%CI:-3.59~-2.66、97.2%、高)の低下が最も大きく、血糖コントロールについて最も有効なGLP-1受容体作動薬であることが示された。
さらに、GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病成人患者の体重管理に強力なベネフィットを有することが示された。なかでもCagriSemaは体重減少が最も大きく(対プラセボの平均差:-14.03kg、95%CI:-17.05~-11.00、信頼性のエビデンス:高)、チルゼパチド(-8.47kg、-9.68~-7.26、高)がそれに続いた。
セマグルチドは、LDL値の低下(対プラセボの平均差:-0.16mmol/L、95%CI:-0.30~-0.02)と総コレステロール値の低下(-0.48mmol/L、-0.84~-0.11)に有効であった。
また今回の解析では、GLP-1受容体作動薬による消化器系の有害事象、とくに高用量投与の安全性について懸念があることが示唆された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)