薬物療法を要する院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/11/15

 

 薬物療法を要する院外心停止成人患者において、骨髄路確保戦略を用いても静脈路確保戦略を用いた場合と比べて、30日生存率は高くならなかった。英国・ウォーリック大学のKeith Couper氏らPARAMEDIC-3 Collaboratorsが、英国の11の救急医療システムで実施したプラグマティックな無作為化非盲検試験「PARAMEDIC-3試験」の結果を報告した。院外心停止患者の場合、アドレナリン(エピネフリン)などの薬剤の有効性は投与時間によって大きく左右される。骨髄内投与は静脈内投与より迅速な薬剤投与が可能であるが、臨床アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年10月31日号掲載の報告。

骨髄路群と静脈路群に無作為化、30日生存率を比較

 研究グループは、2021年11月~2024年7月に英国の11の救急医療システムにおいて、院外心停止となり救急救命士による心肺蘇生中に薬剤投与のため血管アクセスが必要となった成人患者を、骨髄路群または静脈路群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、施設で層別化し封筒法が用いられた。

 主要アウトカムは30日生存率、副次アウトカムは無作為化後の自己心拍再開、退院時の良好な神経学的アウトカム(修正Rankinスケールスコア[スコア範囲:0~6、高スコアほど障害が大きいことを示す]が3以下)などであった。多重性の補正は行わなかった。

30日生存率は、4.5% vs.5.1%で有意差なし

 計1万723例がスクリーニングされ、6,096例が無作為化された。このうち14例が誤って無作為化されており、解析対象は6,082例(骨髄路群3,040例、静脈路群3,042例)であった。本試験は、6,096例が登録された時点で、2回目の正式な中間解析を行う前に早期中止となった。

 30日生存率は、骨髄路群が4.5%(137/3,030例)、静脈路群が5.1%(155/3034例)で、補正後オッズ比(OR)は0.94(95%信頼区間[CI]:0.68~1.32、p=0.74)であった。

 退院時の良好な神経学的アウトカムは、骨髄路群が2,994例中80例(2.7%)、静脈路群が2,986例中85例(2.8%)で認められた(補正後OR:0.91、95%CI:0.57~1.47)。

 あらゆる時点で自己心拍再開が得られた患者は、骨髄路群が3,031例中1,092例(36.0%)、静脈路群が3,035例中1,186例(39.1%)であった(補正後OR:0.86、95%CI:0.76~0.97)。試験期間中の有害事象は、骨髄路群で1件(特定の活動中の軽度下肢痛)が報告された。

 なお、著者は、蘇生処置の質に関するデータは収集していないこと、病院での蘇生後のケアに関するプロトコールの作成や情報収集はしていないこと、病院外での救急医療従事者の盲検化はできなかったこと、などを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)