院外心停止後に蘇生された昏睡患者において、目標PaCO2値を軽度高値とする治療(targeted mild hypercapnia)が正常値とする治療(targeted normocapnia)と比較して、6ヵ月後の良好な神経学的アウトカムに結びつかなかったことが示された。オーストラリア・Austin HospitalのGlenn Eastwood氏らが、17ヵ国63施設のICUが参加した医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験「Targeted Therapeutic Mild Hypercapnia after Resuscitated Cardiac Arrest trial:TAME試験」の結果を報告した。ガイドラインでは、院外心停止後に蘇生した昏睡状態の成人患者に対して、正常PaCO2値を治療目標とすることが推奨されているが、軽度高値とするほうが脳血流を増加させ神経学的アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。
50~55mmHg vs.35~45mmHg、6ヵ月後のアウトカムを比較
研究グループは、心原性と推定されるかまたは原因不明の院外心停止後に蘇生しICUに入室した昏睡状態の成人患者を、軽度高値群(目標PaCO
2値:50~55mmHg)または正常値群(35~45mmHg)に1対1の割合で無作為に割り付け、無作為化から24時間それぞれの目標値を維持した。
主要アウトカムは、6ヵ月後のGlasgow Outcome Scale-Extended(GOS-E)(スコア範囲:1[死亡]~8、スコアが高いほど神経学的アウトカムが良好であることを示す)による評価で、5点以上(中等度以下の障害を示す)で定義された良好な神経学的アウトカムとし、盲検下で評価した。
副次アウトカムは、6ヵ月以内の死亡および修正Rankinスケール(mRS)(スコア範囲:1[障害なし]~6[死亡])で評価した6ヵ月後の機能的アウトカム不良(mRSスコア:4~6)などであった。
1,548例が解析対象、主要アウトカムの有意差なし
2018年3月~2021年9月の期間に1,700例が登録され、847例(49.8%)が軽度高値群、853例(50.2%)が正常値群に割り付けられた。合計24例が同意撤回となり、1,676例中1,548例で主要アウトカムのデータが得られた。
6ヵ月後の良好な神経学的アウトカムを認めた患者は、軽度高値群764例中332例(43.5%)、正常値群で784例中350例(44.6%)であった(相対リスク:0.98、95%信頼区間[CI]:0.87~1.11、p=0.76)。
副次アウトカムである無作為化後6ヵ月以内の死亡は、軽度高値群816例中393例(48.2%)、正常値群832例中382例(45.9%)で報告された(相対リスク1.05、95%CI:0.94~1.16)。有害事象の発現率は、両群間で有意差はなかった。
(ケアネット)