院外心停止を起こした成人患者に薬物療法を行う際の投与経路として、静脈路と比較して骨髄路は、持続的な心拍再開に関して差はなく、30日後の生存も同程度であることが、デンマーク・オーフス大学のMikael F. Vallentin氏らが実施した「IVIO EU試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年10月31日号で報告された。
デンマークの医師主導無作為化臨床試験
IVIO EU試験は、デンマークの5つの地域(住人約590万人)の救急医療施設で実施した医師主導の無作為化臨床試験であり、2022年3月~2024年5月に患者のスクリーニングを行った(Novo Nordisk Foundationなどの助成を受けた)。
年齢18歳以上で、非外傷性の院外心停止中に血管アクセスが適用とされた患者1,479例(平均[±SD]年齢69±15歳、男性70%、自宅での心停止発症81%)を登録した。これらの患者を、血管アクセスとして骨髄路を用いる群に731例、静脈路を用いる群に748例を割り付けた。
主要アウトカムは持続的な心拍再開とし、少なくとも20分間、胸部圧迫を行わなくても脈拍を触知できる、または他の循環の徴候を認めることと定義した。また、副次アウトカムとして、30日の時点での生存、および良好な神経学的アウトカム(修正Rankinスケール[0~6点、高スコアほど機能障害が重度]のスコアが0~3点)を伴う30日後の生存の評価を行った。
良好な神経学的アウトカムを伴う30日生存率も同程度
2回の試行で血管アクセスの確立に成功したのは、骨髄路群が669例(92%)、静脈路群は595例(80%)であった。最初の血管アクセスが成功するまでの時間中央値は、それぞれ14分(四分位範囲:10~17)および14分(10~18)、エピネフリンの初回投与までの時間中央値は、15分(12~19)および15分(12~20)と両群で同じだった。
持続的心拍再開は、骨髄路群で221例(30%)、静脈路群で214例(29%)に認め、両群間に有意な差はなかった(リスク比:1.06、95%信頼区間[CI]:0.90~1.24、p=0.49)。
30日の時点で生存していた患者は、骨髄路群85例(12%)、静脈路群75例(10%)であった(リスク比:1.16、95%CI:0.87~1.56)。また、30日時に良好な神経学的アウトカムを伴った状態で生存していた患者は、それぞれ67例(9%)および59例(8%)だった(1.16、0.83~1.62)。
有害事象はまれでイベントは限定的
事前に規定された有害事象の発現はまれで、イベントは血管外漏出、徐脈性不整脈、心室性頻脈性不整脈に限られていた。コンパートメント症候群、骨髄炎、上腕骨または脛骨の外傷性骨折、血管アクセス関連の炎症、壊死、静脈炎の報告はなかった。
著者は、「これらの結果は、心停止中に投与された薬剤の効果は、投与経路には大きく依存しない可能性が高いことを示唆する」「エピネフリンは、心停止患者の短期的アウトカムに対する影響が非常に大きいことを考慮すると、骨髄路と静脈路の薬物動態の違いに起因する心拍再開に関する重要な違いは、本試験で検出された可能性が高い」としている。
(医学ライター 菅野 守)