2050年までの早期死亡改善に必要なことは?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/04

 

 2050年までに世界の年間の早期死亡(70歳未満の死亡)の割合を半減させ、全年齢層で生活の質(QOL)を向上させることは可能と考えられるが、高パフォーマンス国と中パフォーマンス国が早期死亡の改善率を維持または加速度的に上昇させるためには、子供と成人の健康に対する多額の投資を要することが、ノルウェー・ベルゲン大学のOle F. Norheim氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年11月20日号に掲載された。

10地域と人口の多い30ヵ国のクロスカントリー分析

 研究グループは、2050年までの早期死亡率の半減は可能かの検証を目的に、70歳に至る前の死亡率の大きなばらつきと、過去50年間(1970~2019年)のその傾向を、世界の10の地域と最も人口の多い30ヵ国で比較するクロスカントリー分析を行った(ノルウェー開発協力局[NORAD]などの助成を受けた)。

 早期死亡の割合(probability of premature death:PPD)に関するすべての分析には、国際連合(UN)世界人口推計(World Population Prospects)2024年版の生命表を用いた。これらの生命表から、1年ごとの年齢別死亡率を用いて性別、国別、年別の死亡の割合を算出した。

70歳未満の死亡率は半世紀で56%から31%に減少

 世界全体のPPDは、1970年の56%から2019年には31%に減少したが、紛争や社会的不安定、HIV/AIDSにより逆に増加した国もあった。また、成人と比較して子供の死亡率は、より迅速に低下していた。

 1970~2019年の半世紀に、31年以内にPPDの半減を達成したのは、世界のすべての国のうちでは34ヵ国で、人口の多い上位30ヵ国のうちでは7ヵ国(バングラデシュ[半減に要した期間:1991~2022年]、イラン[1983~2006年]、中国[1970~2001年]、ベトナム[1972~1995年]、韓国[1992~2011年]、イタリア[1983~2012年]、日本[1970~2001年])であった。

人口が多く、最近の改善率が良好な国は7ヵ国

 人口の多い上位30ヵ国のうち、2010~2019年の期間に年平均値(2.2%)を超える改善率を達成したのは7ヵ国(韓国[3.9%]、バングラデシュ[2.8%]、ロシア[2.7%]、エチオピア[2.4%]、イラン[2.4%]、南アフリカ共和国[2.4%]、トルコ[2.3%])であった。この状況が持続すれば、2050年までにPPDが半減する可能性があると考えられた。

 著者は、「早期死亡を減少させることで、より多くの人々が健康で長生きできるようになると考えられるが、寿命の延長に伴って慢性疾患の罹患期間が長期化する人々が増えるため、慢性疾患の罹患率を抑制するための投資も必要となるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 名郷 直樹( なごう なおき ) 氏

武蔵国分寺公園クリニック 名誉院長

J-CLEAR理事