子宮内膜症あるいは子宮筋腫の既往歴のある女性は、生殖可能年齢を超え70歳未満での早期死亡の長期的リスクが高まる可能性があり、主に婦人科系がんによる死亡リスクの増加とも関連し、子宮内膜症はがん以外の死亡リスクの増加とも関連していた。中国・上海交通大学のYi-Xin Wang氏らが、前向きコホート研究の結果を報告した。子宮内膜症と子宮筋腫は、慢性疾患の長期的リスクを高めることが示されているが、早期死亡リスクに及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2024年11月20日号掲載の報告。
米国の女性看護師、約11万例を追跡
研究グループは、米国で1989年に開始された前向きコホート研究「Nurses’ Health Study II」に登録された25~42歳の女性看護師を対象とした。同研究では2019年までの30年以上にわたり、生殖特性、行動因子および健康状態に関して2年ごとに郵送または電子アンケート調査が行われている。
本検討では、心血管疾患またはがんの診断歴のある女性、子宮内膜症または子宮筋腫の診断前に子宮摘出術を受けた女性、子宮内膜症あるいは子宮筋腫を腹腔鏡検査あるいは超音波検査/子宮摘出で確認されたことがないと報告した女性は除外し、計11万91例を解析対象とした。
主要アウトカムは、2年ごとのアンケートで報告された腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症、または超音波検査や子宮摘出で確認された子宮筋腫別の全死因死亡および死因別早期死亡で、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)を推定した。70歳未満の死亡を早期死亡と定義した。
子宮内膜症や子宮筋腫は、70歳未満の早期死亡と関連
299万4,354人年の追跡調査(1人当たり27.2年)において、早期死亡は4,356例認められ、そのうち1,459例ががん、304例が心血管疾患、90例が呼吸器疾患によるものであった。
腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症を有する女性と有していない女性における全死因による早期死亡の粗発生率は、それぞれ1,000人年当たり2.01および1.40であった。年齢補正モデルを用いた場合、腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症は早期死亡と関連していた(HR:1.19、95%信頼区間[CI]:1.09~1.30)。行動因子を含む潜在的な交絡因子で補正した年齢調整モデルを用いた場合は、さらに関連が強まった(1.31、1.20~1.44)。
死因別死亡の解析の結果、腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症は主に、老衰および原因不明の疾患(HR:1.80、95%CI:1.19~2.73)、非がん性呼吸器疾患(1.95、1.11~3.41)、神経系および感覚器官の疾患(2.50、1.40~4.44)、および婦人科悪性腫瘍(2.76、1.79~4.26)による死亡リスクが高かった。
超音波検査または子宮摘出術で確認された子宮筋腫は、全死因早期死亡とは関連していなかったが(HR:1.03、95%CI:0.95~1.11)、婦人科悪性腫瘍による早期死亡リスクの増加と関連していた(2.32、1.59~3.40)。心血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクは、子宮内膜症と子宮筋腫の併存状況によって異なり、子宮内膜症と子宮筋腫の両方を有している女性では全死因早期死亡リスクが増加した。
(医学ライター 吉尾 幸恵)