非急性硬膜下血腫、中硬膜動脈塞栓術は有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/09

 

 症候性の非急性硬膜下血腫患者(多くが穿頭ドレナージを受けた)の治療において、通常治療と比較して中硬膜動脈塞栓術は、90日の時点での症状を伴う硬膜下血腫の再発または進行の発生率はほぼ同じだが、重篤な有害事象の頻度は有意に低いことが、中国・海軍軍医大学のJianmin Liu氏らMAGIC-MT Investigatorsが実施した「MAGIC-MT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年11月21日号に掲載された。

中国の医師主導型無作為化対照比較試験

 MAGIC-MT試験は、中国の31施設で実施した医師主導の非盲検無作為化対照比較試験であり、2021年3月~2023年5月に患者を募集した(Shanghai Shenkang Hospital Development Centerなどの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、症候性の非急性硬膜下血腫でmass effectがみられ、日常的な活動性が自立している(修正Rankin尺度のスコアが0~2点)患者を対象とした。これらの患者を、外科医の裁量で穿頭ドレナージを行う群または非外科的治療を行う群に割り付け、次いで各群の患者を液体塞栓物質を用いた中硬膜動脈塞栓術を受ける群または通常治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。開頭術や緊急血腫除去を要する病態の患者は除外した。

 主要アウトカムは、無作為化から90日以内における症候性の硬膜下血腫の再発または進行とした。

副次アウトカムにも差はない

 722例を登録し、塞栓術群に360例、通常治療群に362例を割り付けた。全体の年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、596例(82.5%)が男性で、診断時に頭部外傷が379例(52.5%)で確認され、53例(7.3%)が抗血栓薬の投与を受けていた。また、565例(78.3%)が穿頭ドレナージを受け、塞栓術群では99.6%の患者が塞栓術後に穿頭ドレナージを受けた。

 90日の時点での症候性硬膜下血腫の再発・進行の発生率は、塞栓術群が6.7%(24例)、通常治療群は9.9%(36例)と、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:-3.3%ポイント、95%信頼区間[CI]:-7.4~0.8、p=0.10)。

 副次アウトカムである90日後の修正Rankin尺度スコア中央値は、両群とも0点(IQR:0~1)であり、変化量の補正済み共通オッズ比は1.10(95%CI:0.82~1.46)であった。また、他の副次アウトカム(90日後の生活の質[EQ-5D-5Lスコア]、平均入院日数、再入院率、退院後のリハビリテーション病院受診、画像上の血腫の変化など)についても両群間に差はなかった。

塞栓術関連合併症の発現率は0.8%

 安全性の主要アウトカムである90日間に発生した重篤な有害事象(死亡を含む)の割合は、塞栓術群が通常治療群に比べ有意に少なかった(6.7%[24例]vs.11.6%[42例]、相対リスク:0.58、95%CI:0.34~0.98、p=0.02)。また、90日間の死亡率は、塞栓術群0.6%(2例)、通常治療群2.2%(8例)だった(相対リスク:0.27、95%CI:0.06~1.25)。

 塞栓術群では、塞栓術関連合併症が3例(0.8%)で発現した(顔面神経麻痺1例、造影剤に対するアレルギー反応2例)。穿頭ドレナージ関連合併症の発生率は、塞栓術群2.5%(9例)、通常治療群1.1%(4例)だった(相対リスク:2.26、95%CI:0.69~7.40)。

 著者は、「先行研究における中硬膜動脈塞栓術後の再発または進行の発生率は1.4~8.9%であり、通常治療は9.3~27.5%であるが、本研究では中硬膜動脈塞栓術群で発生率が有意に低いことは示されなかった」とまとめ、「穿頭ドレナージを再度行うか、レスキューとして行うかの判断は、各参加施設の医師の裁量に任され、治療医とコアラボラトリーのメンバーは試験群の割り当てを知っていたため、アウトカムの評価にバイアスが生じた可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)