症候性の慢性硬膜下血腫患者において、補助的中硬膜動脈塞栓術と標準治療の併用は標準治療単独と比べて治療失敗リスクを低下させ、短期的には後遺症を伴う脳卒中や死亡の発生の増加には至らなかった。米国・Stony Brook MedicineのDavid Fiorella氏らSTEM Investigatorsが、国際多施設共同非盲検無作為化比較試験「STEM試験」の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療を受けている患者は治療失敗のリスクが高い。同患者集団における補助的中硬膜動脈塞栓術の、治療失敗のリスクへの影響は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年11月20日号掲載の報告。
標準治療+中硬膜動脈塞栓術vs.標準治療単独を評価
STEM試験では、画像診断で10mm超の症候性慢性の硬膜下血腫を認める患者を試験対象の適格とし、標準治療の補助として中硬膜動脈塞栓術を受ける群(塞栓術群)または標準治療単独を受ける群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化の前に、各患者に対して外科的または非外科的な標準治療のいずれかを受けることが選択されていた。
有効性に関する主要エンドポイントは、(1)180日時点の慢性硬膜下血腫の再発または残存(>10mm)、(2)180日以内の再手術または手術による救命処置、(3)180日以内の重大な障害を伴う脳卒中、心筋梗塞またはあらゆる神経学的要因による死亡の複合とした。
安全性に関する主要エンドポイントは、30日以内の重大な障害を伴う脳卒中または全死因死亡の複合であった。
主要アウトカムのイベント発生のオッズ比0.36
2020年11月~2023年5月に32の試験参加施設で310例の患者が登録され、塞栓術群に149例、対照群に161例が無作為に割り付けられた。外科的標準治療を受けたのは189例、非外科的標準治療を受けたのは121例であった。患者の平均年齢は73歳、70%が男性であった。
主要有効性解析において、主要アウトカムのイベントは塞栓術群で19/120例(16%)、対照群で47/129例(36%)に発生した(オッズ比:0.36、95%信頼区間:0.20~0.66、p=0.001)。
主要安全性解析において、30日以内の重大な障害を伴う脳卒中または全死因死亡の発生は、塞栓術群4/144例(3%)、対照群5/166例(3%)であった。180日間における全死因死亡は、塞栓術群12例(8%)、対照群9例(5%)であり、神経学的要因による死亡は塞栓術群1例(1%)、対照群3例(2%)であった。
これらの結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、硬膜下血腫の治療における中硬膜動脈塞栓術の安全性を評価すべきであろう」と述べている。
(ケアネット)