心筋梗塞へのコルヒチンは予後を改善するか/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/10

 

 急性心筋梗塞患者の治療において、発症後すぐに抗炎症薬コルヒチンの投与を開始し、3年間継続しても、プラセボと比較して心血管アウトカム(心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術の複合)の発生率は減少せず、その一方で3ヵ月後には炎症マーカーが有意に低下することが、カナダ・マクマスター大学のSanjit S. Jolly氏らCLEAR Investigatorsが実施した「CLEAR試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年11月17日号で報告された。

14ヵ国の医師主導型無作為化プラセボ対照比較試験

 CLEAR試験は、心筋梗塞発症後におけるコルヒチンとスピロノラクトンの心血管アウトカムの改善効果の評価を目的とする2×2ファクトリアルデザインの医師主導型無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年2月~2022年11月に14ヵ国104施設で患者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。

 心筋梗塞患者をコルヒチンまたはプラセボ、スピロノラクトンまたはプラセボの投与を受ける群に無作為に割り付けた。本論では、コルヒチンに関する結果が報告された。

 有効性の主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術の複合とし、time-to-event解析を行った。

主要アウトカムの個々の項目にも差はない

 7,062例を登録し、コルヒチン群に3,528例、プラセボ群に3,534例を割り付けた。全体の平均年齢は61歳、女性が20.4%であった。9.0%が心筋梗塞の既往歴を有し、10.0%が経皮的冠動脈インターベンションを受けており、18.5%が糖尿病で、95.1%がST上昇型心筋梗塞(STEMI)、4.9%が非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)だった。

 追跡期間中央値3年の時点で、主要アウトカムのイベントは、コルヒチン群が322例(9.1%)、プラセボ群は327例(9.3%)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.85~1.16、p=0.93)。

 主要アウトカムを構成する4つの項目にも差はなかった。心血管系の原因による死亡はコルヒチン群3.3% vs.プラセボ群3.2%(HR:1.03、95%CI 0.80~1.34)、心筋梗塞の再発は2.9% vs.3.1%(0.88、0.66~1.17)、脳卒中は1.4% vs.1.2%(1.15、0.72~1.84)、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術は4.6% vs.4.7%(1.01、0.81~1.26)であった。

重篤な有害事象に差はない、下痢が多かった

 3ヵ月の時点におけるC反応性蛋白の最小二乗平均(ベースラインの値で補正)はコルヒチン群で低かった(2.98±0.19mg/L vs.4.27±0.19mg/L、群間差:-1.28mg/L、95%CI:-1.81~-0.75)。

 有害事象(コルヒチン群31.9% vs.プラセボ群31.7%)および重篤な有害事象(6.7% vs.7.4%)の発生率は両群で同程度だった。また、下痢の頻度がコルヒチン群で高かった(10.2% vs.6.6%、p<0.001)が、重篤な感染症には差がなかった(2.5% vs.2.9%)。

 著者は、「下痢の発生率の増加とC反応性蛋白の低下は予想どおりであり、本試験におけるコルヒチンの生物学的効果を支持するものであった」「最近のメタ解析では、コルヒチンによる心血管系以外の原因による死亡の名目上の増加が示されているが、本試験では逆にプラセボ群に比べて発生率が低かった(1.3% vs.1.9%、HR:0.68、95%CI:0.46~0.99)」としている。また、「本試験のデータが提示される前に、欧州心臓病学会は冠動脈アテローム硬化性疾患患者に対するコルヒチンの推奨をクラスIIbからクラスIIaに変更し、米国食品医薬品局は冠動脈疾患の治療薬として本薬を承認している」という。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 院長

J-CLEAR評議員