ダークチョコレートの摂取量増加は2型糖尿病リスク低下と関連したが、ミルクチョコレートではそのような関連はみられなかった。ミルクチョコレートの摂取量増加は長期的な体重増加と関連したが、ダークチョコレートではそのような関連はみられなかった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らが、米国の看護師および医療従事者を対象とした大規模前向きコホート研究のデータを用いて行った解析の結果を報告した。チョコレートにはフラバノールが多く含まれ、無作為化試験で心代謝へのベネフィットや2型糖尿病のリスクを軽減することが示されている。ただしチョコレートの摂取と2型糖尿病のリスクとの関連性は観察試験では一貫した結果が示されておらず、なお議論の的となっていた。研究グループは、ダークチョコレートとミルクチョコレートでは、カカオ含有量や砂糖、ミルクといった成分割合が異なり、2型糖尿病リスクとの関連性が異なる可能性があるとして、これまで行われていなかったチョコレートの種類(ダークチョコレート、ミルクチョコレート)との関連を調べた。BMJ誌2024年12月4日号掲載の報告。
米国NHS、NHSII、HPFS被験者のデータを解析
研究グループは、米国で行われた3つの前向きコホート研究(Nurses' Health Study[NHS、1986~2018年]、Nurses' Health Study II[NHSII、1991~2021年]、Health Professionals Follow-Up Study[HPFS、1986~2020年])のデータを用いて、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、およびチョコレート全体の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連を調べた。
チョコレート全体の解析のベースライン(NHSおよびHPFSは1986年、NHSIIは1991年の時点)には、2型糖尿病、心血管疾患、がんに罹患していない19万2,208例が対象に含まれた。内訳は、NHSの女性6万3,798例(平均年齢52.3歳)、NHSIIの女性8万8,383例(36.1歳)、HPFSの男性4万27例(53.1歳)。
チョコレートの種類別の解析のベースライン(NHSおよびHPFSは2006年、NHSIIは2007年の時点)には、11万1,654例が対象に含まれた。内訳は、NHSの女性3万9,400例(平均年齢70.4歳)、NHSIIの女性5万8,187例(52.3歳)、HPFSの男性1万4,067例(68.3歳)。
主要アウトカムは2型糖尿病の発症で、2年ごとのフォローアップ時の質問票における自己報告で特定し、研究担当医が検証済みの補足質問票で診断を確定した。
主要解析ではCox比例ハザードモデルを用いて、チョコレートの摂取量(区分)ごとに2型糖尿病のリスクを評価した。
ダークチョコ摂取群は1サービング/週摂取につきリスクが3%低下
チョコレート全体の主要解析では、追跡期間482万9,175人年の間に1万8,862例の2型糖尿病発症が確認された。被験者個々の生活習慣、食事リスク因子で補正後、あらゆるチョコレートを5サービング/週以上摂取する被験者の2型糖尿病リスクは、まったくまたはまれにしか摂取しない被験者と比較して10%(95%信頼区間[CI]:2~17)低かった(傾向のp=0.07)。
チョコレートの種類別の解析では、追跡期間127万348人年の間に4,771例の2型糖尿病発症が確認された。被験者個々の生活習慣、食事リスク因子で補正後、ダークチョコレートを5サービング/週以上摂取する被験者の2型糖尿病リスクは、まったくまたはまれにしか摂取しない被験者と比較して21%(95%CI:5~34)低かった(傾向のp=0.006)。
スプライン回帰分析により、ダークチョコレート摂取と2型糖尿病のリスクとの間には線形の用量反応関係があり(線形性のp=0.003)、1サービング/週のダークチョコレート摂取増加につきリスクが3%(95%CI:1~5)低下することが観察された。
ミルクチョコ摂取群は有意なリスク低下みられず、体重増加と正の相関
一方、ミルクチョコレートの摂取と2型糖尿病リスクとの間には有意な関連性はなかった。最低摂取群を対照とした場合の最高摂取群の多変量補正後ハザード比は0.94(95%CI:0.79~1.12、傾向のp=0.75)であった。
また、ミルクチョコレートの摂取は、体重増加と正の相関関係があった。4年間の体重増加が、摂取量に変化がなかった人と比較して摂取量が増えた人のほうが0.35kg(95%CI:0.27~0.43)多かった。ダークチョコレートの摂取では、そのような体重変化との関連性はなかった(-0.06kg、-0.13~0.02)。
これらの結果を踏まえて著者は、「さらなる無作為化試験を行い、今回の結果の再現性と、ダークチョコレートとミルクチョコレートに生じた結果の違いのメカニズムについて調べる必要がある。検証では中年者を対象とした、より長期の研究が望まれる」とまとめている。
(ケアネット)