米国疾病予防管理センター(CDC)の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた前向き試験によって、総フラボノイド摂取量が多いほど高血圧症患者の全死亡リスクが低減するという正の相関関係が認められたことを、中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのKang Wang氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年5月20日号掲載の報告。
フラボノイドは天然に存在するポリフェノール化合物で、主にフラバノン、フラボン、フラバノール(フラバン-3-オール)、フラボノール、イソフラボン、アントシアニジンの6つのサブクラスが含まれる。フラボノイド摂取による抗酸化作用や抗炎症作用、血管拡張作用などが報告されており、高血圧症のリスク低減だけでなく、全死亡率、がん関連死亡率、心血管疾患(CVD)関連死亡率の低下にもつながるというエビデンスが増えつつある。しかし、フラボノイド摂取量の増加が高血圧症患者にどのような利益をもたらすかはいまだ不明である。そこで研究グループは、総フラボノイドおよびフラボノイドサブクラスの摂取と全死亡率、がん関連死亡率、CVD関連死亡率との関係を明らかにし、さらに高血圧症患者にとっての至適な摂取量を確立するために調査を行った。
<参考>多く含まれる代表的な食品
フラバノン:柑橘類、フラボン:野菜やハーブ類、フラバノール(フラバン-3-オール):緑茶やカカオ、フラボノール:ベリー類や葉物野菜、イソフラボン:大豆製品、アントシアニジン:ブドウやベリー類
2007~08年、2009~10年、2017~18年のNHANESのデータから、高血圧症の成人6,110例が本研究に登録された(最終追跡日:2019年12月31日)。フラボノイドの摂取量は、2回の24時間食事想起インタビューで収集した。Cox比例ハザードモデルを用いて、総フラボノイドおよびフラボノイドサブクラスの摂取量と各死亡率との関連を推定した。関連性の評価には制限付き3次スプラインを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時の参加者の平均年齢は57.7歳(SD 0.4)で、女性が50.9%、白人が69.2%であった。4万3,977人年の追跡期間中、1,155例があらゆる原因で死亡し、282例がCVDで死亡し、265例ががんで死亡した。
・人口統計学的、ライフスタイル、食事摂取量などの関連する交絡因子で調整した後、総フラボノイド摂取量の最高四分位の参加者は、最低四分位の参加者と比較して、全死亡リスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.74[95%信頼区間[CI]:0.56〜0.97]、p<0.05)。この関連は、肥満(BMI値30以上)集団と比較して、非肥満(BMI値30未満)集団でより顕著であった。
・全死亡率の低下と有意に関連していたサブクラスは、アントシアニジン(HR:0.70[95%CI:0.55~0.89])、フラバン-3-オール(0.76[0.59~0.96])、フラボノール(0.66[0.46~0.94])、イソフラボン(0.79[0.67~0.93])であった。
・総フラボノイド摂取量と全死亡率の間には有意な非線形関係があり、至適摂取量は約375mg/日であった。フラバン-3-オール、アントシアニジン、フラボノール、イソフラボンでも有意な非線形関連が観察された。
・総フラボノイド摂取量とがん関連死亡率の間には有意な関連はみられなかったが、アントシアニジン(HR:0.55[95%CI:0.32~0.93])、フラバン-3-オール(0.51[0.31~0.82])、フラボノール(0.52[0.28~0.96])では有意な関連がみられた。がん死亡率における総フラボノイドの至適摂取量は約483mg/日であった。
・CVD関連死亡率については、総フラボノイド摂取量との有意な関連性は認められなかった。
研究グループは、「この研究は、総フラボノイドおよび一部のフラボノイドサブクラスの摂取量の増加が死亡率の低下につながることを示唆しており、高血圧症患者の健康的な食事の一環としてフラボノイド摂取量を増やすという提案を裏付けるものである」とまとめている。
(ケアネット 森 幸子)