転移を有する去勢抵抗性前立腺がん、放射線療法の追加は有効か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/18

 

 低腫瘍量のde novo転移を有する去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者の治療において、標準治療+アビラテロンと比較して標準治療+アビラテロンに放射線療法を併用すると、画像上の無増悪生存期間(PFS)と去勢抵抗性前立腺がんのない生存期間(無去勢抵抗性生存期間)が有意に延長するが、全生存期間(OS)の改善は得られないことが、フランス・Institut Gustave RoussyのAlberto Bossi氏らが実施した「PEACE-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。

欧州7ヵ国の無作為化対照比較第III相試験

 PEACE-1試験は、2×2ファクトリアルデザインを用いた非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2013年11月~2018年12月に欧州7ヵ国の77施設で患者を登録した(Janssen-Cilagなどの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、骨シンチグラフィ、CTまたはMRIで確認されたde novo mCSPCで、全身状態の指標であるECOG PSスコアが0~1(骨痛がある場合は2)の患者を対象とした。

 これらの患者を、次の4つの治療群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。(1)標準治療(アンドロゲン除去療法単独、またはドセタキセル75mg/m2の3週間ごと6サイクル静脈内投与を併用)、(2)標準治療+アビラテロン(アビラテロン1,000mgを1日1回経口投与+プレドニゾン5mgを1日2回経口投与)、(3)標準治療+放射線療法(前立腺に対し総線量74Gyを37分割で照射)、(4)標準治療+放射線療法+アビラテロン。

 主要評価項目は2つで、画像上のPFSとOSとし、低腫瘍量の転移病変を有する患者および試験集団全体においてITT解析を行った。

アビラテロン非投与ではPFSが改善せず

 1,172例を無作為化し、標準治療群に296例(25.3%)、標準治療+アビラテロン群に292例(24.9%)、標準治療+放射線療法群に293例(25.0%)、標準治療+放射線療法+アビラテロン群に291例(24.8%)を割り付けた。標準治療の内訳は、アンドロゲン除去療法単独が462例(39.4%)、アンドロゲン除去療法+ドセタキセルが710例(60.6%)であった。1,172例中505例(43.1%)が低腫瘍量の転移病変を有する患者だった。試験集団全体の追跡期間中央値は6.0年。

 アビラテロンの投与を受けた低腫瘍量の患者(252例)では、標準治療に放射線療法を加えることで、画像上のPFSが有意に延長した。PFS中央値は、標準治療+アビラテロン群(126例)が4.4年(99.9%信頼区間[CI]:2.5~7.3)、標準治療+放射線療法+アビラテロン群(126例)が7.5年(4.0~未到達)で、補正後ハザード比(HR)は0.65(99.9%CI:0.36~1.19)であった(p=0.019)。

 これに対し、アビラテロンの投与を受けなかった低腫瘍量の患者(253例)では、このような効果を認めなかった。PFS中央値は、標準治療群(127例)が3.0年(99.9%CI:2.3~4.8)、標準治療+放射線療法群(126例)が2.6年(1.7~4.6)で、補正後HRは1.08(0.65~1.80)であった(p=0.61)。

 また、OSについては、統計学的交互作用のため事前に定義された閾値(p>0.05)に達しなかった(p=0.12)ことから、放射線療法を受けた2つの介入群を統合して解析を行ったところ、低腫瘍量の患者では、放射線療法の併用はOSに影響を及ぼさないことが示された。OS中央値は、標準治療±アビラテロン群(253例)が6.9年(95.1%CI:5.9~7.5)、標準治療+放射線療法±アビラテロン群(252例)が7.5年(6.0~未到達)で、HRは0.98(95.1%CI:0.74~1.28)であった(p=0.86)。

試験集団全体でも放射線療法追加の効果

 低腫瘍量の患者では、放射線療法を併用することでmCSPCが発生するまでの期間が有意に遅延した。無去勢抵抗性生存期間中央値は、標準治療±アビラテロン群が2.5年(95%CI:2.1~2.9)、標準治療+放射線療法±アビラテロン群が3.4年(2.8~4.5)、HRは0.74(95%CI:0.60~0.92)であった(p=0.0069)。この放射線療法追加の効果は、試験集団全体においても示された(HR:0.79[0.69~0.90]、p=0.0005)。

 安全性評価集団では、放射線療法を受けなかった患者(標準治療±アビラテロン群)604例中339例(56.1%)、これを受けた患者(標準治療+放射線療法±アビラテロン群)560例中329例(58.8%)で、少なくとも1つの重度有害事象(Grade3以上)が発現した。最も頻度の高い重度有害事象は、高血圧(標準治療±アビラテロン群110例[18.2%]、標準治療+放射線療法±アビラテロン群127例[22.7%])および好中球減少(40例[6.6%]、29例[5.2%])であった。

 著者は、「放射線療法は、転移病変の負荷の程度を問わず、また全体的な毒性を増加させずに、重篤な泌尿生殖器イベントの発生を減少させ、高腫瘍量および低腫瘍量のde novo mCSPC患者の標準治療を構成する治療法となる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)