非弁膜症性心房細動を有する成人患者において、患者用意思決定支援(PDA)のみ、診療時意思決定支援(EDA)のみ、または両者の実施といった意思決定支援を受けた患者は、それらを受けなかった通常ケアの患者と比較し、意思決定の葛藤が少なくその共有が良好で、より多くの知識を得ていたことが示された。なお、PDAのみであった場合は、意思決定の葛藤に及ぼす影響については統計学的に有意ではなかった。米国・ユタ大学のElissa M. Ozanne氏らが、同国の6つの大学医療センターで実施したクラスター無作為化臨床試験の結果を報告した。心房細動患者のための共有意思決定(SDM)ツールや意思決定支援の手法がいくつか開発されているが、実際の共有意思決定支援の改善に関する、PDAとEDAの効果の違いを比較したデータはなかった。結果を踏まえて著者は、「来院前または外来診療時の意思決定支援を単独または組み合わせて実施することは、通常ケアと比較して有益であることが実証された」とまとめている。BMJ誌2025年1月9日号掲載の報告。
患者および医師をそれぞれ意思決定支援実施群、非実施の通常ケア群に無作為化
研究グループは、18歳以上で非弁膜症性心房細動と診断され、血栓塞栓性イベントのリスク因子を1つ以上有し(CHA
2DS
2-VAScスコア:男性1以上、女性2以上)、抗凝固療法の適応と判断され、脳卒中予防戦略について話し合うための臨床予約が予定されている患者を、PDA実施群または非実施(通常ケア)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。臨床医もEDA実施群と非実施(通常ケア)群に無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、OPTION12尺度で測定したSDMの質(スコア範囲:0~100、高スコアほど意思決定が共有されていることを示す)、心房細動とその管理に関する知識(7項目からなるtrue/false回答形式の調査、スコアは正答率)、意思決定の葛藤(Decisional Conflict Scale[DCS]、16項目からなる5段階のリッカート尺度の合計を0~100のスコアに変換、低スコアほど患者の意思決定の葛藤レベルが低い)の3つであった。
PDAとEDAの併用、およびEDA単独が有用
2020年12月14日~2023年7月3日に1,214例の患者が登録され、適格基準などを満たした1,117例が解析対象となった。臨床医は107例登録され、51例がEDA群、56例が通常ケア群に割り付けられた。したがって患者は、通常ケア群306例、PDA+EDA併用群263例、PDA単独群285例、EDA単独群263例であった。
通常ケア群と比較し、PDA+EDA併用群で、SDMの質が改善し(補正後平均群間差:12.1、95%信頼区間[CI]:8.0~16.2、p<0.001)、患者の知識が向上し(オッズ比:1.68、95%CI:1.35~2.09、p<0.001)、患者の意思決定の葛藤が減少した(補正後平均群間差:-6.3、95%CI:-9.6~-3.1、p<0.001)。
また、EDA単独群でも3つの主要アウトカムすべてにおいて、通常ケア群と比較し有意な改善が認められ、PDA単独群ではSDMの質および知識について通常ケア群と比較し有意な改善が認められた。
その他の評価項目である脳卒中予防のための治療選択や参加者の満足度については、重要な差は観察されなかった。また、診察時間の長さも各群間で、統計学的な有意差は認められなかった。
(ケアネット)