「プレハビリテーション」は有効か?~メタ解析/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/01/31

 

 運動、栄養ならびに運動を含む多要素的な手術前のリハビリテーション(プレハビリテーション)は、手術を受ける成人患者に有用で、ネットワークメタ解析およびコンポーネントネットワークメタ解析において一貫した意味のある効果推定値が得られたことを、カナダ・オタワ大学のDaniel I. McIsaac氏らが報告した。著者は、「これらプレハビリテーションを臨床ケアにおいて考慮すべきであることが示唆された。一方で、プレハビリテーションの有効性をより確実にするためには、優先度の高いアウトカムに関して適切な検出力のあるバイアスリスクが低い多施設共同試験が必要である」とまとめている。BMJ誌2025年1月22日号掲載の報告。

無作為化比較試験のネットワークおよびコンポーネントネットワークメタ解析を実施

 研究グループは、手術を受けた成人患者の術後合併症、入院期間、健康関連QOLおよび身体回復に及ぼす相対的な有効性を推定する目的で、無作為化比較試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析およびコンポーネントネットワークメタ解析を行った。

 Medline、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane Library、Web of Scienceを2022年3月1日に検索し、2023年10月25日に再検索して対象研究を特定した。対象研究の選択基準は、待機的手術を受ける18歳以上の成人を対象にプレハビリテーション群と対照(通常ケア、標準ケア)群を比較した無作為化試験で、重要なアウトカムを報告しているものとし、術前のリスク因子管理(禁煙、貧血治療など)を単独で評価した研究や、プレハビリテーションの期間が7日未満の研究などは除外した。

 評価者2人がそれぞれ対象研究を特定し、1人がデータ抽出を、他の1人が検証を行った後、研究リーダー1人と他の評価者1人がコクランバイアスリスクツールを用いてバイアスリスクを評価した。

 治療レベルでの各アウトカムに関するエビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いて評価した。

多要素介入は、合併症、入院期間、健康関連QOL、術後の身体的回復を改善

 186件の無作為化比較試験(被験者計1万5,684例)が解析対象となった。

 ランダム効果ネットワークメタ解析の結果、通常ケアと比較して以下のプレハビリテーションは合併症を減少させる可能性が高かった。

・運動単独(オッズ比:0.50[95%信頼区間[CI]:0.39~0.64]、エビデンスの確実性:非常に低い)
・栄養単独(0.62[0.50~0.77]、非常に低い)
・運動+栄養+心理社会的ケアの併用(0.64[0.45~0.92]、非常に低い)

 また、次のプレハビリテーションは、通常ケアと比較して入院期間を短縮する可能性が高かった。

・運動+心理社会的ケアの併用(-2.44日[95%CI:-3.85~-1.04]、非常に低い)
・運動+栄養の併用(-1.22日[-2.54~0.10]、中程度)
・運動単独(-0.93日[-1.27~-0.58]、非常に低い)
・栄養単独(-0.99日[-1.49~-0.48]、非常に低い)

 健康関連QOLおよび身体的回復の改善に有効だったのは、運動+栄養+心理社会的ケアの併用で、Short Form(SF)-36 の身体項目スコアの平均群間差は3.48(95%CI:0.82~6.14、エビデンスの確実性:非常に低い)、6分間歩行テストでの距離の平均群間差は43.43m(95%CI:5.96~80.91、エビデンスの確実性:非常に低い)であった。

 コンポーネントネットワークメタ解析の結果、運動と栄養はすべての重要なアウトカムを改善する可能性が最も高かった。すべてのアウトカムに関するすべての比較のエビデンスの確実性は、試験レベルのバイアスリスクと不正確さのため、一般的に低いまたは非常に低いであったが、バイアスリスクが高い試験を除外した場合、運動と栄養のプレハビリテーションの有効性の確実性は高かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)