緊急開腹術時の感染予防、局所陰圧閉鎖療法vs.ドレッシング/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/02/12

 

 緊急開腹術を受けた成人患者の手術部位感染(SSI)の予防において、閉鎖創への外科医が選択した被覆材(ドレッシング)の使用と比較して局所陰圧閉鎖療法(iNPWT)(PICO 7、Smith & Nephew製)は、効果を改善せず、術後の入院期間や創傷関連合併症による再入院などにも差はないことが、オーストラリア・ニューカッスル大学のKristy Atherton氏らSUNRRISE Trial Study Groupが実施した「SUNRRISE試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年1月27日号に掲載された。

2ヵ国の実践的な無作為化第III相試験

 SUNRRISE試験は、皮膚の1次閉鎖を伴う緊急開腹術を受けた患者のSSI発生の予防におけるiNPWTの有効性の評価を目的とする、医師主導型の評価者をマスクした実践的な無作為化第III相試験であり、2018年12月~2021年5月に、英国の22の病院とオーストラリアの12病院で参加者を募集した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成を受けた)。

 英国は年齢16歳以上、オーストラリアは18歳以上で、受診した施設で5cm以上の切開を伴う緊急開腹術を受け、腹壁筋膜と皮膚の1次閉鎖を行った患者を対象とした。これらの患者を、iNPWTを受ける群、または外科医が選択した創傷被覆材を用いる群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは術後30日(手術日を0日目とした)までのSSIとし、無作為割り付けの情報をマスクされた評価者が、米国疾病予防管理センター(CDC)の基準を用いて評価した。

per-protocol解析やサブグループ解析でも差はない

 840例(英国536例、オーストラリア304例、平均年齢63.8歳[範囲:18.8~95.3]、女性52%)を登録した。無作為化後に同意の撤回などで52例が脱落し、残りの788例が主解析の対象となった(両群394例ずつ)。

 術後30日までにSSIを発症した患者は、iNPWT群が394例中112例(28.4%)、外科医選択被覆材群は394例中108例(27.4%)であり、両群間に有意な差を認めなかった(相対リスク[RR]:1.03[95%信頼区間[CI]:0.83~1.28]、p=0.78)。

 この所見は、per-protocol解析(RR:1.00[95%CI:0.80~1.25]、p=0.98)を含む事前に規定された種々の感度分析でも強固にみられ、汚染の程度、ストーマの有無、BMI、皮膚の前処置などのサブグループでも一致して認めた。

 また、7つの副次アウトカムのうち、術後の入院期間、SF-12で評価した生活の質など6項目には両群間に有意な差はなかった。唯一、7日目の時点での手術部位の疼痛がiNPWT群で良好(p=0.01)だったが、差は小さく臨床的意義は不明だった。安全性の副次アウトカムである創傷関連合併症による再入院および術後30日以内の創傷合併症にも差はなかった。

重篤または特異的な有害事象の頻度は同程度

 496件の重篤な有害事象が報告され(iNPWT群237件、外科医選択被覆材群259件)、iNPWT群で411例中158例(38%)、外科医選択被覆材群で410例中165例(40%)に発生した(複数の重篤な有害事象の発症した患者を含む)。

 腸管皮膚瘻(iNPWT群0/411例、外科医選択被覆材群1/410例)および皮膚有害反応(iNPWT群5/411例、外科医選択被覆材群2/410例)などの特異的な有害事象の頻度は両群間で同程度であった。術後30日以内の死亡率は3%で、iNPWT群で10例(2.4%)、外科医選択被覆材群では14例(3.4%)であった。

 著者は、「本研究の知見は、緊急開腹術を受けた成人患者におけるSSIの抑制を目的としたiNPWTのルーチンの使用を支持しない」「この試験は、外科研修医(レジデント)が救急患者の特定、同意取得、無作為化を行うことで、従来は参加者の確保が困難であった緊急性の高い疾患の臨床試験への患者確保が可能であることを実証した」「これらの結果が、緊急開腹術を受ける集団全体に一般化できるか否かを検討することが重要だが、本試験は比較的健康状態が良好な患者を登録した可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)