進行ニューレグリン1(NRG1)融合遺伝子陽性がんに対するzenocutuzumab(MCLA-128)の有効性および安全性を評価した第II相臨床試験の結果が、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlison M. Schram氏らeNRGy Investigatorsにより報告された。とくに非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんの患者において有効性が示され、有害事象の大部分は低Gradeであった。NRG1融合遺伝子は、複数の固形がんで確認されているリカレントながんドライバー遺伝子で、NRG1がヒト上皮成長因子受容体3(HER3)に結合し、HER2とのヘテロ二量体化と下流での腫瘍成長および増殖経路の活性化を引き起こす。zenocutuzumabは、HER2およびHER3を標的とする初の二重特異性抗体薬で、前臨床試験では複数の種類の腫瘍でzenocutuzumabの抗腫瘍活性が示されていた。NEJM誌2025年2月6日号掲載の報告。
腫瘍の種類を問わない進行NRG1融合遺伝子陽性がん患者を対象に試験
研究グループは、腫瘍の種類を問わない進行
NRG1融合遺伝子陽性がん患者を対象に、zenocutuzumabの有効性と安全性を評価する登録制の第II相臨床試験を行った。18歳以上、進行または転移固形腫瘍の診断を受け、試験担当医師の見解でそれら腫瘍種に対する標準治療を受けたもしくは標準治療の対象外であり、次世代シークエンス法により
NRG1融合遺伝子陽性と確認された患者を適格とした。
登録被験者は、2週間ごとにzenocutuzumab 750mgを静脈内投与された。主要評価項目は、試験担当医師の評価による全奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次評価項目は、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、安全性などであった。
30%で奏効、NSCLCでは29%、膵臓がんで42%
2019年9月25日~2024年1月31日(データカットオフ日)に、12種の腫瘍を有する204例が登録され治療を受けた。このうち、4例(乳がん2例、NSCLC 2例)は評価可能であったが測定可能病変を有していなかった。そのほか、データカットオフ日前の24週間未満に初回zenocutuzumabの投与を受けたなどの理由で、計43例が除外され、主要有効性集団には10種の腫瘍を有する161例(主にNSCLC[94例]と膵臓がん[36例])が含まれた。
測定可能病変を有し、データカットオフ日の24週間以前に登録された158例において、奏効が得られたのは30%(95%信頼区間[CI]:23~37)であった。奏効期間中央値は11.1ヵ月(95%CI:7.4~12.9)であり、データカットオフ日の時点で奏効例の19%が持続していた。
奏効は、NSCLC(27/93例、29%[95%CI:20~39])、膵臓がん(15/36例、42%[25~59])など複数種の腫瘍と、複数の
NRG1融合パートナーで認められた。
PFS中央値は6.8ヵ月(95%CI:5.5~9.1)であった。
有害事象は、主にGrade1または2であった。試験担当医師判断によるzenocutuzumab関連有害事象で多くみられたのは、下痢(患者の18%)、倦怠感(12%)、悪心(11%)であった。注入に伴う反応(複合事象)は患者の14%に認められた。1例が治療関連有害事象によりzenocutuzumabを中止した。
(ケアネット)