中/遠位血管閉塞による脳卒中、血管内治療は機能障害を改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/02/18

 

 中大脳動脈(MCA)のdominant M2区域の急性閉塞に対する血管内治療(EVT)の有効性を示唆する無作為化試験のエビデンスがあるが、現在の米国および欧州のガイドラインでは、中血管または遠位血管の閉塞を有する虚血性脳卒中に対してEVTは推奨されず、禁忌ともされていないという。スイス・バーゼル大学病院のMarios Psychogios氏らDISTAL Investigatorsは、DISTAL試験において、中血管または遠位血管の閉塞による虚血性脳卒中患者の治療では、最良の内科治療単独と比較して、これにEVTを併用しても、機能障害レベルを改善せず、重篤な有害事象や死亡率の低下をもたらさないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年2月5日号に掲載された。

11ヵ国の医師主導型無作為化試験

 DISTAL試験は、医師主導型の実践的な評価者盲検無作為化試験であり、2021年12月~2024年7月に、11ヵ国55病院で患者を登録した(スイス国立科学財団[SNSF]などの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、CT血管造影またはMRI血管造影で確認された中血管または遠位血管の孤立性閉塞(MCAのnondominantまたはcodominant M2区域、MCAのM3またはM4区域、前大脳動脈のA1、A2、A3区域、後大脳動脈のP1、P2、P3区域の閉塞)に起因する急性期虚血性脳卒中と診断され、NIH脳卒中尺度(NIHSS)スコア(0~42点、高点数ほど症状が重度)が4点以上の患者を対象とした。

 被験者を、最終健常確認から24時間以内に、ETV+最良の内科治療または最良の内科治療単独を受ける群に無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankin尺度(mRS)スコア(0[まったく症候がない]~6[死亡])で評価した機能障害の程度とした。

mRSスコア0、1の達成、NIHSSスコア正常化にも差はない

 543例(年齢中央値77歳、女性44%)を登録し、ETV+最良内科治療群に271例、最良内科治療単独群に272例を割り付けた。全体の入院時のNIHSSスコア中央値は6(四分位範囲[IQR]:5~9)であり、脳卒中発症前のmRSスコアは、0または1が436例(80.3%)、2が60例(11.0%)、3または4が45例(8.3%)であった。

 発症時に97.9%が自宅におり、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は3.9時間だった。ベースライン時の主な閉塞部位はM2区域(44.0%)、M3区域(26.9%)、P2区域(13.4%)、P1区域(5.5%)であった。静脈内血栓溶解療法は65.4%に施行されていた。

 EVT+最良内科治療群の271例中229例(84.5%)で実際にEVTが行われ、画像診断から動脈穿刺までの時間中央値は70分(目標の60分をオーバーした)、再開通成功率は71.7%だった。

 主要アウトカムである90日時のmRSスコア中央値は、ETV+最良内科治療群が2.0(IQR:1.0~4.0)、最良内科治療単独群は2.0(1.0~3.0)であり、スコアの分布に両群間で有意な差を認めなかった(スコア改善の共通オッズ比[OR]:0.90[95%信頼区間[CI]:0.67~1.22]、p=0.50)。

 副次アウトカムの、90日時の良好な機能アウトカム(mRSスコア0または1)の達成(補正前OR:0.88[95%CI:0.61~1.25])、24時間時の神経学的欠損の重症度の改善(NIHSSスコアの正常化)(補正前平均群間差:0.02[95%CI:-0.10~0.14])、EQ-5D-5Lおよび視覚アナログ尺度などで評価した生活の質(QOL)のスコアは、いずれも両群間で有意な差はみられなかった。

90日死亡率は15.5% vs.14.0%

 重篤な有害事象(ETV+最良内科治療群114例vs.最良内科治療単独群88例、補正後OR:1.27[95%CI:0.84~1.97])、24時間以内の症候性頭蓋内出血(16例[5.9%]vs.7例[2.6%]、2.38[0.44~6.14])、90日時の全死因死亡(42例[15.5%]vs.38例[14.0%]、1.17[0.71~1.90])の発生は、いずれも両群間で有意差はなかった。

 著者は、「71.7%という再開通成功率は当初の予測より低く、最近の大血管閉塞による脳卒中の試験の知見をも下回っており、これが本試験のあいまいな結果の主な原因と考えられる」「試験の手順(中・遠位血管閉塞の検出の難しさやインフォームドコンセントに時間を要するなど)に起因する治療開始の遅れがEVTの有効性を低下させた可能性がある」「今後、画像診断と改善される可能性のある手技やデバイス材料に基づいて、EVTが有益と考えられる患者を特定するための無作為化試験を実施する必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)