スタチンは肝硬変患者の門脈圧を低下させ、肝硬変合併症のリスクを軽減し、生存期間を延長する可能性が示唆されており、広域スペクトル抗菌薬であるリファキシミンは肝性脳症の再発リスクを低下させ、肝硬変患者にみられる腸内細菌叢の顕著な異常を改善することが知られている。スペイン・バルセロナ病院のElisa Pose氏らLIVERHOPE Consortiumは、「LIVERHOPE試験」において、非代償性肝硬変患者の慢性肝不全の急性増悪(acute-on-chronic liver failure:ACLF)の予防では、プラセボと比較してシンバスタチン+リファキシミンの併用療法はその発生率を抑制せず、肝硬変の合併症や有害事象の頻度は同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年2月5日号で報告された。
欧州14病院のプラセボ対照第III相試験
LIVERHOPE試験は、非代償性肝硬変患者におけるシンバスタチン+リファキシミン併用療法の有用性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照第III相試験であり、2019年1月~2022年12月に欧州の14病院で患者を登録した(Horizon 20/20 programの助成を受けた)。
年齢18歳以上で、肝硬変合併症の発症リスクが高く死亡率も高いとされるChild-Pugh分類のBまたはCの非代償性肝硬変と診断された患者を対象とした。被験者を、標準治療に加え、シンバスタチン(20mg/日)+リファキシミン(1,200mg/日)の投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。
主要エンドポイントは、欧州肝臓学会/慢性肝不全(EASL-CLIF)の定義によるACLFの判定基準を満たす臓器不全を伴う肝硬変の重症合併症の発現とした。
肝硬変の合併症の頻度も同程度
237例(平均年齢57歳、男性72%、アルコール性肝硬変80%、Child-Pugh分類B 194例、同C 43例)を登録し、シンバスタチン+リファキシミン群に117例、プラセボ群に120例を割り付けた。追跡期間中央値は両群とも365日だった。
少なくとも1回のACLFを発症した患者は、シンバスタチン+リファキシミン群が21例(17.9%)、プラセボ群は17例(14.2%)であり、ハザード比(HR)は1.23(95%信頼区間[CI]:0.65~2.34)と両群間に有意な差を認めなかった(p=0.52)。
副次アウトカムである肝移植または死亡例は、シンバスタチン+リファキシミン群で22例(18.8%、肝移植5例、死亡17例)、プラセボ群で29例(24.2%、肝移植12例、死亡17例)であった(HR:0.75、95%CI:0.43~1.32、p=0.32)。また、肝硬変の合併症(腹水[新規、増悪]、細菌感染、肝性脳症、急性腎障害、消化管出血)は、それぞれ50例(42.7%)および55例(45.8%)に発現した(HR:0.93、95%CI:0.63~1.36、p=0.70)。
シンバスタチン+リファキシミン群でのみ横紋筋融解症が3例
有害事象の発生率は両群で同程度であった(シンバスタチン+リファキシミン群426件[101例、86.3%]vs.プラセボ群419件[100例、83.3%]、p=0.59)。有害事象の種類別の解析でも、両群間に頻度の差があるものはなかった。
重篤な有害事象(シンバスタチン+リファキシミン群44例[37.6%]vs.プラセボ群 50例[41.7%]、p=0.79)および致死的有害事象(17例[14.5%]vs.17例[14.2%]、p>0.99)についても、発生率は両群で同程度だった。注目すべき点として、横紋筋融解症が、プラセボ群ではみられなかったのに対し、シンバスタチン+リファキシミン群で3例(2.6%)に認めたことが挙げられる。
著者は、「シンバスタチンとリファキシミンの併用療法は、肝機能検査所見、腎機能検査所見、肝機能障害の重症度の指標であるModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアも改善しなかった」「今回の結果は、肝性脳症の再発予防以外の目的で、肝硬変患者の管理にリファキシミンを使用することを支持しない」「本研究の参加者は中等度~重度の肝機能障害を伴う肝硬変であり、これらの知見が、進行度の低い肝硬変患者にも当てはまるかは不明である」としている。
(医学ライター 菅野 守)