生後9~15ヵ月の乳幼児における通常小児ワクチンに併用接種する髄膜炎菌ワクチンについて、血清型A、C、Y、W、Xを標的とする5価髄膜炎菌結合ワクチン(NmCV-5)の併用接種は、承認済みの4価髄膜炎菌結合ワクチン(MenACWY-TT)の併用接種と比較して安全性に問題はなく、非劣性の免疫応答が惹起されたことが、マリ・Centre pour le Developpement des Vaccins-MaliのFatoumata Diallo氏らNmCV-5 EPI study teamによる第III相単施設二重盲検無作為化対照非劣性試験の結果で示された。侵襲性髄膜炎菌感染症は、アフリカのセネガルからエチオピアにかけて広がるmeningitis belt(髄膜炎ベルト)と呼ばれる国々において、壊滅的な被害をもたらす公衆衛生上の問題となっている。2020年の世界保健総会(World Health Assembly)で導入・承認された「2030年までに髄膜炎を克服するための世界的なロードマップ」では、蔓延している髄膜炎菌血清群に対する予防拡大の必要性が、5つの血清型に対する手頃なワクチンを導入するための戦略目標とともに示されていた。Lancet誌2025年3月29日号掲載の報告。
NmCV-5 vs. MenACWY-TTの免疫応答を比較
試験は、マリの首都で最大都市のバマコにあるワクチン開発センター(Centre pour le Developpement des Vaccins)で、現地乳児拡大予防接種プログラム(Expanded Program on Immunization:EPI)を完了した生後9~11ヵ月の乳児を募集して行われた。
参加者は9-month EPI受診時に、髄膜炎菌ワクチンを9-month EPI受診時(9ヵ月時接種群)または15-month EPI受診時(15ヵ月時接種群)に接種するよう無作為に1対1.2の割合で割り付けられ、それぞれの指定接種群でNmCV-5またはMenACWY-TTのいずれかの接種を受けるように無作為に割り付けられた。
試験ワクチンと指定されたEPIワクチンは、割り付けを盲検化されていない試験担当者によって準備・接種された。親または保護者、研究者およびその他すべての試験スタッフは、髄膜炎菌ワクチンの割り付けを盲検化された。
髄膜炎菌ワクチンは、生後9ヵ月で麻疹・風疹ワクチン(1回目)および黄熱病ワクチンと同時に接種、または生後15ヵ月で麻疹・風疹ワクチン(2回目)と同時に接種された。
主要エンドポイントの免疫応答(seroprotective response)はウサギ補体血清殺菌抗体価が8以上と定義し、ワクチン接種後28日目にこの反応を示した5つの髄膜炎菌血清群それぞれの参加者割合の差を推定した。評価はper-protocol集団で行った。
事前に規定した非劣性マージンは、両年齢群の5つの血清群すべてで-10%とした。血清型X群に関するNmCV-5の免疫応答の非劣性は、MenACWY-TTの最も低い血清型群(A群、C群、W群、Y群間で)の免疫応答と比較し評価した。安全性は副次エンドポイントであり、修正ITT集団(無作為化された髄膜炎菌ワクチンを接種された全参加者)で6ヵ月間にわたり評価した。
NmCV-5の5つの血清型すべてでMenACWY-TTに対して非劣性
2022年3月24日~8月15日に1,325例が登録され、9ヵ月時接種群に602例が、15ヵ月時接種群に723例が無作為化された。髄膜炎菌ワクチンは、9ヵ月時接種群では602例のうち600例が同一期間に接種された。15ヵ月時接種群600例への髄膜炎菌ワクチンは、2022年9月27日~2023年2月6日に接種された。また両群で、400例がNmCV-5を、200例がMenACWY-TTの接種を受けた。
非劣性を評価したper-protocol集団には、9ヵ月時接種群564例(NmCV-5接種373例、MenACWY-TT接種191例)と15ヵ月時接種群549例(NmCV-5接種367例、MenACWY-TT接種182例)が含まれた。9ヵ月時接種群のper-protocol集団において、NmCV-5接種とMenACWY-TT接種の免疫応答率の差は、血清型A群で0.0%(95%信頼区間[CI]:-1.0~2.0)、C群で-0.5%(-2.3~1.9)、W群で-3.0%(-6.3~0.8)、Y群で-3.0%(-5.4~-0.4)であった。X群については、MenACWY-TT接種のW群との比較で非劣性が評価され、免疫応答率の差は2.3%(95%CI:0.3~4.7)であった。
15ヵ月時にNmCV-5接種を受けた参加者とMenACWY-TT接種を受けた参加者の免疫応答率の差は、血清型A群で0.8%(95%CI:-0.6~3.7)、C群で-0.8%(-3.3~2.5)、W群で0.3%(-1.8~3.5)、Y群で1.4%(-0.6~4.8)であった。X群については、MenACWY-TT接種のY群との比較で非劣性が評価され、免疫応答率の差は1.9%(95%CI:0.0~4.4)であった。
両群のNmCV-5の免疫応答率は、5つすべての血清型について、MenACWY-TTの免疫応答率に対して非劣性であった。
6件の重篤な有害事象が記録されたが、ワクチン接種に関連するものとはみなされなかった。
(ケアネット)