急性期脳梗塞に対し唯一承認された治療法は、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法だが、発症から3時間以上経過した後の投与については、有効性と安全性が確立されていなかった。ドイツ・ハイデルベルク大学のWerner Hacke氏らECASS(European Cooperative Acute Stroke Study)研究グループは、発症後3~4.5時間に投与されたrt-PAの有効性と安全性を検証した結果、「臨床転帰は改善するが、症候性頭蓋内出血を伴う所見が高頻度にみられる」と報告した。NEJM誌2008年9月25日号より。
プラセボ投与と等分し90日後の障害の有無を比較
急性期脳梗塞患者のうち、CT検査で脳内出血または重い梗塞のある患者を除き、rt-PA静注群(0.9mg/kg)またはプラセボ投与を受けるよう、等分に無作為二重盲検試験に割り付けた。
主要エンドポイントは90日時点の障害とし、転帰良好(無症状を0、死亡を6とする0~6の尺度で0または1)か、転帰不良(同2~6)に分けた。副次エンドポイントは、4つの神経学的スコアと障害スコアを統合した総合的な転帰解析の結果とした。安全性エンドポイントは、死亡、症候性頭蓋内出血および他の深刻な有害事象とした。
転帰はやや改善されるが症候性頭蓋内出血も高頻度
登録された患者計821例を、rt-PA静注群418例、プラセボ群403例に割り付けた。
rt-PA投与時間の中央値は3時間59分。
rt-PA群のほうがプラセボ群より転帰良好の患者がより多かった(52.4%対45.2%、オッズ比:1.34、95%信頼区間:1.02~1.76、P = 0.04)。総合解析の結果も、rt-PA群のほうがプラセボ群より転帰は改善された(1.28、1.00~1.65、P<0.05)。
しかし頭蓋内出血の発生率は、rt-PA群のほうがプラセボ群より高かった(すべての頭蓋内出血では27.0%対17.6%、P = 0.001、症候性頭蓋内出血では2.4%対0.2%、P = 0.008)。
死亡率は、両群に有意差はなかった(7.7%と8.4%、それぞれP = 0.68)。他の深刻な有害事象の発現率にも有意差はなかった。
Hacke氏は「急性期脳梗塞を発症してから3~4.5時間後にrt-PA静注療法を行っても、プラセボ群より臨床転帰は有意に改善されたが、症候性頭蓋内出血を伴う所見が高頻度にみられた」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)