CCケモカイン受容体5(CCR5)拮抗剤のmaravirocは、新しい抗レトロウイルス薬である。既存の抗レトロウイルス薬による治療歴のある患者を対象とした、maravirocと至適療法を比較する多国間二重盲検プラセボ試験(第3相)「MOTIVATE 1」(カナダ、米国)「MOTIVATE 2」(オーストラリア、ヨーロッパ、米国)が行われ、参加した米国・Weill-Cornell Medical College(ニューヨーク市)のRoy M. Gulick氏らは、「maravirocはHIV-1ウイルスを有意に抑制し、T細胞を増やす」と報告した。NEJM誌2008年10月2日号より。
薬剤耐性のある患者1,049例を対象に比較試験
MOTIVATE(Maraviroc versus Optimized Therapy in Viremic Antiretroviral Treatment-Experienced Patients)試験対象は、3クラスの抗レトロウイルス薬の治療歴あるいは耐性があり、HIV-1 RNAレベルは5,000コピー/mL以上の患者計1,049例。治療歴と薬剤耐性テストに基づく至適バックグラウンド療法(OBT)に加え、maravirocを「1日1回投与」「1日2回投与」「プラセボ投与」の3つの投薬計画うちの1つに無作為に割り付け、48週時点で安全性と有効性を評価した。
HIV-1ウイルスは有意に減少しT細胞は増加
ベースラインでのHIV-1 RNAレベルは、平均72,400コピー/mL、T細胞のCD4中央値は169/立方mmだった。48週時点では、MOTIVATE 1、2ともに、ベースラインのHIV-1 RNAからの平均変化はmaraviroc投与群のほうがプラセボ群より大きかった。
MOTIVATE 1では、「1日1回投与群」で-1.66Log(10)コピー/mL、「1日2回投与群」で-1.82Log(10)コピー/mL減少したが、「プラセボ投与群」は-0.80Log(10)コピー/mL。MOTIVATE 2でも「1日1回投与群」が-1.72Log(10)コピー/mL、「1日2回投与群」は-1.87Log(10)コピー/mL、「プラセボ投与群」は-0.76Log(10)コピー/mLだった。
「maraviroc投与群」は、HIV-1 RNAレベルが50コピー/mL未満になった数がより多かった。MOTIVATE 1では「1日1回投与群」42%、「1日2回投与群」47%、「プラセボ投与群」16%。MOTIVATE 2では「1日1回投与群」45%、「1日2回投与群」45%、「プラセボ投与群」18%。各研究の両群間比較:P<0.001)。
ベースラインからのCD4細胞数の変化も、maraviroc群のほうがプラセボ群より大きかった。MOTIVATE 1では「1日1回投与群」113/立方mm、「1日2回投与群」122/立方mm、「プラセボ投与群」54/立方mm増加。MOTIVATE 2では同122/立方mm、128/立方mm、69/立方mm増加、各試験間比較:P<0.001)。
有害事象の頻度は、3群間で同程度だった。
研究グループは「至適治療を受けているR5HIV-1患者にmaravirocを投与すると、48週時点で有意にHIV-1抑制とCD4細胞数増加が確認された」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)