2型糖尿病患者に対し低用量アスピリンを投与しても、アテローム性動脈硬化症イベントの発症予防には効果が認められない。これは熊本大学大学院循環器病態学教授の小川久雄氏らが行った、日本人2型糖尿病患者2,539人を対象とするJapanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes(JPAD)の研究結果で、JAMA誌11月12日号(オンライン版2008年11月9日号)で公表された。低用量アスピリンのアテローム性動脈硬化症イベントの予防効果について、2型糖尿病患者を対象に行った研究は珍しい。
日本国内163施設で共同研究、追跡期間は4年超
同氏らは、2002~2008年にかけて、日本国内163の医療施設で、2型糖尿病患者でアテローム性動脈硬化症の病歴のない、30~85歳の2,539人について、無作為化オープンラベル、エンドポイント盲検試験を行った。追跡期間の中央値は、4.37年だった。アテローム性動脈硬化症イベントとしては、虚血性心疾患と脳卒中、末梢動脈性疾患と定義した。アスピリンの投与量は、1日81mgまたは100mgだった。
その結果、試験期間中のアテローム性動脈硬化症イベントは154件で、そのうちアスピリン群は68件、非アスピリン群は86件と、両群に有意差は認められなかった(ハザード比:0.80、95%信頼区間:0.58~1.10、ログランク検定p=0.16)。
致死的な冠動脈イベントと同心血管イベントを合わせるとアスピリン群が有意に低率
一方、致死的な冠動脈イベントと同心血管イベントを総合すると、アスピリン群では1件だったのに対し、非アスピリン群では10件と、アスピリン群で有意に低率だった(ハザード比:0.10、95%信頼区間:0.01~0.79、p=0.0037)。
なお、虚血性脳卒中と胃腸からの出血の発症率は、両群で有意差はなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)