第3世代弱毒化組織培養の天然痘ワクチン「LC16m8」は、未接種成人で特に有効性が高いことが、慶應大学医学部熱帯医学寄生虫学の齋藤智也氏らによって報告された。既摂取成人でもおよそ6割で、有効な追加免疫反応が認められた同報告は、JAMA誌2009年3月11日号で発表されている。天然痘による生物テロへの危機感から、天然痘ワクチンの必要性が再考されているものの、第1世代の同ワクチンなどでは、有害事象の発症率が高く、有効なワクチンが模索されている。
皮膚反応で善感は、未接種者94.4%、既接種者86.6%
齋藤氏らは、2002~2005年にかけて、自衛隊員で天然痘ワクチン未摂取の1,529人と、既摂取の1,692人に対し、LC16m8を摂取した。摂取10~14日後、皮膚反応で善感の確認を行い、また摂取30日後に、被験者のうち200人に対してプラーク減少中和試験を行った。
その結果、未接種者の1,443人(94.4%、95%信頼区間:93.2~95.9)と、既接種者の1,465人(86.6%、同:85.0~88.2)で、皮膚反応で善感が認められた。
また、中和試験の結果セロコンバージョンまたは有効な追加免疫効果が見られたのは、未接種者では41人のうち37人(90.2%、同:81.2~99.3)だったが、既接種者では155人中93人(60.0%、同:52.3~67.7%)と有意に低率だった。
重度な有害事象はゼロ、安全性も確認
LC16m8摂取が原因と考えられる有害事象については、アレルギー性皮膚炎と多形紅斑がそれぞれ1人のみで、重度の有害事象は全く見られなかった。同氏らは、これまでの10万人超の子供を対象にした研究結果と合わせて、今回の研究結果は、LC16m8が大規模なワクチン接種プログラムに用いても安全であることを示唆している、としている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)