アルコールが、ロシア成人死亡の重要な決定因子になっていることは知られるが、死因とアルコール消費量との関連や年代差、男女差などの詳細が、ロシアがんセンターのDavid Zaridze氏らによって明らかになった。報告によると、近年のロシア人男性55歳未満の死の半数以上はアルコールが原因で、ロシアと西欧諸国との成人死亡の最大の違いは、アルコールかタバコかで説明できるとしている。Lancet誌2009年6月27日号より。
ロシア3大工業都市で15~74歳で死亡した48,557例の生前飲酒状況を調査
Zaridze氏らは、1990年代の典型的な死亡パターンを呈するロシアの3大工業都市(トムスク、バルナウル、ビースク)で、1990~2001年に15~74歳で死亡した6,0416例について調査を行った。2001~2005年に、故人の家族50,066例を訪問し、48,557例(97%)から、故人の生前のアルコール摂取状況などの情報を聴取した。
そのうち、事前に死の原因がアルコールもしくはタバコと確認できていなかった5,475例(男性:2,514例、女性:2,961例)を、飲酒状況でカテゴリー分けし、相対リスクを算出し検討した。
検討された飲酒状況は、参照群として、「週に250mL未満」「1日に250mL未満」に当てはまる人を設定(男性:363例、女性:1,479例)、残りの人を、週の飲酒量についてウォッカ(もしくは相当量アルコール)「1本(500mL)未満」「1~3本未満」「3本以上」の3群にカテゴリー化した。なお「3本以上」(最大飲酒群)の平均週飲酒量は5.4本(SD:1.4)だった。
がん疾患では、上気道・上部消化管がん、肝がんが有意
解析の結果、男性で、最もアルコール関連の死を占める3つの要因としては、アルコール中毒(最大飲酒群の相対リスク:21.68)、事件・暴力(5.94)、急性虚血性心疾患(3.04)が挙げられた。虚血性心疾患は心筋梗塞(1.20)よりも多く見られた。また、上気道・上部消化管がん(3.48)、肝がん(2.11)が有意に見られ、このほか最大飲酒群で相対リスクが3.00以上だった疾患として、結核(4.14)、肺炎(3.29)、肝疾患(6.21)、膵疾患(6.69)、病的状態(7.74)の5つがあった。
一方女性では、飲酒が一般的ではなかったが、相対リスクは概して極めて高い値を示した(例:最大飲酒群のアル中75.23、事件・暴力9.26、急性虚血性心疾患9.25)。
聴取情報の誤りを修正後、アルコールが死の原因である割合は、15~54歳では52%に上った(男性:59%・8,182/13,968例、女性:33%・1,565/4,751例)。55~74歳では18%(男性:22%・3,944/17,536例、女性:12%・1,493/12,302例)だった。