認知症患者の興奮症状に対し、抗精神病薬をどう使う?

提供元:ケアネット

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公開日:2013/02/21

 

 アルツハイマー病(AD)は精神症状の発現頻度が高く、治療にも難渋する。そのため、QOL低下や介護者ストレスなどの問題を引き起こす。このような認知症関連精神疾患の治療に抗精神病薬が用いられる頻度は高いが、死亡リスクの上昇が懸念されるため、FDAが警告を発している。オランダ・フローニンゲン大学のPeter Paul De Deyn氏らは、AD患者に対する非定型抗精神病薬アリピプラゾール投与に関するレビューと評価・考察を行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌オンライン版2013年1月28日号の報告。

 アリピプラゾールは、ドパミン受容体パーシャルアゴニスト、セロトニン5-HT2A受容体アンタゴニストで、低率の副作用プロファイルを有する新規の非定型抗精神病薬である。研究グループは、ADの精神症状など病理学的および疫学的概要をまとめ、アリピプラゾールの作用機序およびプレ臨床試験の結果について触れたうえで、AD関連精神疾患および興奮症状について無作為化試験の結果を考察した。その都度、メタ解析のデータを用い分析を行った。

 主な考察と見解は以下のとおり。

・無作為化プラセボ対照臨床試験において、アリピプラゾールはAD関連精神疾患の治療に対し少なからず有用であることが示された。
・軽減された神経精神医学的症状は、主として精神機能と興奮であった。
・個別試験において、アリピプラゾールの忍容性は概して良好であり、不慮の事故による外傷や傾眠を含む重篤な副作用はほとんど報告されなかった。
・メタ解析において、定型抗精神病薬だけでなく非定型抗精神病薬においても、死亡率増大に関してクラスエフェクトが示された。
・精神症状を合併した認知症患者に対しアリピプラゾールによる治療を行った試験を対象としたメタ解析で、アリピプラゾールは心血管疾患アウトカムおよび脳血管障害の増大、食欲亢進および体重増加を示さなかった。また、アピプラゾールは鎮静作用を示した。
・これらの結果から、アリピプラゾールは持続的あるいは重度の精神症状や興奮を有する非薬物治療では治療困難な患者や、これらの症状が重篤な合併症をもたらす可能性がある患者、潜在的に自傷傾向のある患者に対して用いるべきである。ただし、継続的に治療する場合には、定期的に見直す必要がある。

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(ケアネット)