避難所生活は、大規模災害後における出血性潰瘍の強力なリスク因子であることが、東北大学大学院の菅野 武氏らによる研究で明らかになった。著者らは「大規模災害時には、酸抑制薬を使用するなど、ストレス誘発性消化性潰瘍を減少させることが重要である」と結論づけている。Journal of gastroenterology誌オンライン版2014年2月15日号の報告。
著者らは以前、東日本大震災後の消化性潰瘍の症例数が前年に比べ1.5倍、出血性潰瘍の症例数が2.2倍に増加したことを報告した。本研究では、東日本大震災後の出血性潰瘍のリスク因子について検討した。
被災地の主要7病院において、震災後3ヵ月間で内視鏡的に消化性潰瘍と診断されたすべての患者のカルテをレトロスペクティブに検討した。対象を内視鏡的所見および検査所見に基づいて、出血性潰瘍の227例と出血性ではない102例に分けた。出血性潰瘍の一般的なリスク因子に加え、地震後特有の交絡因子として避難所生活についても分析に含めた。潜在的な交絡因子を調整するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・消化性潰瘍患者329例のうち、87例(27%)が避難所生活を送っていたことが明らかになった。
・避難所で発症した消化性潰瘍の大多数(87例中76例)は、出血性であった。
・多変量回帰分析の結果、避難所生活は出血性潰瘍の強力なリスク因子であった(オッズ比[95%CI]:4.4[2.1~9.6]、p<0.0001)が、潰瘍疾患の進行度とは独立していた。
(ケアネット 武田 真貴子)