医療一般|page:110

急性冠症候群における早期SGLT2阻害薬使用の効果

 SGLT2阻害薬は糖尿病治療だけでなく、現在では心不全(HF)や腎不全の治療にその活躍のフィールドを拡大している。HFの臨床転帰を改善することは、すでにさまざまなエビデンスが報告されているが、早期の急性冠症候群(ACS)ではエビデンスは限定的であった。この疑問に対し、国立循環器病研究センターの金岡 幸嗣朗氏らの研究グループは、入院中の急性冠症候群患者に対し、SGLT2阻害薬の早期使用と非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の使用の関連を検討した結果を報告した。European Heart Journal-Cardiovascular Pharmacotherapy誌オンライン版2023年5月12日掲載。

閉塞性睡眠時無呼吸は脳の状態を悪化させる可能性

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)による睡眠の質の低下は、高齢者の脳の状態を悪化させる可能性のあることが、OSA患者を対象に脳の画像検査を実施した研究で示唆された。米メイヨー・クリニック睡眠医学センターのDiego Carvalho氏らが実施したこの研究の詳細は、「Neurology」に5月10日掲載された。  睡眠時無呼吸は、空気の通り道である上気道が狭くなって生じるOSAと、呼吸中枢の異常により生じる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に大別される。Carvalho氏によると、睡眠時無呼吸は、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、認知障害、認知症のリスク上昇に関連していることが指摘されている。また、血圧や心拍数の上昇、酸素レベルの低下、中途覚醒などをもたらし、さまざまな面で脳に有害な影響が及ぶことも分かっているという。

XBB.1対応コロナワクチン、秋接種から導入へ/厚労省

 厚生労働省は6月16日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、2023年度秋冬の接種に使用する新型コロナワクチンについて、XBB.1系統を含有する1価ワクチンを用いることが妥当であるという方針を示した。現在の主流であるオミクロン株XBB.1系統に対して、現行のBA.4/5対応2価ワクチンでは中和抗体価の上昇が低く、移行しつつある主流流行株に対してより高い中和抗体価を誘導するためには、最も抗原性が一致したワクチンを選択することが適切であるという。

不眠症の第一選択薬~日本の専門家コンセンサス

 睡眠障害の治療に関する臨床的疑問(クリニカル・クエスチョン)に対し、明確なエビデンスは不足している。琉球大学の高江洲 義和氏らは、1)臨床状況に応じた薬物療法と非薬物療法の使い分け、2)ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量または中止に対する代替の薬物療法および非薬物療法、これら2つの臨床的疑問に対する専門家の意見を評価した。その結果、専門家コンセンサスとして、不眠症治療の多くの臨床状況において、オレキシン受容体拮抗薬と睡眠衛生教育を第1選択とする治療が推奨された。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月9日号の報告。

局所進行大腸がんにおける、術前化学療法の有用性は?(NeoCol)/ASCO2023

 局所進行大腸がん初回治療の標準治療は切除と術後補助化学療法だが、ほかのがん種で広がる術前化学療法は有効なのか。この点について検討したランダム化比較第III相NeoCol試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、デンマーク・Danish Colorectal Cancer Center SouthのLars Henrik Jensen氏が発表した。

歯の痛み、どのくらいの頻度で“虫歯リスク”なのか

 日本歯内療法学会が、直近3ヵ月で歯の痛みを感じたことがある20~60代の800名を対象に『歯の痛みの放置』に関するアンケート調査を実施。その結果、痛みの強さや頻度に関わらず断続的に痛みを感じている人には一定の「虫歯リスク」があることが推察された。  主な結果は以下のとおり。 ・痛みの頻度ごとの内訳は、いつも痛む人(痛みが1~3日に1回程度)25.9%、ときどき痛む人(痛みが毎週~2、3週ごとに1回程度)32.1%、まれに痛む人(1~3ヵ月に1回程度)42.0%だった。 ・まれに痛む人の半数以上は違和感程度で、痛みを感じる箇所は特定のところだった。 ・痛みを感じた後に歯科受診したのは、全体の4割程度だった。 ・歯科検診で「虫歯」と診断された割合は、いつも痛む人33.0%、ときどき痛む人31.0%、まれに痛む人43.1%だった。 ・歯科検診していない人のうち、痛みを半年以上放置した割合は、まれに痛む人で56.8%にのぼった。一方、いつも痛む人でも半年以上も痛みを放置した割合は43.4%と長期間放置する人が多くみられた。

気が散りやすいのは若年者と高齢者のどちら?

 買い物袋の持ち運びや車の運転のような努力を要する身体動作を行う際に、高齢者は若年者よりも、その動作とは関係のない物事に気を取られやすいことが、米カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)のLilian Azer氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Psychology and Aging」に4月27日掲載された。  この研究には65~86歳の高齢者19人と18~28歳の若年成人31人が参加した。全ての参加者に、短期記憶の課題に取り組みながら、同時に握力計を最大努力時の5%または30%の力で握ってもらった。握力の強さは、階段を上るときや車の運転時、食料品の入った袋の運搬時に発揮する力を想定したもので、視覚的尺度により参加者にリアルタイムで発揮している力の強さをフィードバックした。なお、車の運転では最大努力時の約30%、買い物袋を持ち運ぶ際には最大努力時の約20%の握力が使われることが多いという。

1日1個のリンゴはフレイルを遠ざける?

 さまざまな果実や野菜に含まれているフラボノール類と呼ばれるフラボノイド類の一種をたくさん摂取することで、加齢に伴うフレイル(虚弱)リスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。中でも、リンゴやブラックベリーに豊富に含まれているケルセチンの摂取がフレイルリスクの低下と強い関連を示したという。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのSteven Oei氏らによる研究で、「The American Journal of Clinical Nutrition」に4月13日掲載された。  フレイルとは、加齢に伴い身体機能や認知機能に衰えが生じている状態を指す。高齢者の10~15%程度がフレイルを経験すると考えられている。フレイルの状態になると、転倒や骨折、身体障害、入院、死亡のリスクが上昇する。

アルツハイマー病治療薬lecanemabの安全性・有効性~メタ解析

 アルツハイマー病に対するlecanemabの有効性および安全性を評価するため、中国・Shengjing Hospital of China Medical UniversityのYue Qiao氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、実臨床における意義は確立していないものの、lecanemabは、早期アルツハイマー病患者の認知機能、行動に対し有効性を示すことが報告された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年5月5日号の報告。  2023年2月までに公表された軽度認知障害またはアルツハイマー病患者における認知機能低下に対するlecanemab治療を評価したランダム化対照比較試験を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochraneより検索した。臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale(ADAS-Cog)、臨床的認知症尺度(CDR)、アミロイドPET SUVr、PETにおけるアミロイド負荷、有害事象リスクに関するアウトカムを収集した。

TN乳がんのHER2発現状況、生検時期によって変動/ASCO2023

 HER2の発現状況は変動的であり、HER2低発現ではないIHC 0のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者が病勢進行時に生検を繰り返し行うことでHER2低発現となる可能性があることを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・マサチューセッツ総合病院のYael Bar氏が発表した。  第III相DESTINY-Breast04試験サブグループ解析において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はTNBCを含むHER2低発現で転移を有する乳がん患者の無増悪生存期間と全生存期間を有意に改善した。しかし、T-DXdのFDA承認はHER2低発現であってTNBCではないため、HER2低発現かどうかを特定することは臨床的に重要である。

肝細胞がんへのアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用術後補助療法の患者報告アウトカム(IMbrave050)/ASCO2023

 肝細胞がん(HCC)に対するアテゾリズマブとベバシズマブの併用術後補助療法を評価するIMbrave050試験の探索的研究から、同レジメンは健康関連QOLや機能スコアに悪影響を及ぼさないことが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、近畿大学の工藤 正俊氏が発表したもの。  追跡期間17.4ヵ月において、IMbrave050試験の主要評価項目であるRFSは、対照群と比較してアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用群で有意に改善しており(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.56~0.93、p=0.0120)、また、同併用療法の安全性についても既知の報告との一致していた。

コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。  病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。

身体活動が物質使用障害の治療に役立つ可能性

 飲酒による問題が生じているのに飲むのをやめられない状態や、違法薬物を用いている状態を指す「物質使用障害」から立ち直ろうとしている人に対して、身体活動がそれを後押しするように働くことを示唆するデータが報告された。ケベック大学およびモントリオール大学(カナダ)のFlorence Piche氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に4月26日掲載された。週に3日、1時間の中強度運動で有効の可能性があるという。  Piche氏らの研究は、物質使用障害に対する身体活動の効果を検討した43件の研究の報告を総合的に解析したもの。その結果、治療中の身体活動量の多さが、対象物質の使用量減少と関連していることを見いだした。同氏は、「私はかつて物質使用障害の人たちのためのセラピーハウスに運動生理学の専門家として勤務していたが、その時、この領域では運動療法の有効性があまり考慮されていないことに気付いた」と、研究の動機を語っている。

脳卒中後の妻とその夫をテコンドーの「不屈の精神」が支える

 米国ノースカロライナ州に住むCecile Boyntonさんは、5カ月前に結婚したばかりの夫に、「仕事が終わって今から帰るところ」とメールした。帰宅後は夫婦でパーソナルトレーナーを訪ね、トレーニングを受ける予定だった。2人は数年前に、自宅近くのテコンドー教室で出会った。夫婦ともに黒帯で、夫のMarkさんは10代の頃から格闘技を習い、Cecileさんもトレーニング歴10年に達していた。  車で家に帰る途中、Cecileさんは頭痛とともに吐き気とめまいを感じ、いったん高速道路を降りた。数分たつと気分が良くなったので、再び車を走らせた。そして彼女が次に覚えていることは、道端に座って救急隊員の質問に答えようとしているシーンだ。乗っていた車は逆さまにひっくり返っていた。

日本人の炭水化物摂取量と死亡リスクは男女で逆の関係に~J-MICC研究

 これまで、炭水化物や脂質の摂取量と死亡リスクの関連を検討した研究において、一貫した結果が得られていない。そこで、田村 高志氏(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野 講師)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)に参加した8万1,333人を対象として、炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した。その結果、男性では炭水化物の摂取量が少ないと死亡リスクが高くなり、女性では炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高くなる傾向がみられた。本研究結果は、The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月2日号に掲載された。

個別化がんワクチン+ペムブロリズマブ併用の結果に新たな期待/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)とMerck(米国とカナダ以外ではMSD)は、2023年6月5日付のプレスリリースで、切除された高リスク悪性黒色腫患者に対する個別化がんワクチンmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させたと発表。本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告された。  なお、本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)については、2022年12月、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用治療で、ペムブロリズマブ単独と比較し再発または死亡のリスクが44%減少した、と発表されている。

HR+/HER2-転移乳がんへのSG、より長い追跡期間でも有用性持続(TROPiCS-02)/ASCO2023

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、SGが無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、HER2低発現例においても改善がみられたことがすでに報告されている。今回、探索的解析として、より長い追跡期間(12.75ヵ月)におけるPFSとOS、さらにHER2低発現におけるPFSとOSの解析結果を、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。

認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。  セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。 

膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Labori KJ.氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。  切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。