救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:59

COVID-19流行、 ACSの入院数減に影響か/Lancet

 イングランドでは、急性冠症候群(ACS)による入院患者数が、2019年と比較して2020年3月末には大幅に減少(40%)し、5月末には部分的に増加に転じたものの、この期間の入院数の低下は、心筋梗塞による院外死亡や長期合併症の増加をもたらし、冠動脈性心疾患患者に2次予防治療を提供する機会を逸した可能性があることが、英国・オックスフォード大学のMarion M. Mafham氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年7月14日号に掲載された。COVID-19の世界的流行期に、オーストリアやイタリア、スペイン、米国などでは、ACSによる入院数の低下や、急性心筋梗塞への直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行数の減少が報告されているが、入院率の変化の時間的な経過やACSのタイプ別の影響、入院患者への治療などの情報はほとんど得られていないという。

新型コロナ重症例、デキサメタゾンで28日死亡率が低下/NEJM

 英国・RECOVERY試験共同研究グループのPeter Horby氏らは 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者のうち、侵襲的人工呼吸器または酸素吸入を使用した患者に対するデキサメタゾンの投与が28日死亡率を低下させることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年7月17日号に掲載報告。なお、この論文は、7月17日に改訂された厚生労働省が発刊する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第2.2版」の“日本国内で承認されている医薬品”のデキサメタゾン投与の参考文献である。  この研究では、2020年3月19~6月8日の期間にCOVID-19入院患者へのデキサメタゾン投与における有用性を把握するため、非盲検試験が行われた。

新型コロナウイルス診療の手引きをアップデート/厚生労働省

 7月17日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に向けに作成する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」を改訂し、2.2版として発表した。  3月17日に第1版が発行されたこの手引きは、5月18日に第2版が発行され、その後も毎月1回のペースで改訂されている。今回の改訂における主なポイントは以下のとおり。 ・国内データ:直近まで更新 ・診断:遺伝子増幅検査(LAMP法・PCR法)の解説を追加 ・診断:抗原定量検査の解説を追加

マスク着用で医療者のCOVID-19抑制効果が明らかに/JAMA

 マサチューセッツ州最大の医療システムで12の病院と75,000人超の従業員を抱えるMass General Brigham(MGB)は、2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、医療従事者(HCW:health care workers )のCOVID-19の前兆に対する体系的な検査やサージカルマスクを着用した全HCWと患者に対してユニバーサルマスキングを含む多面的な感染対策の研究を実施した。その結果、MGBでのHCWのマスク着用習慣がHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性率の有意な低下に関連していたと示唆された。また、患者-HCWおよびHCW同士の感染率低下に寄与する可能性も明らかになった。JAMA誌2020年7月14日号リサーチレターでの報告。

緩和ケアは非がん患者の救急受診と入院を減らす?/BMJ

 緩和ケア(palliative care)は、非がん患者においても潜在的ベネフィットがあることが、カナダ・トロント大学のKieran L. Quinn氏らによる住民ベースの適合コホート試験で示された。人生の終末期(end of life:EOL)が近い患者の多くは、救急部門の受診および入院の頻度が高く、それが人生の質を低下するといわれていれる。緩和ケアは、がん患者についてはEOLの質を改善することが示されているが、非がん患者に関するエビデンスは不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「EOLは、医師のトレーニングへの持続的な投資とチーム医療で行う緩和ケアの現行モデルの利用を増やすことで改善可能であり、医療政策に重大な影響を与える可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年7月6日号掲載の報告。

無症状者でも唾液を用いたPCR検査が可能に/厚労省

 新型コロナウイルスへの感染を調べる検査について、厚生労働省は7月17日より、無症状者に対しても、唾液を用いたPCR検査(LAMP法含む)および抗原定量検査を活用可能とすることを発表した。ただし、簡易キットによる抗原検査については今後研究を進める予定で、現状唾液検体の活用は認められていない。これまで、PCR検査、抗原定量検査ともに唾液検体については、発症から9日目以内の有症状者のみ活用が認められていた。  今回の決定は、都内で無症状者を対象に、唾液を用いたPCR検査および抗原定量検査と、鼻咽頭拭い液PCR検査結果を比較し、高い一致率を確認したことを受け、7月15日開催の第44回厚生科学審議会感染症部会の審議を経て、活用可能と判断されたことに基づく。

あまりにも過酷な勤務体制(解説:野間重孝氏)-1257

本研究は医師の長時間労働を改善することにより医療事故の発生率を引き下げることができるという仮説のもとに、研修2年目・3年目のレジデントを対象として、ICUにおける24時間以上の長時間連続勤務を行う群(対照群)と16時間以内の日中・夜間の交代制スケジュールで勤務する群(介入群)との間で、重大な医療ミスの発生頻度を比較したものである。評者は現在の米国のレジデントの研修体制について疎いのだが、本研究に違和感を覚えたのは、このような過酷な勤務体制が米国の研修体制では普通に受け入れられているのだろうかという点に、強い疑問を持ったからである。24時間以上の勤務については言うまでもないが、交代制とはいえ16時間の連続ICU勤務というのは十分に過酷な勤務体制であると思われるからだ。Appendixに目を通しても実際の勤務表は載せられていないので、両群ともにどのような休息の取り方をしながらの勤務であったのか明らかではないが、少なくとも(研修期間中はともかくとして)長く勤務できる体制であるとはとても思えない。

新型コロナ集団免疫は期待薄、感染者25万人のスペインでの調査/Lancet

 スペインで6万人超の国民を対象に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の血清疫学調査を行ったところ、感染蔓延(ホットスポット)地域でさえも大部分の人が血清反応陰性で、PCR検査で確認された大半の症例で検出可能な抗体が認められる一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した症状を有するかなりの人がPCR検査を受けておらず、血清反応陽性者のうち3分の1以上の人が無症状であることが明らかにされた。スペイン・National Centre for EpidemiologyのMarina Pollan氏らが、約3万6,000件の家庭を対象に行った調査の結果で、著者は、「スペインでは、COVID-19の影響が大きいにもかかわらず推定有病率は低いままで、集団免疫の獲得には明らかに不十分である。獲得には多くの死亡者や医療システムへの過度な負担なしにはなし得ない状況にある」と述べ、「今回の結果は、新たなエピデミックを回避するためには、公衆衛生上の対策を継続していく必要性を強調するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年7月3日号掲載の報告。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)への3剤配合吸入薬治療について(解説:小林英夫氏)-1255

呼吸機能検査において1秒率低下を呈する病態は閉塞性換気障害と分類され、COPD(慢性閉塞性肺疾患)はその中心的疾患で、吸入薬による気道拡張が治療の基本であることはすでに常識となっている。その吸入療法にどのような薬剤が望ましいのか、短時間作用型抗コリン薬(SAMA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、短時間作用型β2刺激薬(SABA)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)などが登場している。さらに、COPDの一種として気管支喘息要素を合併している病態(ACO)が注目されてからは吸入ステロイド薬(ICS)が追加される場合もある。そして、これら薬剤を個別に使用するより合剤とすることで一層の効果を得ようと配合薬開発も昨今の流れである。

アビガン、ウイルス消失傾向も有意差示せず/多施設無作為化試験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状および軽症患者に対するファビピラビル(商品名:アビガン)のウイルス量低減効果を検討した多施設非盲検ランダム化臨床試験の最終結果の暫定的な解析から、通常投与群(1日目から投与)は遅延投与群(6日目から投与)に比べて6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかったことを、7月10日、藤田医科大学が発表した。本研究の詳細なデータを速やかに論文発表できるよう準備を進めるという。