救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:72

ICU患者のせん妄、家族の自由面会で減少せず/JAMA

 集中治療室(ICU)における家族の面会時間を自由にしても、制限した場合と比較してせん妄発生の有意な低下は確認されなかった。ブラジル・Hospital Moinhos de VentoのRegis Goulart Rosa氏らが、ICUにおける家族の面会がせん妄の発生に及ぼす影響を検証したクラスター・クロスオーバー無作為化臨床試験の結果を報告した。ICUにおける家族の面会時間を自由にする方針は、患者および家族中心のケアの重要なステップとして、米国クリティカルケア看護師協会(AACN)や米国集中治療医学会(SCCM)のガイドラインにより推奨されているが、その影響ははっきりしていなかった。JAMA誌2019年7月16日号掲載の報告。

血小板機能を標的としたランダム化比較試験に意味があるか?(解説:後藤信哉氏)-1083

新薬を開発するためには、過去の標準治療の欠点を挙げる必要がある。正直、クロピドグレルは革新的抗血小板薬であった。効果の不十分性をステント血栓症により実感させる冠動脈ステント例でも十分に有効とされた。頭蓋内出血などの出血合併症も決して多くはない。プラスグレル、チカグレロルと同種の薬剤が開発されたが、安価になったクロピドグレルを転換するインパクトはなかなか出せない。TRITON-TIMI 38試験ではプラスグレルにより優れた抗血栓薬効果を得るためには、出血死も含む重篤な出血の増加が必要なことが示された。試験のプロトコールを工夫したPLATO試験では出血増加を前面に出さずにチカグレロルの効果を示したが、冠動脈疾患以外への適応拡大は困難であった。

Sepsisの4タイプの表現型の提唱とその評価(解説:吉田敦氏)-1077

敗血症にはさまざまな症例が含まれ、臨床症状・徴候のスペクトラムは幅広い。このため臨床病型を分別し、より精確なマネジメントにつなげようとする試みはこれまで長く続けられてきた。2016年には「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義 第3版(Sepsis-3)」が発表され、定義も新しくなり、SOFA(PaO2/FiO2、血小板数、ビリルビン、平均動脈圧、GCS、クレアチニン)・qSOFA(収縮期血圧、呼吸数、GCS)が導入されたが、このような試みはそれ以前からのものである。今回3個の観察コホート研究と3個のランダム化臨床試験(合計6個)から得られたデータを後方視的に解析することで、病型自体導出できるのか、できるならば病型はいくつか、導出された病型の妥当性・再現性はどうか、検討が行われた。

今シーズンのハチ毒被害に備える方策

 第68回 日本アレルギー学会学術大会(会長:相良 博典氏[昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門])が、6月13~15日まで都内で開催された。大会期間中、喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など多彩なセッションが開催された。  これからのシーズン、ハチ刺されによるアナフィラキシーショックの事例も増えることから、本稿では教育講演で行われた「ハチアレルギーの現状」の概要をお届けする。  講演では、平田 博国氏(獨協医科大学埼玉医療センター 准教授)を講師に迎え、ハチ毒による症状、治療、アレルゲン免疫療法(予防)について説明が行われた。

灌流画像を用いた血栓溶解療法は、発症後9時間までの脳梗塞と睡眠中に発症した脳梗塞にまで治療時間枠を拡大できる:個別患者データのメタ解析(解説:内山真一郎氏)-1072

アルテプラーゼによる血栓溶解療法は脳梗塞発症後4.5時間までが推奨されているが、4.5時間以上か睡眠中に発症し、救済しうる脳組織がある患者に血栓溶解療法が有効であることを灌流画像が同定できるかどうかをメタ解析により検討した研究である。脳梗塞発症後4.5~9時間か起床時に脳卒中症状がある患者においてMRIかCTで灌流を評価しているアルテプラーゼのプラセボ対照無作為化比較試験を検索し、1次評価項目として3ヵ月後の転帰良好(改訂ランキン尺度0または1)、安全性評価項目として死亡または症候性頭蓋内出血を検討している。

脳損傷急性期の15%は行動反応なくとも脳活動あり/NEJM

 急性脳損傷患者の15%で、運動指令に対する行動反応はなくても、脳波測定(EEG)では指令に反応を示す記録がみられ、脳が活性化していることが明らかになった。米国・コロンビア大学のJan Claassen氏らが、脳損傷患者を対象に、音声による運動指令に反応する脳活動と予後への影響を検証した前向き試験の結果を報告した。臨床的に無反応な患者において、体を動かすよう声掛けをした際に脳活動を示す脳波が検出される場合がある。そのような認知と運動の解離が、脳損傷後の数日間にみられる割合や予後についての重要性は、これまで十分に解明されていなかった。NEJM誌2019年6月27日号掲載の報告。

軽症脳卒中/TIA患者への血小板反応性が低い薬物療法は?/BMJ

 チカグレロル+アスピリン併用療法を受けた軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)患者、とくにCYP2C19機能喪失型変異保有者では、クロピドグレル+アスピリン併用療法を受けた患者と比較して、高い血小板反応性を示す患者の割合が低いことが示された。中国・首都医科大学のYilong Wang氏らが、軽症脳卒中/TIA患者を対象にチカグレロル+アスピリンのクロピドグレル+アスピリンに対する優越性を検証する第II相非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「Platelet Reactivity in Acute Stroke or Transient Ischaemic Attack trial:PRINCE試験」の結果を報告した。急性冠症候群においては、チカグレロル+アスピリン併用はクロピドグレル+アスピリン併用と比較し、CYP2C19の変異の有無にかかわらず有効であることが示されているが、軽症脳卒中/TIA患者では検証されていなかった。BMJ誌2019年6月6日号掲載の報告。

人工呼吸器離脱の成功率が高いのは?圧制御vs.Tピース/JAMA

 人工呼吸器で24時間以上管理された患者に対し、抜管のために自発呼吸トライアル(SBT)を行う際、圧制御換気SBTを30分実施するほうが、Tピース換気SBTの2時間実施に比べ、抜管成功率が有意に高いことが示された。スペイン・マンレザ大学のCarles Subira氏らが、1,153例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年6月11日号で発表した。人工呼吸器の離脱の適切性を見極めるには、SBTが最も良い方法だと考えられているが、その際の換気モードや実施時間については明確にはなっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「より短時間で負荷の少ない換気戦略をSBTに用いることを支持する所見が示された」とまとめている。

「傾向が認められた」を巡る最近の議論(解説:香坂俊氏)-1064

今回取り上げるPRINCESS研究(JAMA誌に2019年5月に発表)の大枠の結果は以下のとおりであった。鼻カヌラ冷却装置による早期低体温療法の効果を検討。671人の院外心肺停止患者(witnessed:目撃者あり)を対象。90日目後予後に「改善の傾向」は認められたが、有意差なし。このうえさらに電気ショック可能であった患者での層別化解析も行われているが、こちらも「改善の傾向」を認めるのみで、統計学的な有意差は認められなかった。心肺停止症例に対する介入に関しては、低体温療法のみならずさまざまな早期介入手段に関してあまり芳しくない結果が続いている。

血栓溶解療法は睡眠中の発症例では何時間以内まで有効か?(解説:内山真一郎氏)-1063

EXTENDは、発症後4.5~9.0時間以内か、睡眠の中間時刻から9時間以内の覚醒時に発症していた脳梗塞のうち、自動灌流画像解析装置(RAPID)で救済しうる血流低下部位がある症例において、アルテプラーゼかプラセボを無作為割り付けして投与し、90日後の転帰良好例(改訂ランキン尺度が0または1)の割合を比較した介入試験であった。この試験にはオーストラリアと台湾の10施設ずつと、ニュージーランドとフィンランドの1施設ずつが参加した。