循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:104

非虚血性心筋症に対する左脚ペーシングは有効か【Dr.河田pick up】

 左脚ブロックを改善させて、心室再同期を図るヒス束ペーシングは実現可能な方法であるが、リード留置が容易ではなく、閾値が高くなるという問題がある。本研究は、左脚ブロックを伴った非虚血性心筋症患者に対する心室再同期療法(CRT)の手段として、比較的新しい中隔アプローチによる左脚ペーシング(LBBP)が現実的に可能で有効な方法かを評価するために、中国・温州医科大学のWeijian Huang氏が米国や英国の研究チームと共に実施したもので、JACC誌に掲載された。

日本循環器協会が発足―予防啓発や人材育成など7つの事業を柱に

 5月10日、循環器病の新たな団体として『日本循環器協会』が発足した。代表理事に小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授)、平田 健一氏(神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野教授)を迎え、各都道府県などと連携を取ることで、患者の心不全予防の啓発に力をいれていく。  循環器病による国内死亡率は近年の高齢化に伴いがんよりも高い。また、健康寿命にも大きく影響を及ぼしており、平均寿命に対し、健康寿命は男性で8.84年、女性で12.35年も短く、国としての大きな問題になっている。そこで、2016年から「脳卒中・循環器病克服5ヵ年計画」や「脳卒中・循環器病対策基本法」が、昨年10月には「循環器病対策推進基本計画」が動き出したことで、各都道府県でも基本計画が実行されていくことになる。これまでも循環器病領域には歴史のある日本循環器学会や日本心臓財団が存在するが、いずれも患者やサポート企業、自治体との連携が限定的であったことを踏まえ、市民により近い距離での情報発信や患者・家族サポートなどの活動を行うための新たな組織が必要となり設立に至った。

RA系阻害薬は、COVID-19入院患者に継続してよい?

 COVID-19入院患者において、レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬の継続有無による転帰の差はないことが、米国・ペンシルベニア大学のJordana B. Cohen氏によって明らかにされた。RA系阻害薬は、COVID-19入院患者でも安全に継続できるという。The Lancet. Respiratory Medicine誌2021年3月号の報告。  RA系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用は、COVID-19の重症度に影響を与える可能性が示唆されている。世界7ヵ国20の大規模な委託病院において、前向き無作為化非盲検試験REPLACE COVID試験(ClinicalTrials.gov:NCT04338009)を実施し、RA系阻害薬の継続と中止がCOVID-19入院患者の転帰に影響を与えるかどうか、検証した。

降圧薬で正常血圧者も心血管イベントリスク低下?/Lancet

 降圧薬により収縮期血圧を5mmHg低下させることで、心血管疾患の既往歴の有無を問わず、また血圧が正常値や正常高値であっても、主要心血管イベントのリスクが約10%低下することが、英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。著者は、「これらの知見により、薬剤による一定程度の降圧治療は、その時点で治療の対象とされない血圧値であっても、主要心血管疾患の1次および2次予防において、治療対象の血圧値の場合と同様に有効であることが示唆される。これは、降圧治療が、主に血圧が平均値よりも高い場合に限定されている実臨床に変革を求めるものであり、降圧薬は、血圧値や心血管疾患の既往歴を問わず、心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるほうがよいことを示唆する」とし、「患者に降圧治療の適応を伝える際は、血圧の低下そのものに焦点を当てるのではなく、心血管リスクの低減の重要性を強調すべきである」と指摘している。Lancet誌2021年5月1日号掲載の報告。

新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。

新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか?:Ad26.COV2.S(Janssen)の場合(解説:後藤信哉氏)-1390

新型コロナウイルス禍の克服の鍵の1つがワクチンである。人類は科学技術の英知を結集して驚くべき速さにて新型コロナウイルスに対するワクチンを複数開発した。予後の悪い疾病に対する治療と異なり、健常人に接種するワクチンには高い安全性が要求される。有効かつ安全なワクチンの開発には一般に長い年月がかかる。複雑精妙な人体の調節系は完全に理解されていない。薬剤であれ、ワクチンであれ、投与後の反応を個別予測する演繹的方法は確立されていない。拡大する新型コロナウイルス感染、感染すれば致死率は2%に至るとされる。人類全体として見ればワクチンによる免疫の獲得は感染の拡大速度を減少させ、医療崩壊を防ぐ効果を期待できる。現在も感染の第4波が拡大し、地域によっては医療崩壊にひんしている日本では感染拡大速度を減少させるワクチンを急速に拡大させたい。集団としての視点から日本国内のワクチン接種に反対するヒトは少ないと思う。しかし、予防介入、治療介入には副作用がある。安全性の高いワクチンであっても、ワクチン接種直後に心筋梗塞、脳梗塞などを偶然発症する場合もある。副作用なのか、偶発症なのか、個別のイベントにおける判断は難しい。

バダデュスタットvs.ダルベポエチン、保存期CKDのMACEへの有効性/NEJM

 保存期慢性腎臓病(NDD-CKD)患者において、バダデュスタットはダルベポエチン アルファと比較し、血液学的有効性に関しては事前に設定した非劣性マージンを満たしたが、主要安全性評価項目である主要有害心血管イベント(MACE)については非劣性マージンを満たさなかった。米国・スタンフォード大学のGlenn M. Chertow氏らが、バダデュスタットの有効性を評価した2件の第III相無作為化非盲検実薬対照非劣性試験の結果を報告した。バダデュスタットは、経口投与の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬で、HIFを安定化してエリスロポエチンおよび赤血球の産生を刺激することから、腎性貧血の治療薬として開発された。NEJM誌2021年4月29日号掲載の報告。  研究グループは、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴がなくヘモグロビン(Hb)値10g/dL未満のNDD-CKD患者、およびESA治療歴がありHb値8~11g/dL(米国)または9~12g/dL(米国以外)のNDD-CKD患者を、バダデュスタット群またはESAダルベポエチン アルファ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

AZ製ワクチン、血栓症の絶対リスクは?/BMJ

 Oxford-AstraZeneca製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1-S」の接種を受けた人では、脳静脈血栓症を含む静脈血栓塞栓症の発生がわずかに増加することが確認された。他の安全性については、血小板減少症/凝固異常と出血イベントの発生がわずかに高かったが、ワクチン接種を受けた人のサーベイランスが強化された影響のためか、大部分は安心してよい結果であったという。デンマーク・南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らが、同国とノルウェーで実施したコホート研究の結果を報告した。自発的な有害事象の報告や臨床のケースシリーズにおいて、ChAdOx1-S接種後数日から数週間以内に血小板減少症、出血、動脈/静脈血栓症が発生したことが確認されているが、これらの発生について一般集団での自然発生に基づく予想より過剰かどうかは不明であった。BMJ誌2021年5月5日号掲載の報告。

「高齢者糖尿病の血糖管理目標(HbA1c値)」と死亡リスクの関係

 日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を公表し、患者を3つのカテゴリーに分類している。しかしその妥当性に関して本邦の縦断研究に基づくエビデンスは不足していた。東京都健康長寿医療センターの荒木 厚氏・大村 卓也氏らはJ-EDIT研究のデータを用い、認知機能、手段的ADL、基本的ADL、併存疾患による種々のカテゴリー分類と死亡リスクとの関連を検討。身体機能と認知機能に基づく分類および併存疾患数に基づく分類が死亡リスクの予測因子となることに加え、8つの簡便な質問項目でカテゴリー分類が可能となることが明らかとなった。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版4月22日号の報告より。

J&J新型コロナワクチンによる脳静脈洞血栓症例、初期症状に頭痛/JAMA

 米国で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「Ad26.COV2.S COVID-19」(Janssen/Johnson & Johnson製)を接種後、血小板減少症を伴う脳静脈洞血栓症(CVST)という深刻なイベントを呈した当初の12例について、その臨床経過や検査結果、臨床アウトカムが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のIsaac See氏らが、ワクチン有害事象報告制度(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)の報告書などを基にケースシリーズを行い明らかにしたもので、12例は年齢18~60歳未満で、全員が白人女性、接種から発症までの期間は6~15日で、11例の初期症状が頭痛だった。調査時点で、3例が死亡している。Ad26.COV2.Sワクチンは、2021年2月、米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得て、4月12日までに約700万回が接種された。そのうち6例で、血小板減少症を伴うCVSTが確認されたことを受け、4月13日に接種が一時的に中止されている。JAMA誌オンライン版2021年4月30日号掲載の報告。