高血圧は、認知症や認知機能障害の重要なリスク因子であると考えられている。しかし、血圧レベルに関係なく、血圧変動が認知症や認知機能低下に影響を及ぼしている可能性が示唆されている。香港中文大学のPingping Jia氏らは、血圧変動が、認知症や認知機能障害の独立したリスク因子であるかについて、調査を行った。Hypertension誌オンライン版2021年8月15日号の報告。
2021年5月までに公表された文献をMEDLINE、Embase、PsycINFO、CINAHL、Web of Scienceより検索した。認知症または認知機能障害リスクの予測因子として、血圧変動を用いて評価を行った縦断的研究を分析対象に含めた。認知症または認知機能障害リスクに対する血圧変動の影響を評価するため、メタ解析およびメタ回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・特定された文献5,919件のうち、縦断的研究は16件含まれていた。参加者は、700万人超で、年齢中央値は50.9~79.9歳、フォローアップ期間中央値は約4年であった。
・受診ごとの血圧変動(visit-to-visit)を報告した13件において、収縮期血圧変動は、認知症(プールされたハザード比:1.11、95%CI:1.05~1.17)および認知機能障害(プールされたハザード比:1.10、95%CI:1.06~1.15)のリスクを上昇させることが示唆された。
・受診ごとの拡張期血圧変動においても、同様にリスクの上昇が認められた。
・メタ回帰分析では、血圧変動の大きさと認知症および認知機能障害リスクとの間に線形関係が認められた。
・家庭内血圧変動(day-to-day)においても、同様の所見が認められた。
著者らは「長期にわたる血圧変動は、認知症や認知機能障害の独立したリスク因子であり、血圧変動を減少させるための介入計画は、認知症の早期予防につながると考えられる」としている。
(ケアネット)