循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:175

動脈硬化患者へ画像所見提示、進行予防に効果/Lancet

 無症候性アテローム硬化症について、頸動脈内膜中膜肥厚の超音波検査結果を用いて可視化し患者に見せることで、1年後のフラミンガム・リスクスコアが低下するなど、心血管疾患予防に効果があることが明らかにされた。スウェーデン・ウメオ大学のUlf Naslund氏らが約3,500例を対象に行った、非盲検無作為化比較試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年12月3日号で発表された。運動や禁煙といった生活習慣の変更や、高血圧・高コレステロール血症の治療など、心血管疾患の1次予防は、患者や医師のアドヒアランスが低いことが課題となっている。

STEMIでの至適DAPT期間は6ヵ月それとも12ヵ月?(解説:上田恭敬氏)-974

第2世代DESによって治療されたSTEMI症例で6ヵ月間イベントがなかった症例を、その時点でDAPTからSAPT(アスピリン単独)へ変更する群とそのままさらに6ヵ月間DAPTを継続する群に無作為に割り付け、その後18ヵ月(PCIからは24ヵ月)までの全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中、出血(TIMI major)の複合頻度を主要評価項目として非劣性が検討された。432症例がSAPT群、438症例がDAPT群に割り付けられた。主要評価項目の発生頻度は、SAPT群で4.8%、DAPT群で6.6%となり、非劣性が示された。

受動喫煙と高血圧症との関連~日本人3万人の横断研究

 受動喫煙の直後に血圧は一時的に上昇するが、受動喫煙と慢性的な高血圧症との関連については明らかではない。今回、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)の横断研究で、多くの潜在的交絡因子を制御し、その関連について評価を行った。その結果から、高血圧予防においてタバコ煙を制御する重要性が示唆された。Medicine(Baltimore)誌オンライン版で2018年11月に掲載。  本研究の対象者は、J-MICC研究に参加した生涯非喫煙者3万2,098人(男性7,216人、女性2万4,882人)である。受動喫煙は自記式調査票を用いて評価した。

BVSにまだ将来性はあるのか?(解説:上田恭敬氏)-970

BVS(Absorb bioresorbable vascular scaffolds)とDES(Xience everolimus-eluting stent)を比較した国際多施設RCTであるABSORB IV試験の結果である。1,296例がBVS群に1,308例がDES群に割り付けられ、主要評価項目を30日でのtarget lesion failure(TLF:cardiac death、target vessel myocardial infarction、ischaemia-driven target lesion revascularisation)、主要副次評価項目を1年でのTLFと狭心症症状として非劣性が検討された。

リバースリモデリングした拡張型心筋症の薬物治療は中止できるのか?(解説:絹川弘一郎氏)-969

高血圧の人に薬を出そうとしたら、「先生、一回飲みはじめたら、やめられないんですよね、それなら最初から飲みません」と言われたことがない医者はいないであろう。サプリメントを山盛り飲んでいても医者の処方薬の副作用が怖いとか言って、前記のような態度を取る人が後を絶たない。それくらい、患者の側はなんとか薬をやめようと考えているのかもしれないが、このTRED-HF試験はそんな患者側の意向に沿ったのではないであろうが、DCMでせっかくリバースリモデリングが得られた薬剤を切ってみたらどうなるかという、勇敢なRCTをやってくれた。実際、DCM患者において完全なリバースリモデリングが得られることも珍しくはないし、無症状になってしまう事例はもっとある。その中で勝手に怠薬した後、半年、1年経って心不全症状が悪化して再受診し、「もう二度とこんなことはしないでね」と言って処方を再開し、ある程度心機能がリバースしてホッとする、などという経験はたくさんではないにせよ片手では済まない。ただし、怠薬するようなアドヒアランスに問題のある患者だからこそ、薬剤をやめた後の自己管理がダメで再発するのだという考え方も一応は成り立つ。しかし、われわれ心不全でない人間がどんな毎日を送っているか一度よく考えてみたらどうであろうか。2~3種類の薬を飲んで普通の人と同じ生活ができるなら、めちゃめちゃ自己管理して薬なしで頑張るのはたいていの人は選択しないであろう。

リナグリプチン、高リスク2型DMでのCV・腎アウトカムは/JAMA

 心血管および腎リスクが高い2型糖尿病の成人患者では、通常治療と選択的DPP-4阻害薬リナグリプチンの併用療法は、主要な心血管イベントのリスクがプラセボに対し非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCARMELINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2018年11月9日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクの増加と関連する。これまでに実施された3つのDPP-4阻害薬の臨床試験では、心血管への安全性が示されているが、これらの試験に含まれる高い心血管リスクおよび慢性腎臓病を有する患者の数は限定的だという。

健常者のアスピリン(解説:後藤信哉氏)-968

日本では薬局で売っている一般薬の価格が著しく高い。米国に旅行するとアスピリン、イブプロフェンなどが著しい安価で購入できる。製薬企業は革新的新薬を開発して短期間に独占的利益を得れば、その後は自社の開発品が価格競争により安価になり市場に普及し、その後さらに安全性が確立されて非処方薬の一般薬になれば著しい社会貢献をしたことになる。日本ではジェネリック、一般薬へのプロセスの壁がまだ高い。本研究では100mgアスピリンとプラセボをバイエルが供給しているほかには企業の関与はないと記載されている。もともと安価な市販薬であっても、「50%の確率で無料で薬をくれる」試験なら私も参加してみたい。服薬遵守率は1年間の錠剤の減りで評価されている。薬が瓶で供給される国ゆえにできる方法である。アスピリンが抗血小板作用を発揮すれば重篤な出血は増える。この事実は心血管病の既往の有無に影響を受けない。アスピリンの心筋梗塞、心血管死亡予防効果は2次予防の症例にて観察され、一部の1次予防の症例でも示唆されている。しかし、本研究のように健常な高齢集団で、必ずしも追跡率が高くはない試験では差異を示すことができなかった。

ダパグリフロジンによる心血管イベントの抑止-RCTとリアルワールド・データとの差異(解説:吉岡成人氏)-967

SGLT2阻害薬の投与によって2型糖尿病における心血管リスクが低下することが、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Programの2つの大規模臨床試験で示されている。それぞれ、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジン、カナグリフロジンが用いられ、心血管イベントの既往者およびハイリスク患者において、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中を総合して「主要心血管イベント」とした際に、SGLT2阻害薬を使用した患者における統計学的に有意なイベント抑制効果が確認された。さらに、副次評価項目として、アルブミン尿の進展やeGFRの低下をも抑制し、腎保護作用を示唆するデータも示された。

とうとうCONSENSUS試験が古典になる日が来るのか?(解説:絹川弘一郎氏)-966

今年のAHAは豊作であった。Late breakingでDECLARE試験の発表があり、そしてsacubitril/バルサルタン(ARNi:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)の新たなエビデンスがこのPIONEER-HF試験1)で加わった。2014年にARNiがACE阻害薬とのRCT(PARADIGM-HF試験)2)でHFrEFの予後を改善することが示されたのは衝撃であり、1987年CONSENSUS試験3)以来王座を死守してきたACE阻害薬の牙城が崩れたかに思えた。しかし、FDAの認可基準はあくまでもRAS阻害薬を含むGDMTを4週間以上施行してなお心不全症状の残ったHFrEF患者に対するACE阻害薬またはARBからの切り替え、というものであり、de novoの患者に最初から投与することはできなかった。

Harmony Outcomes試験はGLP-1受容体作動薬のポジショニングに調和をもたらしたのか?(解説:住谷哲氏)-965

GLP-1受容体作動薬を用いた心血管アウトカム試験(CVOTs)はこれまでにELIXA(リキシセナチド)、LEADER(リラグルチド)、SUSTAIN-6(セマグルチド)、そしてEXSCEL(weeklyエキセナチド)の4試験が報告されているので本試験が5試験目になる。これまでの試験の結果についてはすでにメタ解析が報告されており1)、おそらく週1回製剤albiglutideによる本試験を加えた5試験のメタ解析の結果が近日中に報告されると思われる。来年には同じく週1回製剤であるデュラグルチドのREWINDの結果が報告される予定であり、すべての試験を合わせると参加患者は合計50,000人以上になり1つのデータベースを形成すると言ってよい。