コレステロール過剰摂取、卵の食べ過ぎは心血管疾患および全死因死亡を増やす?(解説:島田俊夫氏)-1028 コレステロールの取り過ぎは体に悪い? これまでの欧米においては概して虚血性心疾患による死亡率がわが国と比較し圧倒的に多いことから、欧米からのエビデンスに基づき悪玉コレステロール高値は心血管疾患のリスク因子だとの考えが定着していた。もちろん家族性高コレステロール血症はとりわけハイリスクであるが、このような症例を一般化する解釈の根拠は必ずしも十分とは言えない。一方で高齢者の高コレステロール血症はむしろ健康状態が良いことが多く、スタチンを使用して下げている症例を時々みかけるが、個人的にはいらんお世話をしているのではと懸念している。
高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標の変更は? 本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。2014年以来5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。
糖尿病性腎臓病におけるエンパグリフロジンの複合腎・心血管アウトカム/国際腎臓学会 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)によるEMPA-REG OUTCOME試験における、ベースライン時の顕性アルブミン尿を伴う糖尿病性腎臓病(DKD)患者での複合腎・心血管アウトカムの結果が、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019にて公表された。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と日本イーライリリー株式会社が発表した。 EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者において、標準治療にエンパグリフロジンを上乗せ投与した結果、プラセボ群と比較して、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクが14%減少し、心血管死リスクが38%減少したことが報告されている。
高血圧への腎交感神経アブレーション vs.シャム対照群のメタ解析【Dr.河田pick up】 コントロール不良な高血圧に対する新しい治療法として、カテーテルによる腎動脈交感神経アブレーションの研究が行われている。しかしながら、腎動脈交感神経切除の高血圧に対する無作為化試験の結果は肯定的なものと否定的なものがあり、一定していない。この研究の目的はシャム対照群を用いた研究における、腎動脈交感神経アブレーション後の血圧の評価である。Brown大学のPartha Sardar氏ら米国の複数のグループにより、Journal of American College of Cardiology誌2019年4月号に報告された。
LDL-コレステロール低下療法後の残余リスクは?(解説:平山篤志氏)-1027 スタチン、コレステロール吸収阻害薬、そしてPCSK-9阻害薬と、これまではLDL-コレステロール(LDL-C)を低下させることにより心血管イベントが低下することが明らかにされてきた。しかし、それでもまだゼロにならないので、残余リスクと呼ばれている。その1つが、中性脂肪、トリグリセライド(TG)である。TGが高くなるのは、リポプロテインリパーゼ(LPL)活性の低下により中性脂肪が分解されず、結果としてHDL-コレステロールが低値になる病態で、インシュリン抵抗性とも関連しており糖尿病患者に多いパターンである。
心房細動を防ぐ生活習慣、3階なら階段で/日本循環器学会 国立循環器病研究センターでは2年前、心房細動罹患予測確率を計算する吹田心房細動リスクスコアを開発した。しかし、心房細動発症予防のための生活習慣に関するエビデンスは、わが国では喫煙と飲酒のみときわめて少ない。今回、国立循環器病研究センター予防健診部の小久保 喜弘氏らは、吹田研究を用いて心房細動になりにくい健康的な生活習慣の指標を検討し、それを吹田心房細動リスクスコアに加えることにより予測能が向上することを示した。健診や日常外来で用いることにより、心房細動の予防啓発につながることが期待される。2019年3月29~31日に開催された第83回日本循環器学会学術集会にて発表された。
長時間透析の有用性は確認できず:ACTIVE Dialysis延長観察/国際腎臓学会 血液透析例の予後改善の方策として、透析時間延長の有用性が唱えられている。しかし近年報告されたランダム化試験では、延長による生命予後改善の報告がある一方1)、増悪の報告もある2)。 前者は施設での短時間透析の回数を増やす有用性を検討しており、後者は自宅での夜間透析の回数を増やしていた。いずれも回数増加を介した透析時間の延長を試みていた。では透析を回数ではなく、時間そのものを目安に延長した場合、血液透析例の予後はどうなるだろうか―。この問いに答えるべく、Brendan Smyth氏(オーストラリア・シドニー大学)は、ACTIVE Dialysis試験の延長観察データを解析した。しかし観察研究という限界もあり、長時間透析の有用性は確認できなかった。4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のLate Breaking Sessionにて報告された。
低分子ヘパリンによるVTE予防は小細胞肺がんのOSを改善するか/Ann Oncol 静脈血栓塞栓症(VTE)は、血液凝固活性化とともに悪性疾患の特徴であり、がん関連の死亡や疾患の主因となっている。スウェーデン・スコーネ大学病院のLars Ek氏らは、低分子量ヘパリン(LMWH)による凝固阻害が、VTEおよび腫瘍の進行を予防し小細胞肺がん(SCLC)患者の生存を改善するかについて、多施設共同無作為化非盲検臨床試験「RASTEN試験」を実施した。追跡期間中央値41ヵ月において、VTE発生率は有意に減少したが、全生存期間(OS)は改善しなかった。
症候性AFの第一選択にアブレーション加わる/不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版) 「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは2011年改訂の「不整脈非薬物治療ガイドライン」、および2012年発表の「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)で、ガイドライン作成の合同研究班班長である栗田 隆志氏(近畿大学病院 心臓血管センター)、野上 昭彦氏(筑波大学医学医療系 循環器不整脈学)が、植込み型心臓電気デバイス(CIED)とカテーテルアブレーションの主な改訂点についてそれぞれ講演した。
エンドセリン受容体拮抗薬の糖尿病性腎症への効果は?:SONAR試験/国際腎臓学会 2010年に報告されたASCEND試験1)において、糖尿病性腎症に対する腎保護作用を示しながら、心不全増加のため有用性を証明できなかったエンドセリン受容体拮抗薬だが、対象例を適切に絞り込めば有用であることが、ランダム化二重盲検試験“SONAR”の結果から明らかになった。本試験は、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のBreaking Clinical Trialsセッションにおいて、Dick de Zeeuw氏(オランダ・グローニンゲン大学)らが報告した。