循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:52

長時間の昼寝は心房細動リスクを高める?

 30分以上の昼寝は、不整脈の一種である心房細動のリスク増加と関連するようだ。スペインで実施された新たな研究で、昼寝を30分以上する人では、昼寝の時間が30分未満の人に比べて、心房細動の発症リスクが90%高いことが明らかになった。フアン・ラモン・ヒメネス大学病院(スペイン)のJesus Diaz-Gutierrez氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病予防学会(4月13〜15日、スペイン・マラガ)で発表された。  心房が十分に収縮できずに小刻みに震えることで脈が不規則になる状態を心房細動という。心房細動では、心房内の血液がよどんで血栓ができやすくなるため、脳卒中リスクも5倍になると研究グループは説明している。今回の研究でDiaz-Gutierrez氏らは、ナバーラ大学がスペインの大学卒業生を対象に実施している前向きコホート研究のデータを用いて、昼寝の長さと心房細動リスクとの関連を検討した。対象は、研究開始時には心房細動がなかった2万348人(平均年齢38歳、女性61%)。これらの対象者は、昼寝の平均時間に応じて、昼寝をしない群、短時間の昼寝(30分未満)をする群、30分以上の昼寝をする群の3群に分けられた。

糖質過剰摂取は糖尿病患者のみならず万人にとって生活習慣病リスクを高める危険性がある?―(解説:島田俊夫氏)

私たちは生きるために食物を食べることでエネルギーを獲得している。その主要なエネルギー源は3大栄養素であり、その中でも代表的なエネルギー源が糖質である。糖質の摂り過ぎは糖尿病患者では禁忌だということは周知されている。しかし健康人においてさえ、糖の摂り過ぎには注意が必要だとの警鐘を告げる論文も散見され、その中には糖質過剰摂取が3大死因に密接に関連し、生活習慣病を引き起こす可能性について言及した論文も少なくない。

30代で高血圧の人は70代になった時に脳の健康が悪化している?

 成人期の早い段階で高血圧を発症した人は、高齢期に入った時点で脳の健康状態が悪化している可能性のあることが報告された。特に男性においてその関連が強いという。米カリフォルニア大学デービス校のKristen George氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月3日掲載された。  中高年者では高血圧を有することが、アルツハイマー病や認知症のリスクを示す頭部画像所見の多さと関連のあることが知られている。それに対して、中年期以前の高血圧と頭部画像所見との関連については知見が少ない。また、中年期以前に高血圧を発症した患者のうち女性患者は、女性ホルモンの保護作用によって脳の構造的な変化が男性よりも抑制される可能性がある。そこでGeorge氏らは、初期成人期の血圧と頭部画像所見との関連、およびその性差を検討した。

尿酸値の低さが腎機能の急速な低下リスクと関連――日本人の健診データの解析

 尿酸値が基準範囲内であっても低値の場合は、腎機能が急速に低下するリスクが高いという関連を示すデータが報告された。ただし、高齢者ではこの関連が見られないという。帝京大学ちば総合医療センター腎臓内科の寺脇博之氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に2月11日掲載された。  尿酸値が高すぎる状態「高尿酸血症」は、痛風だけでなく腎機能低下のリスクとなる。しかし、それとは反対に尿酸値が低いことの腎機能への影響はよく分かっていない。尿酸には強力な抗酸化作用があるため、理論的には、尿酸値が低いことも腎機能低下リスクとなる可能性も考えられるが、そのような視点での研究報告は少ない。そこで寺脇氏らは、健診受診者のビッグデータを用いてこの点に関する検討を行った。

Life's Essential 8を遵守している人は長寿の可能性―AHAニュース

 心血管の健康に関係のある一連の目標を守っている人は、そうでない人よりも寿命が約9年長い可能性のあることを示唆する報告が、「Circulation」に4月10日掲載された。  この研究では、米国心臓協会(AHA)が開発した「Life's Essential 8」と呼ばれる健康スコアと余命との関連が検討された。Life's Essential 8には、タバコを吸わないこと、身体的に活動的であること、健康的な食事をすること、適切な睡眠を取ること、体重を管理すること、および、血圧・血糖値・コレステロールの良好なコントロールが、推奨事項として掲げられている。以前の研究では、これらの推奨事項を遵守しており評価スコアが高い人は、スコアが低い人よりも、人生の中で慢性疾患に罹患していない期間が長いことが示されていた。そして今回の研究によって、「ライフスタイルの変更が、長生きにつながるというエビデンスが示された」と、論文の上席著者で米テュレーン大学肥満研究センター長のLu Qi氏は語っている。

交通騒音の多い道路の近くに住むと血圧が上昇?

 交通騒音の激しい道路の近くに住んでいる人は、高血圧の発症リスクが高いことが報告された。騒音に大気汚染の影響が加わると、そのリスクはさらに高くなるという。北京大学(中国)のJing Huang氏らの研究の結果であり、詳細は「JACC. Advances」3月発行号に掲載された。同氏はジャーナル発のリリースの中で、「交通騒音と高血圧リスクとの関連性が、大気汚染を調整した後でも強固であったことにやや驚いた」と述べている。

AIは専門スタッフよりも心疾患の検出能力が高い?

 人工知能(AI)の心エコー画像解析能力は、専門スタッフ(超音波検査士)より高いことを示唆するデータが報告された。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のDavid Ouyang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に4月5日掲載された。  この研究では、3,495件の経胸壁心エコー検査の画像データを用いて、AIと超音波検査士のそれぞれが左室駆出率を評価。その評価結果を心臓専門医が見比べて、どちらの方が優れているかを検討した。心臓専門医は、評価結果のレポートがAIによるものか超音波検査士によるものかを知らされていなかった。この研究は、心臓病学領域で初のAI画像診断に関する、盲検化された無作為化比較試験だという。

静脈を動脈の代用として下肢切断を回避

 米ペンシルベニア州ハーミテージ市のCynthia Elfordさん(63歳)は、1型糖尿病が原因で左脚を失った。日焼けした足の親指がその後黒っぽく変色し、切断を余儀なくされたのだ。そして彼女は、右脚も同じ状態になりつつあると言われていた。  手足に血液を送る動脈が狭くなる末梢動脈疾患(PAD)があると、下肢の切断を要する状態になりやすい。治癒を促す血流があまりにも少ないと、小さな傷などでも壊死してしまうことがあるためだ。しかし、侵襲性が極めて低い"LimFlow"と呼ばれるシステムを用いた実験段階の治療法のおかげで、Elfordさんは今のところ右脚を切断することなく過ごしている。この治療法は、虚血状態にある脚に新鮮な血液を送るために、静脈を動脈にかえるというものだ。LimFlowの安全性と有効性について調べる目的で実施された臨床研究では、治療を受けた患者の76%が下肢切断を回避できたという。この結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」3月30日号に発表された。

心臓の形が健康にとって重要な可能性

 心臓の形を評価することが、心疾患の発症リスクの予測に役立つ可能性があることが明らかになった。形が真球に近いほど、そのリスクが高いと考えられるという。米スタンフォード大学のShoa Clarke氏らの研究によるもので、詳細は「Med」に3月29日掲載された。  心臓の状態を評価する際、現在は収縮機能や心腔の大きさなどの指標を参考にすることが多い。今回の研究から、それらの指標とともに、心臓の真球度(直径の乱れの少なさ)も優れた指標である可能性が示された。ただしClarke氏は、「心臓の形が真球に近いこと自体は恐らく疾患ハイリスクの原因ではなく、真球度は何らかの疾患のマーカーと言える。より真球に近い心臓の人は、心筋症や心筋に関連している機能障害を持っている可能性がある。治療方針の決定のために参照する情報のリストに、心臓の真球度を組み込むことの有用性の有無を検討するだけの価値があるのではないか」と語っている。

地域医療提供者による集中的な血圧介入は有用か?(解説:三浦伸一郎氏)

わが国の高血圧有病者は4,300万人であり、治療中・コントロール良好な患者はわずか27%である一方、未治療・認知なしが33%、未治療・認知ありは11%も存在し、いまだに十分な心血管疾患の発症抑制にはつながっていないのが現状である。わが国は世界的に見ても、国民皆保険制度が確立し医師数も比較的多いが、医療制度が未熟な国々は多く存在し医師数も不足している。そのような国々では、医師以外の地域医療提供者の存在が欠かせない。