循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:55

スタチンのプレイオトロピック効果はあるの?(解説:平山篤志氏)

4S試験以来スタチンによる心血管イベント抑制効果が明らかにされ、さらに追加解析でスタチンにはLDL-コレステロール(LDL-C)低下効果に加えて、抗炎症、抗酸化などのプレイオトロピック効果があると示唆されてきた。このような背景から機序の異なるLDL-C低下薬であるエゼチミブやPCSK-9阻害薬を用いた大規模臨床試験では、スタチンに追加することでLDL-Cを低下させる効果で有効性が示されてきた。しかし、今回のベムペド酸(bempedoic acid)を用いたCLEAR Outcome試験では、対象がスタチン不耐性の患者であるためコントロール群にはスタチンが使用されていない。にもかかわらず、ベムペド酸治療群で、有意なLDL-Cと高感度CRPの低下とともに心血管イベントを有意に減少した。

循環器領域における「睡眠呼吸障害の診断・治療ガイドライン」改訂で“睡眠”も心血管リスク因子に

 睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)が循環器疾患の重要なリスク因子であることが明らかになり、2010年に『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』が発刊された。あれから13年、3月11日に本ガイドライン(以下、GL)の2023年改訂版が発刊され、第87回日本循環器学会学術集会の「ガイドラインに学ぶ2」において、葛西 隆敏氏(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科 准教授)が改訂ポイントを6つに絞り、改訂の背景や臨床に役立つ点を発表した。

治療選択のないCLTI、経カテーテル的深部静脈動脈化が肢切断を回避/NEJM

 包括的高度慢性下肢虚血の患者の約20%は、血行再建の選択肢がなく、足関節より近位での肢切断に至るという。カテーテルを用いて深部静脈を動脈化する治療は、動脈と静脈を接続して酸素を含む血液を虚血肢に送ることで、肢切断を予防する経皮的なアプローチである。米国・University Hospitals Harrington Heart and Vascular InstituteのMehdi H. Shishehbor氏らは、従来の外科的血行再建や血管内血行再建による治療の選択肢がない包括的高度慢性下肢虚血の患者において、この経カテーテル的深部静脈動脈化術は安全に施行可能であり、下肢の切断を回避する可能性があることを「PROMISE II試験」において示した。研究の成果は、NEJM誌2023年3月30日号で報告された。

新しいカテーテルアブレーション治療で心房細動の治療が向上か

 これまでより短時間で処置できる上に安全性も高まった心房細動の治療法が、半年以内に使えるようになる可能性があるようだ。パルス電界アブレーションと呼ばれる、従来の熱や冷却剤の代わりに電気を使うこの新しいシステムの有効性と安全性を臨床試験で検討した結果、目標を上回る結果が得られたことが報告された。マギル大学(カナダ)健康センターのAtul Verma氏らが実施したこの研究は、米国心臓病学会年次総会(ACC.23、3月4〜6日、米ニューオーリンズ)で発表されるとともに、「Circulation」に3月6日掲載された。

Fire and Forget vs.Treat to Target(解説:平山篤志氏)

これまでの欧米での心血管イベントを低下させるためのガイドラインでは、ハイリスク患者に対してはLDL-コレステロール(LDL-C)を治療するために強力なスタチンの高用量をまず投与するというFire and Forgetの戦略が推奨されてきた。これはスタチンを用いた大規模臨床試験で、高用量と低用量を比較する、あるいはStrongとMildの高用量を比較する試験のメタ解析から得られた結論であった。また、管理目標値を設定するより、初期投与によるLDL-C低下の割合がイベント抑制には必要であるという考えもあった。

収縮期血圧とCOVID-19重症化リスクの用量反応関係

 高血圧患者の血圧管理状況と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時の重症化リスクとの間に、有意な用量反応関係があるとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学のHolly Pavey氏らが、同国の大規模ヘルスケア情報ベース「UKバイオバンク」のデータを解析した結果であり、詳細は「PLOS ONE」に11月9日掲載された。  高血圧はCOVID-19患者の基礎疾患として最も多く見られ、かつ重症化リスクとの関連が示唆されている。ただし、血圧管理状況と重症化リスクとの関連は、必ずしも十分明らかになっていない。Pavey氏らはこの点について、UKバイオバンクのビッグデータを用いた検討を行った。

塩分の減らし過ぎで心不全の予後悪化?

 従来の推奨と矛盾するようにも感じるが、心不全患者では、ナトリウム(塩分)摂取量を過度に制限し過ぎるのも良くない可能性のあることを示唆する研究結果が、米国心臓病学会(ACC2023、3月4~6日、ニューオーリンズ)で発表された。米クレイトン大学のAnirudh Palicherla氏らの研究によるもので、ナトリウム摂取量を1日2.5g(食塩換算で約6.4g)未満を目標とする食事療法を行っていた人は、摂取量の上限がそれ以上の食事療法を行っていた人よりも、死亡率が80%高かったという。研究者らは、心臓に病気を抱えている患者にとって減塩が有益であることは間違いないが、どの程度まで減塩するかについては議論の余地があると述べている。

死亡・CVリスクを低下させる食事法は?40試験のメタ解析/BMJ

 カナダ・マニトバ大学のGiorgio Karam氏らが7つの代表的な食事プログラムに関する試験についてメタ解析を行い、地中海式食事と低脂肪食を推奨するプログラムは、身体活動やその他の介入の有無にかかわらず、心血管疾患リスクが高い患者の全死因死亡および非致死的心筋梗塞を低減するという、中程度のエビデンスが示されたことを明らかにした。地中海式食事プログラムは、脳卒中リスクも低減することが示唆された。概してその他の食事プログラムは、最低限の介入(食事パンフレット配布など)に対する優越性は示されなかったという。BMJ誌2023年3月29日号掲載の報告。

尿酸値が上がりにくいアルコールは?~日本人8万人のデータ

 飲酒は高尿酸血症の重要なリスク因子だが、アルコール飲料の違いによる血清尿酸値への影響の詳細はわかっていない。今回、聖路加国際病院の福井 翔氏らが、日本人7万8,153人の健康診断データを用いて横断研究を実施した結果、飲酒量をエタノール含有量で統一した場合、ビールでの血清尿酸値上昇は大きく、ワインでは中程度の上昇、日本酒での上昇はわずかで有意ではなかったことが示された。JAMA Network Open誌2023年3月17日号に掲載。

低炭水化物ダイエットはメタボになりやすい?

 炭水化物の摂取量について、推奨量を下回るとメタボリックシンドローム(MetS)の発症が低下するかどうか、現時点では関係性を示す一貫した証拠はない。今回、米国・オハイオ州立大学のDakota Dustin氏らが炭水化物の摂取量とMetSの有病率について研究した結果、炭水化物の推奨量を満たしている人よりも下回っている人のほうがMetSの発症率が高いことが明らかになった。Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics誌オンライン版2023年3月23日号掲載の報告。