循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:63

性への関心と健康や寿命は関係があるのか/国内前向き研究

 性的関心が薄れることは、健康や寿命に関係するのであろうか。山形大学の櫻田 香氏らの研究グループは、性的関心の欠如と全死因死亡率との関連性について、山形県における前向き観察研究を行った。この研究は、山形県内の40歳以上の被験者2万969人を対象に行ったもので、性的関心を持たなかった男性では、全死亡率およびがん死亡率が有意に上昇した。PLoS One誌2022年12月14日号の報告。

心臓に良いとされるサプリのコレステロール低下作用は否定的/JACC

 心臓に良いとされているサプリメント(サプリ)のコレステロール低下作用を検討した結果、いずれも見るべきものはなく、中には負の影響を示すものもあったとする報告が、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表されるとともに、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に論文が同時掲載された。米クリーブランド・クリニックのLuke Laffin氏らの研究によるもの。  心血管疾患のリスク抑制には、血清脂質値の改善〔LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の低下、HDL(善玉)コレステロールの上昇〕が重要であり、その手段として医師からは、主としてスタチンと呼ばれる薬剤が処方される。一方、処方箋のいらないサプリメントの中にも心臓に良いとされているものがある。ただし、それらの血清脂質改善作用は明らかでない。そこでLaffin氏らは、それら6種類のサプリの脂質改善作用をスタチンの一種であるロスバスタチンと比較するという、前向き無作為化単盲検比較試験を実施した。

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

喘息が動脈硬化の進行を促す?

 喘息がアテローム性動脈硬化の進行を促す可能性を示唆するデータが報告された。米ウィスコンシン大学マディソン校のMatthew Tattersall氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に11月23日掲載された。持続型喘息の患者では、頸動脈の動脈硬化が有意に進行していることが確認されたという。ただし、間欠型喘息の患者では、この関係は非有意とのことだ。  喘息とアテローム性動脈硬化の病態にはともに炎症が関与していることから、両者に何らかの相互関係がある可能性が想定される。Tattersall氏らは、アテローム性動脈硬化のリスク評価に頻用されている、超音波検査による頸動脈内膜中膜複合体厚(頸動脈IMT)を指標として、喘息の有無により動脈硬化の進行レベルが異なるか否かを検討した。

トリグリセライドの新基準と適切なコントロール法/日本動脈硬化学会

 今年7月に発刊された『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』。今回の改訂点の1つとして「随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値」が設定された。これらの基準をもとに動脈硬化性疾患のリスクとしての高TG血症を確認するが、TG値の低下だけではイベントを減らせないため、高TG血症の原因となる生活習慣を改善させ適切な治療介入により動脈硬化を抑制するという観点から複合的に行う必要がある。今回、日本動脈硬化学会プレスセミナーにおいて、増田 大作氏(りんくう総合医療センター循環器内科部長)が「高トリグリセライド血症とその治療」と題し、日本人疫学に基づいたTGの適切なコントロール法について解説した。

インフルエンザ予防接種が心不全患者の命を守ってくれる

 インフルエンザの予防接種は、インフルエンザを予防するだけでなく、心不全患者の肺炎を約4割、入院リスクを約15%減らすことを示す、多国籍無作為化プラセボ対照比較試験の結果が「The Lancet Global Health」12月号に掲載された。マクマスター大学(カナダ)のMark Loeb氏らの研究によるもので、同氏は、「これまでインフルエンザワクチンの効果が過小評価されていたようだ。心不全患者がインフルエンザの予防接種を受けずにいる理由はない」と語っている。  この研究は、アジア、中東、アフリカの10カ国の18歳以上の心不全患者5,129人(平均年齢57.2±15.3歳、女性51.4%)を対象に実施された。心不全の重症度〔ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類〕は、クラスII(身体活動をある程度制限しないと症状が現れる)が69.5%、クラスIII(安静にしていないと症状が現れる)が26.1%、クラスIV(安静時にも症状がある)が4.4%。

急性心不全へのGDMTの早期増量と頻回なフォローアップで再入院リスクは減少する?(解説:原田和昌氏)

診療ガイドライン推奨の心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)は、通常慢性期に推奨用量を目標に漸増するものであり、急性心不全による入院後に、いつごろからどのくらいの時間で、どの用量まで増量するかのエビデンスはほとんどない。心不全入院後の頻回なフォローアップだけでは、これまで有効性は示されなかった。急性心不全(HFrEFが68%、HFpEFが15%)による入院後に、GDMTの早期漸増に加えて頻回なフォローアップ(90日で5回)を行うという強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、Mebazaa氏らの多施設共同無作為化非盲検並行群間試験であるSTRONG-HF試験により示された。

12~20歳のmRNAコロナワクチン接種後の心筋炎をメタ解析、男性が9割

 12~20歳の若年者へのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎に関連する臨床的特徴および早期転帰を評価するため、米国The Abigail Wexner Research and Heart Center、 Nationwide Children’s Hospitalの安原 潤氏ら日米研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種後の心筋炎発生率は男性のほうが女性よりも高く、15.6%の患者に左室収縮障害があったが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)は1.3%にとどまり、若年者のワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であることが明らかとなった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年12月5日号に掲載の報告。

2種利尿薬、大規模試験で心血管転帰を直接比較/NEJM

 実臨床での一般的用量でサイアザイド系利尿薬のクロルタリドン(国内販売中止)とヒドロクロロチアジドを比較した大規模プラグマティック試験において、クロルタリドン投与を受けた患者はヒドロクロロチアジド投与を受けた患者と比べて、主要心血管アウトカムのイベントまたは非がん関連死の発生は低減しなかった。米国・ミネソタ大学のAreef Ishani氏らが、1万3,523例を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインではクロルタリドンが1次治療の降圧薬として推奨されているが、実際の処方率はヒドロクロロチアジドが圧倒的に高い(米国メディケアの報告では150万例vs.1,150万例)。研究グループは、こうした乖離は、初期の試験ではクロルタリドンがヒドロクロロチアジドよりも優れることが示されていたが、最近の試験で、両者の効果は同程度であること、クロルタリドンの有害事象リスク増大との関連が示唆されたことと関係しているのではとして、リアルワールドにおける有効性の評価を行った。NEJM誌オンライン版2022年12月14日号掲載の報告。

第Xa因子阻害剤による出血時の迅速な薬剤特定システムを構築/AZ

 アストラゼネカとSmart119は、12月14日付のプレスリリースで、医療機関と救急隊における第Xa因子阻害剤服用中の出血患者を対象とした情報共有システムを構築し、病院到着時に患者の服用薬剤を特定することで、迅速かつ適切な処置を目指すと発表した。  直接作用型第Xa因子阻害剤を含む抗凝固薬は、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防や静脈血栓塞栓症の治療・再発予防を目的として広く使用されている。その一方で、服用中は通常より出血が起こりやすい状態となるため、事故や転倒などのきっかけで、大出血につながるリスクが高くなる。抗凝固薬服用中の患者において大出血が発現した際、抗凝固薬の中和剤を止血処置の一環として投与することで、出血の増大を抑えられる可能性がある。中和剤を適切に使用するためには、患者の服薬情報の把握が必要となるが、現状、救急隊の病院到着時に約30%の患者で、服用薬剤が特定できないと報告されている。