皮膚科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

「電気絆創膏」で皮膚感染を予防する可能性

 実験段階にある「電気絆創膏」によって、いつの日か医師は薬を全く使わずに細菌感染を防げるようになる可能性のあることが、新たな研究で示された。皮膚パッチを通じて知覚できないほど弱い電気的刺激を与えることで、人間の皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が10倍近く減少したことが確認されたという。米シカゴ大学化学科教授のBozhi Tian氏らによるこの研究の詳細は、「Device」に10月24日掲載された。Tian氏は、「この研究により、薬剤を使わない治療、特に薬剤耐性が深刻な問題となっている皮膚感染症や創傷の治療において素晴らしい可能性が広がった」と話している。

乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?

 生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症リスクはどれくらいあるのか。南 圭人氏(東京医科大学皮膚科)らの研究グループは、臨床現場において十分に理解されていないその現状を調べることを目的として、単施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、インターロイキン(IL)-17阻害薬で治療を受けた乾癬患者は、他の生物学的製剤による治療を受けた患者よりも真菌感染症、とくにカンジダ症を引き起こす可能性が高いことが示された。さらに、生物学的製剤による治療を開始した年齢、糖尿病も真菌感染症の独立したリスク因子であることが示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年9月30日号掲載の報告。

帯状疱疹後神経痛、crisugabalinが有効

 帯状疱疹後神経痛を有する成人患者へのcrisugabalin(HSK16149)40mg/日または80mg/日は、プラセボとの比較において忍容性は良好であり、疼痛の改善も示された。中国・南昌大学第一付属病院のDaying Zhang氏らが、crisugabalinの有効性と安全性を検討した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。同薬剤は中国で開発中の経口カルシウムチャネルα2δ-1リガンドである。中国では、帯状疱疹後神経痛の負担が大きいことから、既存のカルシウムチャネルリガンドよりも有効性が高く、神経毒性の少ない新薬が待望されているという。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年9月25日号掲載の報告。

多汗症は敏感肌と関連

 汗をかき過ぎる人は肌も敏感であることが多いようだ。原発性多汗症(以下、多汗症)と敏感肌は密接に関係していることが、新たな研究で確認された。米ジョージ・ワシントン大学のAdam Friedman氏と米バージニア工科大学のLiqing Zhang氏らによるこの研究結果は、「Journal of Drugs in Dermatology」に9月30日掲載された。研究グループは、「多汗症と敏感肌との関連を提示し、裏付けた初めての研究だ」と述べている。  多汗症は、高温下や運動中などの条件下に置かれていなくても、手、足、顔、脇の下などの特定の部位に、体を冷やすために必要な量の4倍の汗をかく疾患である。一方、敏感肌は、熱や汗、スキンケア製品、ストレスにさらされると、肌にかゆみや灼熱感、圧迫感などが生じることを特徴とする。

ウパダシチニブ、ADの頭頸部病変における新たな有効性解析結果/アッヴィ

 2024年10月15日、アッヴィはウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の第III相試験であるMeasure Up 1試験とMeasure Up 2試験について、アトピー性皮膚炎(AD)の頭頸部病変における重症度別の有効性を示す新たな解析結果を発表した。  AD患者において、頭部、頸部、顔面、手など、特定の部位に現れるADの症状は、症状の発生頻度や患者の生活の質に重大な影響を及ぼしうることが示されている。また、リアルワールド観察研究である、UP-TAINED試験で70%、AD-VISE試験で74.5%以上のAD患者においてベースライン時に頭頸部病変が認められており、この領域に対する有効な治療法の必要性が高まっている。

乾癬の光線療法、自宅治療は外来治療に非劣性

 乾癬に対するナローバンドUVB療法について、自宅で行う同治療の有効性は外来治療との比較において非劣性であり、患者の負担は少ないことが示された。米国・ペンシルベニア大学のJoel M. Gelfand氏らが多施設共同無作為化非劣性試験「Light Treatment Effectiveness study:LITE試験」の結果を報告した。乾癬に対する外来治療でのナローバンドUVB療法は費用対効果が高いが、患者のアクセスに課題がある。一方、自宅治療は患者の負担は少ないが臨床データは限定的で、とくに肌の色が濃い患者のデータが不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年9月25日号掲載の報告。

進行メラノーマに対するオプジーボとヤーボイの併用療法が生存期間を延長

 ニボルマブ(商品名オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ)の2種類の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法により、進行メラノーマ患者の生存期間を大幅に延長できる可能性のあることが、10年にわたる追跡調査により明らかになった。米ワイル・コーネル・メディスンのJedd Wolchok氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月15日掲載された。Wolchok氏は、「これは、慣例を変える試験だった。対象患者の平均生存期間は現在6年を超えている。追跡3年時点でがんの進行が認められなかった患者は、10年後も再発や他の病気を発症することなく生存している可能性が高い」と話している。

食用色素でマウスの皮膚の透明化に成功

 米スタンフォード大学材料科学・工学助教のGuosong Hong氏らは、普通の食用色素を使ってマウスの皮膚を透明にし、皮膚の内側の血管や臓器の働きを可視化することに成功したことを報告した。一般に「黄色4号」と呼ばれているタートラジンという色素を溶かした水溶液を皮膚に塗布してしばらく置くと皮膚が透明になり、拭い取ると透明化の効果は速やかに失われるという。マウスよりも厚い人間の皮膚にもこの方法が通用するかどうかは不明だが、Hong氏らは、「その可能性は大いにある」と期待を示している。この研究の詳細は、「Science」9月6日号に掲載された。

がん治療薬がアルツハイマー病の進行抑制に有用?

 新しいタイプのがん治療薬が、アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療にも有用である可能性のあることが、米スタンフォード大学医学部神経学・神経科学教授のKatrin Andreasson氏らによるマウスを用いた研究で示された。詳細は、「Science」に8月23日掲載された。  このがん治療薬は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)と呼ばれる酵素を阻害する作用を持つ。IDO1は、アストロサイトと呼ばれるグリア細胞で発現し、アミノ酸の一種であるトリプトファンを分解してキヌレニンという化合物に変換する役割を担っている。キヌレニンは、芳香族炭化水素受容体(AhR)との相互作用を通じて免疫抑制に重要な役割を果たしている。そのため、メラノーマや白血病、乳がんなどの複数のがんでは、この酵素を標的とする治療薬(IDO1阻害薬)の開発が進められている。最近の研究では、IDO1がアルツハイマー病を含む複数の神経変性疾患に関与していることが示唆されている。一方、アストロサイトは、ニューロン(神経細胞)に栄養を与え、シナプスの機能を維持する役割を担うエネルギー分子である乳酸を生成する。

世界初の眼球と部分顔面移植を受けた男性、1年後の状況は?

 世界で初めて眼球移植と部分的な顔面移植を受けた男性が、手術から1年以上が経過した現在も順調に回復していることを、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン病院の医師らが報告した。同病院の顔面移植プログラムディレクターで形成外科部長でもあるEduardo Rodriguez氏らによるこの症例報告は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に9月9日掲載された。  この画期的な手術を受けたのは、米アーカンソー州出身の退役軍人であるAaron Jamesさん(46歳)だ。Jamesさんは、「新しい顔のおかげで、この1年で、他の人にとっては当たり前のことを楽しめるようになった。見知らぬ人にじろじろ見られることはなくなったし、再び固形物を味わい、楽しめるようになった。においを嗅ぐという単純な喜びも感じている。運転免許証に使われていた怪我をした顔の写真も新しいものに交換した」と話す。さらにJamesさんは、「私は、ほぼ普通の人間に戻って普通のことをしている。ただし、この1年が私の人生において最も変化のある年だったことは確かだ。私は二度目のチャンスという贈り物を与えられた。今では、一瞬一瞬を当たり前だとは思っていない」と言う。