糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

減塩には甘じょっぱい味は向かない/京都府立医科大

 高血圧の管理では、塩分摂取量の削減は重要である。人間は塩分を好むという前提に基づいているが、高濃度の塩分に対し、嫌悪感も認識することが大切である。近年の研究では、慢性腎臓病(CKD)患者において味覚認識だけでなく、高塩分濃度への嫌悪感も変化していることが明らかにされた一方で、さまざまな味覚を組み合わせた場合の影響は依然として不明であった。そこで、京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学の奥野-尾関 奈津子氏らの研究グループは、甘味を加えることでCKD患者の塩分嫌悪に影響を与えるかどうかを研究した。その結果、甘味は健康成人とCKD患者の双方で高塩分への嫌悪感を低減することが判明した。この結果はScientific Reports誌電子版2025年7月7日号に掲載された。

低カロリー甘味料が脳の老化を促進する可能性

 カロリーがない、または低カロリーの甘味料が脳の老化を促進する可能性を示唆するデータが報告された。特に糖尿病患者では、より強い関連が見られるという。サンパウロ大学(ブラジル)のClaudia Kimie Suemoto氏らの研究の結果であり、詳細は「Neurology」に9月3日掲載された。  アスパルテーム、サッカリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの低カロリーまたはノンカロリーの甘味料(low- and no-calorie sweeteners;LNCS)は、摂取エネルギー量の抑制に役立つ。しかし論文の上席著者であるSuemoto氏は、「われわれの研究結果は、一部のLNCSは脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している」と話している。

若年1型糖尿病へのATG、β細胞機能低下を抑制/Lancet

 発症から間もないステージ3の1型糖尿病の若年患者において、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の2.5mg/kgおよび0.5mg/kgの投与はプラセボと比較して、β細胞機能の低下を有意に抑制することを、ベルギー・ルーベン大学のChantal Mathieu氏らが第II相試験「MELD-ATG試験」の結果で報告した。これは、低用量で安全、安価なATGがこの患者集団における疾患修飾薬となる可能性を示すものだという。研究の成果は、Lancet誌2025年9月27日号で発表された。  MELD-ATG試験は、アダプティブデザインを用いてATGの用量範囲を検討する二重盲検無作為化プラセボ対照多群比較試験であり、欧州を中心とする8ヵ国14施設が参加した(欧州連合革新的医薬品イニシアチブ2共同事業体INNODIAの助成を受けた)。

低用量経口セマグルチド、過体重/肥満者で優れた減量効果/NEJM

 低用量(25mg)の経口セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)は、高用量(50mg)や皮下注射薬(2.4mg)に代わる肥満者の新たな治療選択肢となる可能性が指摘されている。カナダ・トロント大学のSean Wharton氏らOASIS 4 Study Groupは、過体重または肥満者では、プラセボと比較して低用量セマグルチドの1日1回経口投与は、減量効果が有意に優れ、体重が生活の質(QOL)に及ぼす影響も有意に改善することを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年9月18日号に掲載された。

2型糖尿病合併HFpEF、セマグルチドとチルゼパチドが入院・死亡リスクを低減/JAMA

 心代謝性(2型糖尿病合併)の左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者において、セマグルチドとチルゼパチドはいずれもプラセボと比較し、心不全による入院または全死亡の複合リスクを40%以上減少させたが、チルゼパチドとセマグルチドとの間に有意差は示されなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNils Kruger氏らが、5件のコホート研究から得られた結果を報告した。HFpEFは、肥満や2型糖尿病などの心代謝合併症を有する患者に多くみられ、入院の主な原因となっている。セマグルチドとチルゼパチドの初期試験では、これらの患者における症状改善に有望な結果が示されたが、これらの知見は臨床イベント数が少なく、治療の推奨は確実とはいえないままであった。JAMA誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。

チルゼパチド、血糖コントロール不良の若年2型糖尿病患者に有効/Lancet

 メトホルミンや基礎インスリンで血糖コントロール不十分の若年発症2型糖尿病患者において、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの週1回投与はプラセボと比較し、血糖コントロールおよびBMIを有意に改善し、その効果は1年間持続した。米国・Indiana University School of MedicineのTamara S. Hannon氏らがオーストラリア、ブラジル、インド、イスラエル、イタリア、メキシコ、英国および米国の39施設で実施した、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURPASS-PEDS試験」の結果で示された。若年発症2型糖尿病に対する治療選択肢は限られており、成人発症2型糖尿病と比較し血糖降下作用が低いことが知られている。

経口orforglipron、肥満成人の減量に有効~日本を含む第III相試験/NEJM

 非糖尿病の成人肥満者において、プラセボと比較して経口低分子GLP-1受容体作動薬orforglipronは有意な体重減少をもたらすとともに、ウエスト周囲長や収縮期血圧、非HDLコレステロール値を改善し、有害事象プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と一致する。カナダ・McMaster UniversityのSean Wharton氏らATTAIN-1 Trial Investigatorsが、第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験「ATTAIN-1試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年9月16日号で発表された。  ATTAIN-1試験は、日本を含む9ヵ国137施設で行われた(Eli Lillyの助成を受けた)。2023年6月~2025年7月に、年齢18歳以上で、BMI値30以上、または同27~30で少なくとも1つの肥満関連合併症(高血圧、脂質異常症、心血管疾患、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)に罹患し、減量を目的とする食事療法に失敗した経験が1回以上あると自己報告した患者3,127例を登録した。糖尿病の診断を受けた患者と、スクリーニング前の90日以内に±5kg以上の体重の変動を認めた患者は除外した。

糖尿病患者の約半数は自分の病気に気付いていない

 世界中の糖尿病患者の半数近くが、自分が糖尿病であることを知らずにいるとする研究結果が、「The Lancet Diabetes & Endocrinology」に9月8日掲載された。米ワシントン大学健康指標評価研究所のLauryn Stafford氏らの研究によるもので、全糖尿病患者の中で適切な血糖管理が維持されているのは5人に1人にとどまることも示されている。  この研究により、世界の15歳以上の糖尿病患者の44.2%が、自身の病気を認識していないと推計された。論文の筆頭著者であるStafford氏は、「2050年までに世界の糖尿病患者数は13億人に達すると予想されている。もし、半数近くの患者が、命に関わることもある深刻な健康状態にあることに気付いていない状況がこのまま続いたとしたら、糖尿病という病気はサイレント・エピデミック(静かなる疫病)へと移行していくだろう」と述べている。

従来2台必要な眼科手術機器を1台で/日本アルコン

 日本アルコンは、白内障および網膜硝子体手術を1台でこなす“UNITY VCS”の発売に際し、都内でメディアセミナーを開催した。白内障は加齢により起こる水晶体が混濁する疾患だが、高齢化社会のわが国では患者数、手術数ともに増加している。今回発売される本機は、従来は別々のプラットフォームに搭載した手術装置で行われていた白内障および網膜硝子体手術が1台のプラットフォームに集約され、処置室の省スペース化を実現する。  セミナーでは、白内障などの疾患概要と手術の講演のほか、本機の機能紹介などが行われた。本機は秋以降に発売が開始される。

植物性食品中心の食事は慢性疾患の併発を予防する

 植物性食品中心の食生活が、がん、心血管疾患、2型糖尿病のいずれか二つ以上を併発する状態の予防につながることを示唆するデータが報告された。ウィーン大学(オーストリア)のReynalda Córdova氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Healthy Longevity」8月号に掲載された。  この研究では、欧州6カ国で行われている「欧州がん・栄養前向き調査(EPIC)」と英国で行われている「UKバイオバンク」という二つの大規模疫学研究のデータが解析に用いられた。年齢35~70歳で、がん、心血管疾患、2型糖尿病の既往のない40万7,618人を解析対象とした。食事スタイルの評価には、全粒穀物や果物、野菜、ナッツ、豆類などの健康に良い植物性食品の摂取量が多いことを表す「hPDI」と、精製穀物やジャガイモ(フライドポテトなど)といった健康にあまり良くない植物性食品の摂取量が多いことを表す「uPDI」という、二つの指標を用いた。