糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:6

従来2台必要な眼科手術機器を1台で/日本アルコン

 日本アルコンは、白内障および網膜硝子体手術を1台でこなす“UNITY VCS”の発売に際し、都内でメディアセミナーを開催した。白内障は加齢により起こる水晶体が混濁する疾患だが、高齢化社会のわが国では患者数、手術数ともに増加している。今回発売される本機は、従来は別々のプラットフォームに搭載した手術装置で行われていた白内障および網膜硝子体手術が1台のプラットフォームに集約され、処置室の省スペース化を実現する。  セミナーでは、白内障などの疾患概要と手術の講演のほか、本機の機能紹介などが行われた。本機は秋以降に発売が開始される。

植物性食品中心の食事は慢性疾患の併発を予防する

 植物性食品中心の食生活が、がん、心血管疾患、2型糖尿病のいずれか二つ以上を併発する状態の予防につながることを示唆するデータが報告された。ウィーン大学(オーストリア)のReynalda Córdova氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Healthy Longevity」8月号に掲載された。  この研究では、欧州6カ国で行われている「欧州がん・栄養前向き調査(EPIC)」と英国で行われている「UKバイオバンク」という二つの大規模疫学研究のデータが解析に用いられた。年齢35~70歳で、がん、心血管疾患、2型糖尿病の既往のない40万7,618人を解析対象とした。食事スタイルの評価には、全粒穀物や果物、野菜、ナッツ、豆類などの健康に良い植物性食品の摂取量が多いことを表す「hPDI」と、精製穀物やジャガイモ(フライドポテトなど)といった健康にあまり良くない植物性食品の摂取量が多いことを表す「uPDI」という、二つの指標を用いた。

診療に難渋する糖尿病性神経障害の診療マニュアルが登場/糖尿病学会

 糖尿病の合併症の1つに糖尿病性神経障害がある。この疾患の放置は、下肢の切断など重篤な障害を起こし、患者のQOLに多大な影響を及ぼす。日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、この糖尿病性神経障害について『糖尿病性神経障害の評価・診断マニュアル』を作成し、9月16日に同学会のホームページで公開した。  このマニュアルでは、日常臨床でしばしば遭遇するものの、評価や診断が比較的難しく煩雑と考えられている糖尿病性神経障害について、実臨床に即した評価・診断法を整理し、記載している。

隠れた脂肪の蓄積が心臓の老化を加速させる

 腸の周りや肝臓、筋肉などに溜まった脂肪が心臓の老化を速めるとする、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のDeclan O’Regan氏らの研究結果が、「European Heart Journal」に8月22日掲載された。異所性脂肪と呼ばれるそれらの脂肪の蓄積は体型からは判別しにくく、たとえ体重は健康的とされる範囲であっても、そのような脂肪が蓄積していることがあるという。一方、全身の脂肪蓄積の分布とその影響には性差があり、論文の上席著者であるO’Regan氏は、「ある種の脂肪、特に女性の腰や太ももの周りの脂肪は、老化を抑制する可能性がある」と述べている。

GLP-1受容体作動薬は気候変動対策にも有益

 肥満症治療薬として使用されているオゼンピックやゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬は、単に体重を減らすだけでなく、地球環境の保護にも役立っている可能性のあることが、新たな研究で示された。これらの薬が心不全患者の減量目的で使用されると、温室効果ガス排出量の削減につながるという。米Lahey病院・医療センターのSarju Ganatra氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。  Ganatra氏らは、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者(GLP-1受容体作動薬を投与された患者1,914人、プラセボを投与された患者1,829人)を対象とした4件の臨床試験のデータを統合して解析した。HFpEFとは、心臓の収縮機能は保たれているものの、心筋が硬いために十分に拡張できず、血液を十分に取り込めない状態を指す。米国心臓病学会(ACC)によれば、心不全患者のほぼ半数がこのタイプに分類される。

アルドステロンの心血管系に対する直接作用は?(解説:浦信行氏)

アルドステロンは腎臓におけるNa再吸収亢進作用などにより体液量増大、Na貯留、昇圧作用などを介して心臓を含む臓器障害を発症・増悪させる。重症腎機能障害を有さない症例において、スピロノラクトンを中心とした鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は心不全や心血管死を有意に減少させることが、いくつかの臨床試験で明らかになっている。一方、透析療法を受けている症例での心保護作用は明らかではなく、安全性も確立されていない。本年8月号のLancet誌では同一研究グループの2つの論文が掲載された。

透析患者におけるアルドステロン拮抗薬の位置付けを再考する―ALCHEMIST試験の結果から(解説:石上友章氏)

アルドステロンは副腎皮質球状帯より分泌される鉱質コルチコイドであり、その主要な作用部位は腎臓遠位尿細管に属するアルドステロン感受性遠位ネフロン(aldosterone-sensitive distal nephron:ASDN)である。アルドステロンは核内因子である鉱質コルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)と結合し、アルドステロン誘導性タンパク(aldosterone-inducible protein:AIP)の遺伝子発現を活性化することにより、ナトリウム再吸収およびカリウム排泄を促進する。この作用特異性は、11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2(11βHSD2)によって担保される。血中に高濃度に存在し、かつMR親和性においてアルドステロンを凌駕するコルチゾールが、11βHSD2により不活性型のコルチゾンへ変換されることで、MR結合がアルドステロンに選択的に保証されているのである。この点において、アルドステロンは生理的に特異的なシグナル伝達を遂行するホルモンと位置付けられる。

先進医療技術の普及により1型糖尿病患者の血糖管理が大きく改善

 先進的テクノロジーを用いた医療機器の普及によって、1型糖尿病患者の血糖管理状態が顕著に改善しているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に8月11日掲載された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、血糖コントロールが良好(HbA1c7%未満)の18歳未満の患者の割合は、2009年は7%であったものが2023年には19%となり、成人患者では同期間に21%から28%に増加したという。  研究者らによると、これらの改善は、持続血糖モニターやインスリンポンプの技術革新によるところが大きいという。Fang氏は、「かつて、1型糖尿病患者の血糖コントロールは困難なことが多かった。こうした顕著な改善は喜ばしい変化だ」と述べている。ただし一方で、1型糖尿病患者の多くが、いまだに十分な血糖コントロールができていないことを、研究者らは指摘している。

GLP-1RAが2型糖尿病患者のGERDリスク増大と関連

 2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方が、胃食道逆流症(GERD)のリスク増大と関連していることを示すデータが報告された。GLP-1RAが処方されている患者では、SGLT2阻害薬(SGLT2i)が処方されている患者に比べて、GERDおよびGERDに伴う合併症の発症が有意に多く認められるという。全南大学校(韓国)のYunha Noh氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。  2型糖尿病および肥満の治療薬であるGLP-1RAは胃排出遅延作用を有しており、これが血糖上昇抑制や食欲低下に部分的に関与していると考えられている。しかし一方でこの作用は、理論的にはGERDのリスクとなり得る。とはいえ、GLP-1RAの処方とGERDとの関連を示す大規模な研究に基づくエビデンスは十分ではないことから、Noh氏らは英国の臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink)を用いて、SGLT2iを実薬対照とするターゲット試験エミュレーション研究を実施し、GERDおよびGERD関連合併症の発症リスクを比較した。

長らく日の目を見なかったアミリンが抗肥満薬として復活した(解説:住谷哲氏)

 アミリン(amylin)、別名膵島アミロイドポリペプチド(islet amyloid polypeptide:IAPP)は、インスリンと同時に膵β細胞から分泌されるホルモンである。アミリンには消化管運動調節作用があり食後の血糖上昇を抑制することから、すでに20年前にアミリンアナログであるpramlintideが商品名SymlinとしてFDAに血糖降下薬として承認されている(日本では未承認)。しかしpramlintideは半減期が短く、1日3回の注射が必要であるためほとんど使用されていない。  アミリンは当初から食欲中枢に作用して食欲を低下させることが知られていた。そこでアミリンの分子構造を変化させることで週1回投与を可能にしたcagrilintideが抗肥満薬として開発された。プラセボと比較した第II相試験では、cagrilintide 2.4mgはプラセボと比較して9.7%の体重減少をもたらした。さらに本試験の前段階である第Ib相の臨床試験において、cagrilintide 2.4mg+セマグルチド2.4mg(CagriSema)の投与は17.1%の体重減少をもたらすことが報告されている。